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「盗賊」

迅代は村には接触せず、単独行で皇都を目指す事にしていた。

今日は食料を狩る日だったが、野兎が一匹だけと、2日分の食糧には不十分だった。


今の迅代は、バトルナイフとサブナイフで狩りをしているので、素早い野生動物を狩るのが難しかった。

しかし、明日は決めた通り移動を行うつもりだった。

予定した日程では、5日ほども有れば、アーロス領の隣のリシュター領に入っている予定であったが、7日目でも、まだアーロス領内だった。


森の中では夜の移動は出来ない。

日が暮れる前に寝床となる木を探し、セッティングしようとしていた。


完全に陽が落ちようとする頃、迅代は異変を感じた。

かすかに人の話し声が聞こえたような気がする。

しかも叫び声だ。


今も森の中の道からすこし距離を置きながらも沿った形で移動はしている。

『道を通行している誰かが叫び声でも上げたのだろうか?』

『そういうシチュエーションだと・・・盗賊か?』


まずは様子を見るために、道のほうに慎重に移動する。


道が見えてくる距離まで近づくと、森の中に人が倒れているのが見える。

『どうする?姿を見られると、通報されるかも知れないが・・・』

一瞬迷った後、倒れている人に近づき、抱き起す。

身なりは冒険者のようだが、背中から槍を刺されていてすでに息は無かった。


そこから道のほうを見ると、複数の松明たいまつの明かりとざわざわと人間の気配がする。

『盗賊が旅人でも襲ったのか』

そう考えながら、気配を消してそっと近づく。


道の周囲には2人の冒険者風の倒れた人、そして、道に止まっている馬車の周囲に盗賊らしい者が10人。

そして馬車の前には商人らしい者と冒険者らしいものが1人づつ倒れていた。

『遅かったか・・・』

そう思いながら盗賊たちの様子を見る。

馬車を取り囲んで、まだ、攻撃態勢でいるようだ。

『生き残りが居るのか?』

もう少し様子を見てみる。


「おい!いい加減に出て来いよー」

「馬車ごと燃やしちまうぜー、ひひっ」

「大人しく出てきたら優しくしてやるからよー」

周囲の盗賊が口々に生き残りに馬車から出て来るように声をかけている。


『・・・やむを得ない、見捨てる訳にはいかないからな・・・』

迅代はそう思い、馬車を囲んでいる盗賊の輪の外側に姿を見せる。


「ザツッ!」

その音に盗賊たちが注目する。

「な、なんだよ、まだ護衛の生き残りが居たのか!?」

「相手は一人、囲んでやっちまえ!!」


最初は3人の盗賊がかかってきた。

『殺す・・・わけにはいかないか』

迅代はそう思い、3人の腕や足に深手の傷を負わせる。

「ぐわっ!!」「ひいいいぃぃ!」「いてええぇぇ!!」

瞬時に斬られた盗賊たち3人は転げまわっている。

『もっとも、出血を止めないと死ぬかもしれないがな』

そう思いながら、更にかかってきた3人も同じ目に遭わせる。

「な、なんだ!こいつ!」

「つええ!」

瞬時に6人が倒されたので、残りの盗賊たちがたじろぐ。


「早く仲間を助けないと、死んでしまうぞ」

「今すぐ去るなら見逃してやる」

迅代は大声で、残りの盗賊に告げる。


「くそ!、引き揚げろ!」

盗賊の頭らしき人物がそう叫ぶと、盗賊たちは負傷した仲間も助けず、道の向こう側へばらばらと逃げ出す。

「お、おい!助けてくれー!おい!!」

足を切られた盗賊の2人がその場で動けずにはいずりながら叫ぶ。


『そこまで統率が取れていないとは』

迅代はそんな事を思いながら、負傷した盗賊はそのままに、馬車のほうに向かう。


馬車を覗き込むと、人が一人奥でうずくまっていた。


暗闇の中、月明りの逆光で馬車を覗き込む迅代に怯えて叫ぶ。

「こ、殺さないで!!」

そこには平民らしい女性が居た。

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