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「裏ルート」

アトラーゼ商会は早速嫌がらせを始めてきた。


アトラーゼ商会と取引のある道具屋全てに、リォンリーネの店のオイルマッチを扱うなと指示してきたのだ。

もし扱えば、アトラーゼ商会から卸しているその他の商品を廻さないぞという事だった。


そのおかげで、オイルマッチの卸売り先は激減し、結局は取扱店はゼロになり、作った商品は売れない状況になっていた。

今度は大量のオイルマッチの在庫をリォンリーネの店は抱えてしまった。


「さすがに売れなくなっちゃいましたね・・・」

リォンリーネはしょんぼりした感じで呟く。

すでに在庫は100個ほどに積みあがっている状態だった。

だが、その前に出来るだけ生産販売したおかげで、当面の資金は確保済みであったが。


「これは、やっぱり、自分のお店を開けてここで売りましょうかねえ」

そう言うリォンリーネに迅代は助言する。

「当面の資金も有りますし、少し様子を見てみませんか?」

あまり危機感の無い迅代の言葉に、リォンリーネは不安を口にする。

「でも、全く売れないとなると、今月は良いとして来月は・・・」


迅代はその不安を拭うように元気づける。

「俺たちが作った商品はこの世界の人たちに役立つものですよ、需要は無くなっていません」

「それより、今のこの時間を利用して、次の商品を作りませんか?」

そんな状況でも、迅代はあまり心配していない様子で、次の真空断熱ボトルの製作のほうに徐々に力を向けつつあった。

暇になったリォンリーネも真空断熱ボトルの製作に軸足を移していた。


そんな状況で10日ほど経過したある日、リォンリーネの店を訪れる者が居た。


ドアの覗き窓から確認すると、マルクでは無い中年の男性だった。

安心したリォンリーネは、迅代はバックヤードに隠れてもらい、応対するためにドアを開けた。

「あら。確か・・・ミグルさんでしたかねえ」

何度かオイルマッチを買ってくれていた店の店主だった。

リシュターの中央通りでリォンリーネの店の何倍も大きな店を構えている。


どうぞどうぞ、とリォンリーネはその男を見せの打ち合わせテーブルに案内する。


「リォンリーネさん、オイルマッチを譲ってもらえませんか?」

ミグルは早速用件を切り出した。

「それは構いませんが、アトラーゼ商会に睨まれちゃいませんか?」

心配するリォンリーネの言葉に、申し訳なさそうに返答する。

「その、密かに購入したいと思っていまして・・・」

その言葉に不思議がるリォンリーネ。

「密かには良いですが?売れないのではないですか?」


その疑問にミグルは話し出した。

「実は今、オイルマッチが高騰していまして、2000ピネ※以上でも購入したいと言う方が居まして・・・」

※約2万円

「あらら、それは」

リォンリーネも目を丸くする。


「その、お得意様の冒険者の人たちが、裏ルートでも良いので手に入れたいとおっしゃっています」

「2個3個で良いので譲っていただけないでしょうか?」

そう言ってミグルはリォンリーネに頼み込んで来た。


「えっと、どうしましょうかねえ」

リォンリーネが裏販売するような行為に抵抗感が有り困惑していると、ミグルは値段交渉をしてきた。

「1個800ピネ※でどうでしょう?」

※約8000円

突然の申し出にリォンリーネが困惑する。

「えええ?」

「いえ、1000ピネ※までなら出します、どうでしょうか?」

※約1万円

「売りますよう!!」

リォンリーネは即答した。

やはり卸値の倍額まで言われれば迷う余地は無かった。


結局、この日、ミグルにはオイルマッチを5個販売した。

その上で、迅代とそのうち販売を開始しようと言っていて嫌がらせのために売り出せなかった詰め替え用油も1瓶付けてあげた。

このサービスにはミグルも大喜びで、また需要が有れば卸してほしいと言われた。

リォンリーネとしては通常の形で卸すほうが気持ちとしては良いのだが、今の状況では仕方が無いと考えて、了承した。


ミグルが帰った後、リォンリーネは迅代に嬉しそうにこの事を報告した。


迅代は余り驚いていなかった。

いずれそう言って来る道具屋が出て来ると考えていたからだ。

今のこの世界ではオイルマッチはリオンリーネの店でしか買えない物。

需要が有る限り、妨害されても買い付けに来る人が居るだろうと見越していた。


「でも、あまり目立つようにはやらないほうが良いと思います」

「次の嫌がらせをしてくるかもしれませんからね」

迅代は裏販売も慎重に事を勧めるほうが良いとリォンリーネには忠告した。

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