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「賊の襲撃」

「カチャン」

ドアの錠前がいとも簡単に外された。

そっとドアが開くと、3人の男が店内に侵入してきた。


周囲はうっすらと月明りが照らすのみで、周囲の家々も寝静まっていた。

男たち3人は、髪が見えないようにつばの無い黒い帽子をかぶり、口周りに黒い三角布を使ったマスクで顔を隠していた。

見るからに強盗か盗賊だった。


一番後ろの体格の良い男がリーダーのようで、前の2人に色々と指示を出していた。

「店の奥にエルフのような女が居るはずだ」

「まずはそいつを捕まえるぞ」

前の男二人は、頷いて、店の奥に進む。


しかし、3人の男たちは背後に気配を感じる。

「パタン」

自然な感じでドアが閉まったようだが、そのドアの前には人が立っていた。

「!!」

3人の男は、暗闇の店内にたたずむ人影に驚く。

「くそ!外に居たのか」

「いや、都合がいい、ここでエルフの女を捕まえろ!」

リーダーの男が指示すると、前を進んでいた2人の男が素早い動きで、ドアの前の人影に迫る。

この2人の男は冒険者かシーフのスキルを持っているようだった。


ドアの前の人影は、大型のナイフを抜き、構える。

「お、女なんかじゃねえぞ」

想定と違った相手の姿に勢いが怯むが、襲撃をやめるわけでは無い。


ドアの前の男は、自分たちと同じように、ニット帽のようなものを被っていた。

眼光は鋭く、戦闘慣れしていそうな態度だった。


「ガン!」

「ドスッ!」

ドアの前の男は、襲って来る2人の男を、近いほうから順にナイフの柄で殴りつけ、一瞬で昏倒させてしまう。


それを見ていたリーダーの男は、恐れおののき、2歩、3歩と後ずさる。

戦闘経験が豊かな男が2人も一瞬で倒されたのだから。


「大変失礼なお客ですねえ」

リーダーの男は後ろから発せられた言葉に驚いて振り向く。

そこには寝間着姿のリォンリーネが立っていた。


一瞬固まったが、気を取り直し、これを好機と見てリォンリーネを脅して捕えようとナイフを抜くリーダーの男。

しかし、その隙も無くリォンリーネは右手をかざして詠唱する。

「パラライズ」

リーダーの男は一瞬で気を失ったように膝から崩れ落ちた。


それを見ていたドアの前の男は、リォンリーネに目で合図した後、気を失っているリーダーの男に近付き、マスクを取り去った。

その男はマルクだった。


「あらら、マルクさんもとうとう盗賊に身を落としてしまったんですかねえ」

リォンリーネは同情するかのようにつぶやく。

それを聞いて、ドアの前の男、迅代は苦笑する。


今までのマルクの態度から、女性一人しかいない店としてリォンリーネを侮っている事は分かっていた。

そして、女性としても手に入れたいと狙っている事も。

それは恋愛感情なのか、色欲なのかは分からなかったが、どっちにしてもリォンリーネは迷惑と言っていた。

そんなマルクがリォンリーネを思った通りに出来ない状況は、力による強引な方法、を取る事も十分に予想できた。


そこで、店の周囲に赤外線警報装置の仕組みを魔法で再現した警報トラップを仕掛けておいたのだ。


警報の発令に、迅代はリォンリーネを起こした後、窓から外に回り込んで一網打尽にしたと言う訳だ。


捕まえた3人は縄でぐるぐる巻きにして動けないようにして、リシュター自警団に連絡して捕まえに来てもらった。

当然、賊3人の連行時や事情聴取時は迅代は姿を隠していた。

手下の2人をどう倒したのか聞かれた際は、相変わらずあやふやな嘘であぶなっかしかったが、なんとか切り抜けたようだった。


この事件はリシュターの都市で大きな話題となった。


なにせ、アトラーゼ商会の跡取り息子と見られていたマルクが強盗まがいの事をしでかしたのだから。

当然、後継者からも除外しないと、アトラーゼ商会全体の信用を揺るがし、商会自身の将来にも関わる事になる。

同時に、アトラーゼ商会が独占的な商品供給能力を武器に、取引先の商店に好き放題の圧力をかけていたことも、これを切っ掛けに問題視された。

いままで多くの商店がアトラーゼ商会に泣かされていたのだから。


皮肉にも、この事件がアトラーゼ商会の独占的な支配に待ったをかける事になったのだった。

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