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「実証模型」

「うむむむ、とても精緻で難解ですよう」

リォンリーネは迅代が書き表した概要図を見て唸り声を上げた。


単発中折れ拳銃という最も構造がシンプルな拳銃だが、それでも、多くの金具とバネが作用しあって動作する。

それでも、トリガーとシアー※は既存のクロスボウのパーツが使えるように工夫してあった。

※トリガーとハンマーを仲介するパーツ


「このコイルバネとは変な金具ですねえ」

リォンリーネは興味深そうに寸法を記した設計図に引き直しながらつぶやく。

この世界ではバネのような効果を利用する場合は板バネであって、鋼鉄を円環状に巻いたコイルバネは使われていないようだった。

そのあたりの加工も全部リォンリーネ頼みの想定だ。


まずは、設計さえしっかり守れば実現できるトリガー機構から先に製作する事になった。


一生懸命机に向かって設計図を作るリォンリーネを見て、自分も何かと思い、迅代は、弾薬の設計はやって見る事にした。

それから半日ほど経過したが、リォンリーネは机に向かったままだった。


迅代は「夕食は俺が作りますね」とリォンリーネに告げて、メニューを考える。

「あわわ、す、すみませんが、よろしくお願いします」

「ちょっと手が離せないので」

リォンリーネはこうなると一区切りつくまで机から離れない。

下手をすれば、食事を抜かしてでも作業を続ける気性だった。


『本当にもの作りが好きなんだな』

迅代は机に集中しているリォンリーネをちらりと見て、そう思う。


リォンリーネは夕食後も、また、机に向かって作業を再開する。

「働き過ぎじゃないですか??」

迅代はリォンリーネに休むよう勧めるが、もう少し、と言って聞き入れない。

『とりあえず、今日は様子見で、明日もこの調子なら強引に寝かせるか』

そう思いながら、迅代は休むことにした。


翌朝


「ででで、できましたよう!」

リォンリーネは勢いよく迅代の部屋に駆け込んで来た。

迅代は少し寝ぼけ眼で、設計図が出来たのか、と思いリォンリーネが持ってきたものを見る。

それは、木で作成したトリガー機構の模型だった。

木の板に、金属の代わりに木で出来たパーツを釘などで固定して、再現してあった。

1つ目のアクションの、ハンマーを起こす動作

2つ目のアクションの、トリガーを引くことでハンマーが落ちる動作

を見事に実現していた。


しかも寸法は拳銃サイズに収まるよう作られていて、そのまま金属に置き換えれば、実現できる物だった。

「おお、すごいです!、これを正確に金属で再現できれば銃完成に1歩近づきます!」

迅代もそれを見て感心していた。


リォンリーネは迅代が喜ぶ姿を見て、とても嬉しい気持ちになった。

「この調子で、次は、これが収まるジュウ本体の方に移りますよ!」

そう言いながら机に戻ろうとするリォンリーネ。


「でも」

「はい?」

迅代が何か言いかけて、リォンリーネはすこしふわっとした感じの頭で振り返る。

「今日はもう寝てもらいます」

「ええええ」

「折角調子が」

「ダメです、寝てもらいます」

「いや、えっと、その、エルフは寝なくても大丈夫なんですよう」

「ハーフエルフもですか?旅してる時もそんな事言ってませんでしたよね?」

迅代はリォンリーネが胡麻化そうとしているのを感じて突っ込んだ。

「すみません、ちょっと眠いです」

リォンリーネは素直に白状した。


銃制作の大きな一歩が有ったのは正直、迅代は嬉しかった。

そして、何よりリォンリーネが全力で銃の開発に向き合ってくれている事がとても嬉しかった。

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