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「試作1号」

翌日からオイルマッチ試作の行動を開始した。

最初にまずは、迅代が概念図を紙に描くことから始める事になった。

その概念図を基に、詳細な設計図をリォンリーネが起こし、それを制作する形だ。


迅代は概念図を1日ぐらいで描き上げた。


元の世界でキャンプをしていた関係で、いろいろな着火道具にも興味が有り、オイルマッチもいくつか持っていた。


オイルマッチは構造と原理が簡単で、オイルライターと違い、他の物に火を移す場合に優れているという評価だった。

ちなみに元の世界の使い捨てマッチのようなものも考えてみたが、科学的な知識が必要で早々に諦めた。


オイルマッチが出来れば、旅の途中の宿泊や、一般家庭の火おこしなど、いろいろなシーンで使ってもらえると考えていた。


ただ、問題は、値段と、着火性能だった。


値段が高すぎるとあまり売れない。

不便とは言え、着火方法は確立しているので、便利さが勝っていないと見向きもされない。

そして、便利さが有っても、値段が高すぎると、買うまでもない、と判断されるだろう。

損してまで売るつもりはないが、高額過ぎないように考えないといけないと思っていた。


そのためには量産性=工数と原料の価格がポイントになるだろう。

そして、それを実現するには、適した油を手に入れる必要が有る。

この油が価格も利便性も左右する事になるだろう。


油以外の原材料は、既存に有り、想像できる範囲の物だった。


この世界では石油による油は当然流通していない。

石油の活用が出来ればもっと工業が発達するだろうが、この世界では石油や原油をみても黒いドロッとした変な液体としか思わないだろう。

当然、この都市で手に入れるのも不可能だろう。

そこは、油分の多そうな植物や動物から得るしか無く、試行錯誤による実験しか無さそうだった。


この油の選定は迅代が行う事になった。

リォンリーネは金属ケース、火付け用の棒、火打石の設計と製造など、やることが沢山有ったからだ。


試作開始から10日ほど経ち、リオンリーネが詳細な設計図通りのそれぞれのパーツを完成させる頃、迅代も油の候補を定めつつあった。

原料はパオバイと呼ばれる植物の葉で、主に、動物避けとして売られているものだった。

動物が嫌う匂いの成分は揮発性の油分であり、これを精製したもので着火実験は成功していた。


「ほらほら、ジンダイさん、油を入れても漏れませんよ!」

リォンリーネは手のひら大の金属ケースの上部に空いたねじ切りから、油を入れて叫んだ。

平面加工の加工は精密で密着度はかなり高そうだった。


迅代が概念図で描いた通り、金属ケースの横に火打石が装着されていた。

迅代は火付け棒に油を浸し、少し待って、鉄製の火付け棒の先端を火打石にこすりつける。

その衝撃により火花が散る。


が、火は付かない。

「あれれ、ダメですかね?」

リォンリーネは心配そうにのぞき込む。


「もうちょっと油が気化しないと付かないのかも知れない」

迅代は実験では火は付いていたので慌てていない。

そして、なんどかこすりつける事で「ボッ!」という音が鳴った。

火付け棒の先端に火がともる。

「わあ!点きました!」

リォンリーネが嬉しそうに叫ぶ。


そのリォンリーネの言葉を聞き、迅代も嬉しくなる。

「試作1号はなんとか形になったようだ・・・ホントによかった!」

めずらしく、迅代も嬉しそうに声を出した。


ひとしきり喜んだあと、冷静に、各部位をチェックするように使ってみる。


そうすると、色々と問題点も浮かんでくることになった。


まずは金属ケースの上部に火付け棒をネジのように回して収納するのだが、その精度が悪く、開け閉めしにくかった。

後は着火性にはやはり問題が有った。

実験時には大き目の火付け棒で試していたが、試作品のものは小さく、揮発する油の量が少ないのかも知れなかった。

火付け棒の綿の面積を広げて油の揮発量を増やす改造が必要に思われた。


しかし、基本的な所では成功していると二人とも思っていたので、もうひと頑張りという気持ちが有った。

そして試作2号を作る事で、ほぼ問題点を解消できたように思われた。


異世界の道具第1号のオイルマッチは完成したと言ってよかった。

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