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「久しぶりの帰還」

セレーニアは久しぶりに皇都に戻ってきていた。


迅代と魔王軍討伐部隊の状況の調査に派遣されてから、アーロス領地での反乱騒動が有って、なし崩し的にアーロス領に留め置かれていた。

騒動の後始末や、領地の代理統治について、全ての仕事が終わったわけでは無いのだが、クロスフィニア皇女の計らいで、一時的に皇都に戻ることが出来た。

無論名目は、皇帝への報告であったので、暇なわけでは無かった。


皇帝への報告では、迅代とボーズギア皇子の間に疎通が不十分なために行き違いが発生したこと。

この行き違いによって、皇子は迅代を部隊指揮官を解任したこと。

その後、魔王軍の奇襲を受けて部隊が大損害を受けたこと。

そして、その窮状を迅代の介入によって救われ、皇子自身も迅代に救出されたこと。

しかし、それでも皇子が迅代に疑念を向けたことで、迅代が部隊を後にしたこと。

などを、皇帝、リューベナッハ妃、クロスフィニア皇女のまえで報告した。


一部の証言では、皇子が必要以上に迅代を蔑ろにしていた事や、最後には敵に通じているという疑いをかけた事などのものがあったが、公式な記録には載せられなかった。

なぜなら、皇子自身がそのような事を否定し、それを裏付けるものは証言のみであったからだ。

今の力関係では、あやふやな嫌疑は逆に、かけたほうが潰されかねない。

また、証言をした人物にも危険が有るかも知れなかった。


この件については、皇帝自身がボーズギア皇子自身の対応に問題が少なからずあるとし、その考えを質そうと発言したが、リューベナッハ妃が割って入ってきた。

リューベナッハ妃自身がボーズギア皇子を質し、その結果を皇帝に報告したうえで、必要ならば皇帝が対応するという形とされた。


それと、アーロス領の反乱の件も、ボーズギア皇子の関与の可能性が有った事は伏せられた。

この件が表沙汰になると、リューベナッハ妃の派閥は、なりふり構わず全力でその情報の出所を潰しにかかるだろう。

それほど、この件は致命的なものであった。


報告が終わったセレーニアは、すぐにでもアーロス領に帰らないといけない状態であったが、1日休暇を貰える事となった。

しかし、この休暇はクロスフィニア皇女に真実の報告を行うためのお茶会のために設けられたものだった。


「ごめんね、セレン、とっても疲れているでしょうけど・・・」

クロスフィニア皇女は白い結界部屋の中で、セレーニアに謝った。

「いいえ、フィア、わたしも早く報告したかったから、呼んでくれて助かったわ」

セレーニアはそう言うと、報告に挙げなかった「真実」をクロスフィニア皇女に話した。


「あのバカ皇子、付ける薬が無いわね・・・」

「ジンダイ様があの部隊に絶望して去ってしまったのも理解できるわ」

すべての話を聞いたクロスフィニア皇女は腹を立てていいるようだった。


「アーロス領で流された、ジンダイ様が敵に通じているという噂なのですが、いまだに根強く囁かれています」

「もしかしたら、リューベナッハ妃側の工作なのかもしれません」

セレーニアは個人の感触を話す。

過去何度も皇国ではリューベナッハ妃側の思惑に則った噂が流行する事が有った。

セレーニア達は、噂を意図的に流布する組織が有るのではないかと考えていた。


「結局、あのバカ皇子は魔王軍討伐部隊の司令官を留任することになったみたい」

クロスフィニア皇女は最近知った極秘情報を明かす。

「ええ?、あれほどずさんな指揮をして大損害を受けて、私情を持ち込むような人なのに??」

セレーニアはそうは言ったが、その可能性は考えてもいた。

何故なら、司令官の解任を行えば、ボーズギア皇子の失敗によるものという形を誰もが想像するからだ。

リューベナッハ妃側は、皇子の黒星を極力表沙汰にしたくないと思われたからだ。


「でも、それでは、ジンダイ様が勇者として活動も出来なくなってしまいますね・・・」

セレーニアは諦めたような口ぶりで話す。

そんなセレーニアを見て、クロスフィニア皇女は楽しそうな顔をしてほおづえをつく。


「そう思うでしょ?でもね、そこは少し考えが有るんだ」

クロスフィニア皇女は次のうち手を考えているようだった。

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