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「掃除屋」

アレジアに宿屋の人に様子を聞きに行かせた後、セレーニアとトールズは窓から外を警戒していた。


そこに鍵の掛かっていない部屋の扉がすっと隙間が開く。

その隙間から覗く眼が光る。

アーロス子爵の放った刺客「掃除屋」だ。


掃除屋は5人のメンバーで構成されていた。

正面戦闘を担当する3人はシーフのスキルを持つ軽装戦士の男だった。

そしてアレジアと戦った警戒兼補給担当の女性。

このメンバーを束ねるリーダーの戦士の男という構成だった。


女性は受付で人払いを担当させて、リーダーと軽装戦士の4人は、セレーニア達3人の隙を窺っていた。

4人対3人では混戦になり、始末し切れない可能性がある。

アーロス子爵からのオーダーでは、金髪のロングヘアの女性を必ず始末するようにとの事だった。

そんな時、護衛の一人、アレジアが部屋から出ていったため、掃除屋のリーダーは、チャンスと見て襲撃を行うことに決めた。

一度に4人で突入すると、不利と見て逃げることを選択するかもしれない。

まずは、2人が突入し、頃合いを見て残りの2人が部屋に入り、退路を断つ状態を作り、始末することにした。


2人の刺客が部屋に入ってきたことに気づくセレーニアとトールズ。

「何?あなたたち」

セレーニアは刺客であろうことは想像はついていたがあえて聞いた。

なにも答えない2人の男。


掃除屋たちの予想通り、セレーニアとトールズは剣を抜き、戦う姿勢を見せる。

なまじ腕に覚えがある者は、圧倒的不利でない限り、戦おうと選択する。

しかしセレーニアとトールズはロングソード、掃除屋たちは暗殺任務に適した大型ナイフ。

部屋の中での戦闘では、ロングソードでは取り回しに問題が生じる。


無言の2人はじりじりとにじり寄り、交戦する間合いに詰めていく。


「セレーニア様」

かすかに階下からアレジアの声がしたような気がした。

セレーニアはアレジアの呼ぶ声と、帰ってこないアレジア、という状況で確信する。

『他にも刺客がいる』


トールズは睨み合いにじれて一太刀を入れる。

「はぁっ!」

「キン!」

突きにかかった剣は、掃除屋のナイフでいなされ、逆に反撃を受ける。

「キン!」

トールズも負けずにナイフを受けて流す。


剣を交わしながら、刺客は回り込もうとしている。

セレーニアはそう感じた。

『おかしい、逃げ道をふさぐように戦うのが暗殺者のセオリー』

そこである事に思い当たる。

『・・・扉の向こうにもまだ刺客が!?』

『前後で挟まれれば圧倒的に不利になる』

『しかし、近接戦闘では魔法の小技を組み合わせながら対応すれば数の差も埋められる』

『ジンダイ様は一人、そういう戦い方をしていた』

『ならば、わたしも刺客の誘いに乗ってみる!』

セレーニアはそう考えると、セレーニアに相対する刺客に剣をふるう。


「ギンッ!」

セレーニアの振るった剣を刺客は受け止める。

トールズの剣と違い、迷いがなく、重い。

よろつきながらも、刺客はなんとか後ろに回り込もうとする。


その隙を逃さず、部屋の扉に向かって手をかざしセレーニアは詠唱する。

「エアロエッジ!」

詠唱とともに、強い風と風の細かい刃が扉の外に奔流となって吹き荒れる。

「ぐっ!」

「ぐわっ!」

扉の外にうめき声が響く。


その声を聴くや否や、セレーニアは扉に突進する。

刺客は2人とも、不意の風の刃で傷を受け、よろめいている。

その姿を認めたセレーニアはサッ、サッと2人に向かって、力は全くこもっていないような剣筋をふるう。

「ぐわっ!」「ぎゃああ!」

リーダーの刺客を含め軽装の2人は深く大きな斬り傷を負い血を流していて、倒れこむ。

もう戦闘は不可能だった。


実はセレーニアの剣は、魔法で強化と鋭利の効果が付与されていた。

だから、重く、鋭い剣筋を出すことができる。


その様子に少し気圧されたが、残った2人の刺客が数の優位を保とうと同時にトールズに向かってくる。

「わ、ちょ」

慌てながらも必死でセレーニアの後ろを支えるトールズ。

「キンッ!」

「ガギッ!」

反射神経で2人の攻撃をかわす。

「守ってくれて助かったわ」

セレーニアはそう言うと、遠いほうの刺客に詠唱する。

「ウィンドダガー!」

風の短剣を受けた刺客が4~5か所の刀傷を同時に負ってのけぞる。

その様子に怯んだ残りの刺客に間髪入れずに、トールズのロングソードの突きが刺さる。

「ぐふぅ!」

腹部を刺された刺客は床に崩れ落ちた。


掃除屋の襲撃は、全滅という形で終わることになった。

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