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「調査」

セレーニアは魔王軍討伐部隊の状況調査の皇帝の承諾を取り付けた後、すぐに行動を開始した。


まずは皇帝の勅命を示す委任状を取得した。

状況次第では有るが、ボーズギア皇子と対立するような事態になった時に、何の拠り所もない状態では負けるのは判り切っている。

しかし、唯一、皇帝の勅命が有れば、皇子といえども無視は出来ず、強権による圧力にも対抗できる手立てだった。


そして護衛の人選。

今回は一人で行動するのは危険だった。

事故や魔物の襲撃を装い、亡き者にされる事態も想定される。

いくら勅命を帯びた使者であっても、死人に口なしだ。

最悪の場合は、その護衛に状況を説明しに皇都に逃げ延びてもらうつもりだった。


セレーニアはそれほど、今回の事は、慎重になるべき事案だと考えていた。


『あの誠実なジンダイ様が、責務や部下を放り出して逃げるという事は、どうしても考えられない』

『そのような事態に追い込まれたと考えるべきだ』

『皇帝の命を受けた勇者を陥れられる者、それは、皇族であり司令官のボーズギア殿下だけだろう』

セレーニアはそう推測していた。


護衛は近衛隊第四部隊から騎士隊の2名を選出した。

近衛隊第四部隊は過去にセレーニアも席を置いていたことが有る。

その時に目を付けていた人材から2名を選出した。

そして準備も早々に、にアーロス領に向けて旅立った。


それから3日後。


セレーニアはアーロス領の中心都市、アーロサンデに到着した。


アーロサンデ到着後、まず、セレーニアは領主であるアーロス子爵邸に、挨拶と今後の行動の自由を認めてもらうために訪問した。

アーロス子爵はボーズギア皇子と懇意の仲のため、秘密にしておきたかったが、今回は国家の公式な行動のため、逆に秘密には出来ないと判断した。

下手に秘密に行動すると、それを理由に足をすくわれかねないと考えたからだ。


少し待たされた後、アーロス子爵は面会に応じてくれた。

一通りの挨拶の後、皇帝の委任状を示した。


セレーニアはテーブルを挟んで座る、アーロス子爵に、さっそく本題を告げる。

「皇帝陛下より勅命を受け、先の魔王軍討伐部隊の戦いについて、調査を行いたい所存です」

「つきましては、アーロス領内での本件調査に関する行動の自由をお認め頂きたく、お願いいたします」


アーロス子爵は表情は変えず、うん、と頷き、部下に通行証の準備をするように伝えた。


「現在、魔王軍討伐部隊はどこに居るのでしょうか?」

「まずは部隊の各員に状況を聴取したいと考えています」

「皇都にはアーロス領にて事後処理を行っているとの連絡のみ有ったのですが」

セレーニアの問いに、アーロス子爵は答える。

「魔王軍討伐部隊の司令官、ボーズギア皇子殿下とは懇意にしている仲でしてね」

「魔王軍を撃退していただいた部隊の皆さまは、守備隊宿舎にお泊り頂き、貴族の方々には邸宅を提供させていただいています」

説明を聞きセレーニアが質問する。

「それでは、アーロサンデに居るのでしょうか?」

「左様です」

「では、それぞれ場所をお教えいただけますでしょうか?」

「ええ、わかりました、お伝するように手配いたしましょう」


「ボーズギア殿下とも面会したいのですが、どちらにいらっしゃるのでしょう?」

続けてセレーニアは質問する。

「ボーズギア皇子殿下は多少お疲れのようですので、我が別荘にてくつろいでいただいています」

「お会いしたいとのお申し出、皇子殿下にお伝えいたしますので、返答をお待ちください」


アーロス子爵の回答に、セレーニアは違和感を抱く。

『戦いは終わったとは言え、作戦行動中の司令官が部隊とすぐに連絡できない場所で休養しているの?』

『それに、そのような連絡は皇都には来ていなかった』

『しかし、まずは会って見てからか・・・』

そう整理するとセレーニアは違和感を出さないように明朗に返答した。

「承知いたしました。それでは連絡をお待ちしています」


セレーニアのはまだ、勇者ジンダイが部隊を裏切り逃亡したと言う噂を知ってはいなかった。

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