「本体」
リォンリーネはトリガー機構の模型を完成させた日、迅代の言う通り、ぐっすり睡眠を取った。
しかし、その日の夕方前にごそごそと起き出し。
また、机に向かっていた。
『これは、当分、昼夜逆転の生活になりそうだな・・・』
迅代はリォンリーネが熱心に開発作業を進めてくれて嬉しい反面、少し困ったなとも感じていた。
それに昼間にリォンリーネが寝ていると、来客の対応や、商品の納品が出来ない。
だが、迅代がそれを代わるわけにもいかない。
『当分は対応できない事を店の扉に張り紙を出しておくか。』
それから3日ほどリォンリーネが頑張って、銃の本体が完成した。
銃身は付いていないが、鉄製で、中折れ機構、弾薬の装填部兼薬室、そしてトリガー機構が組み込まれているものだ。
ハンマーを起こして、トリガーを引くと、「カチン」と勢い良くハンマーが落ちる。
そのハンマーに連動して撃針が前に飛び出す、ここまでの動作が見事に実現されていた。
弾薬が入っていれば、問題無く発射まで出来るだろう出来だった。
「すごい!すごいです!!」
迅代はその出来を素直に褒めたたえた。
「うへへへ、喜んでもらえると嬉しいですねえ」
リォンリーネはにんまりとした顔になるが、さすがに疲れが見えていた。
迅代はいろいろな角度から銃本体をチェックする。
中折れ部の弾薬装填部の精度を心配していたが、概念図の注意書き通り、綺麗に真円で開けてくれていた。
ここにガタツキが有ると、発射時のガスが漏れて、弾丸に運動エネルギーが伝わらず、威力が低下してしまう。
また、反対に、火薬の威力が強すぎると、銃本体に負荷がかかり、部品が破損してしまうかもしれない。
この辺りは撃って見てからでないとわからない。
事前に調査できる知識も施設もないのだから。
『後は銃身、そして弾薬だが・・・ちょっと休んでもらったほうが良いかもな』
迅代は、そう思ってリォンリーネをみると目がうつろで、うとうととしていた。
さすがに5日ほど、睡眠もそこそこに全力で開発作業を行ってくれたのだ。
「そろそろ黒煙粉も届いてるのではないですかね?」
迅代はリォンリーネに問いかける。
「おお、そうですね、黒煙粉、明日聞きに行ってみます」
リォンリーネも思い出したように答える。
「では、明日は、一旦開発作業はお休みにしましょうか」
迅代の言葉に、リォンリーネは少し考える。
「そう、ですね、ちょっと周りの事を置いて突き進みすぎましたねえ」
だからと言って別の事をやり出すとリォンリーネは休まらないだろうと思い、迅代が言う。
「明日は、黒煙粉の事を聞いてもらって、その後、ゆっくりしましょう」
リォンリーネは一瞬迷ったが、「はい」と笑顔で答えた。
翌日、黒煙粉の入手が出来そうと言っていた道具屋にリォンリーネが様子を聞きに行ってくれた。
すると、小袋1つ分、概ね10gほどの量の黒煙粉が入手できたとの事だった。
値段は交渉した結果、5000ピネ※で交渉成立した。
※約5万円
リォンリーネが持ち帰った黒煙粉を迅代が調べてみる。
みみかきですくったほどの量を平らな鉄板の上に出し、金づちで叩いてみる。
「パン!」
大きな音と共に煙が出て爆発が起きる。
「きゃう!」
リォンリーネはその音に驚いて変な声を出して数歩後ずさった。
迅代自身も少し驚いた。
「うん、間違いなく火薬です」
「これで弾も作れそうです」
少し高価だがなんとか火薬も入手が出来たのだった。




