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「光の槍」

今の近衛隊第二部隊の戦力では、黒いもやの兵士を倒すことは出来なかった。

せいぜいが足止めのために、抵抗する事が精一杯だった。


そんな戦い方の中でも、傷を受けるもの、致命傷を負うものが出て来る。

ヤツらは戦士クラス以上の敵だった。


じりじりと攻撃主体である、魔王軍討伐部隊のほうに押されている。

勇者クラスの増援が来ない限り、この2体の魔王軍兵士を止めることは出来ないと思われた。


「どういう事だ!増援はまだか!?」

近衛隊第二部隊の隊長クレファンスは、次々と傷を受けていく部下を見ながら、悲痛な叫びをあげた。

そこに伝令に向かった兵士がクレファンスの元に戻って来た。


「おお、増援はどうだ?」

クレファンスの言葉に伝令は視線をそらし言った。

「魔法支援部隊が到着するまで死守せよ、との事です」


一瞬言われた言葉がわからなかったクレファンスが、少し置いて聞く。

「黒龍支隊はその場に居なかったのか??」

クレファンスの問いに伝令兵は答える。

「いえ、黒龍支隊、勇者ザーリージャ様は、司令部部隊に同行していらっしゃいました・・・」

「なぜ、なぜ黒龍支隊は動かない!?」

「それは・・・わかりません・・・」


クレファンスは脱力感を感じる。

『すぐそこに対抗できる戦力が有るのに、何故、使わない?』

『その上、死守だと??兵士の命を何だと思っているんだ!?』


そんな怒りが浮かぶが、兵たちの手前、口にはしない。

「ぐっ・・・、では、魔法支援部隊は!?」

「10クロメルト※ほど前方に進出しているため、連絡を付けている所です」

※約6km

『連絡の伝令が着いて部隊がここまで移動してくるのに早くて半刻※ほどかかるか・・・』

※約30分

「全戦士チームに連絡、半刻の間持ち堪え、敵の足止めをしろ、と」

クレファンスは部下の兵士に済まないと思いながら、指令を出した。


しかし、敵側もこちらの都合に合わせてはくれない。

明らかに遅滞戦闘を仕掛けてくると見るや、絡みつく皇国軍の戦士たちの攻撃を無視して前進を開始した。

これを止めるには正面からぶつかって行くしかない。


そのため、また損害が増加し出す。

すでに右翼部隊の戦闘可能な部隊は5割にまで落ち込んでいた。


たった2体の兵士のためにである。


近衛隊第二部隊の戦士チームは勇猛果敢に戦った。

自分たちの攻撃が通用しないと目の前で見せられても、攻撃を止めなかった。

仲間が倒れても、次の戦士がその穴を埋め、黒いもやの兵士を攻め続けた。


しかし、まだ10分ほども経っていなかった。

「く、とても半刻も持たない・・・」

クレファンスがそう考えていた時に、彼方の空が光った。


2条の光の線がクレファンスの頭上を飛び越える。

何事だ?と空を見あげるクレファンス


その2条の光は、2体の黒いもやの兵士のほうに向かって行く。


光が黒いもやの兵士に直撃する直前、2体ともの黒いもやの兵士は大きく後退して光を避ける。

その光は、光の槍となって地面に刺さるが、しばらくして消え去った。


再び2条の光が上空に現れる。

2体ともの黒いもやの兵士は、全力で回避を行う。

しかし、光の槍は、兵士の回避方向に追従して飛んでくる。

単に放物線状に飛んでいるわけでは無く誘導されているようだった。


しかし、命中直前に回避する事で直撃は避けられるようだ。

2体ともまた上手く避けて光の槍には当たらない。

しかし、これでは黒いもやの兵士の側も前進出来ない状況だった。


これは魔法支援部隊の掩護攻撃と考えて、クレファンスは戦士チームを下げさせて、警戒態勢に移す。


今度は上空に1条の光が現れる。

2体の黒いもやの兵士は光が近くに来るまで身構える。


その光は1体に向かって突入する。

狙われた側の黒いもやの兵士は、頃合いを見計らって回避行動に移る。


と突然、光が数条に分裂した。


シャワーのように降り注ぐ光の筋。

狙われた側の黒いもやの兵士の回避範囲を超えて光の矢が降り注ぐ。

何条かの光の筋の直撃を受けた黒いもやの兵士は、動きを止め、体中から白い煙が立ち上っていた。

そこに間髪入れずに光の柱が現れる。

勇者アリーチェの光攻撃魔法「ヘリオスフィア」だった。


強力な光の柱に、黒いもやの兵士は焼かれる。

「ジジジ・・・・」


光の中で苦しむ兵士の姿がうっすらと垣間見える。

しかし、この状況でも、その兵士は生きているようだ。

これはSクラスの魔獣の防御力に匹敵する事になる。


攻撃の光が消えた後、突然、無事なほうの黒いもやの兵士は、すごいスピードで、動き出す。

警戒している戦士チームが慌てて対応しようとするが、攻めてくるわけでは無かった。


ダメージを負って動けない兵士を抱えて、撤退を開始したのだ。


戦士チームが追撃を掛けようとするが、クレファンスは制止した。

余りにも損害を受けすぎたのだ。

これでは、右翼側の占領地拡大の任務は果たせそうになかった。


クレファンスが、ふと100メルト※ほどの距離に、一団が居るのに気づく。

※約60m

勇者アリーチェを中心として、前衛に魔獣グリム、両脇に護衛兵、後方にジェーナとヒーラーを従えた一団だった。

彼らが大急ぎで駆け付け、敵を撃退してくれたのだ。

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