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「突然の・・・」

荒涼とした草原に、薄曇りの天候の中、迷彩服を着た3名の兵士とその後ろに1名の兵士が付いて進む。

その動きは慎重で、中腰でゆっくりと周囲を見回しながら動く。普通の人がその姿勢で動きまわれば、翌日は筋肉痛に見舞われるだろう。

先頭の兵士が手をグーの状態にしてあげ止まると、他の3名は動きを止め、ゆっくりと姿勢を低くする。


最後尾の1名の兵士は、少し頭を上げ、周囲の様子をうかがう。

「距離200m。「敵」分隊が侵攻中、阻止攻撃を行う。数は見えるところで8名」

指揮官らしきその兵士が言うと、他の3名は先ほどと同じような動きで散開し間隔を取る。


指揮官らしき兵士の持つ自動小銃はスコープが付いていた。スコープ越しに狙いをつける。「敵」はまだ気づいていないようだ。

引き金を引くと、パン!。銃の発射音が響く。

ピーッ、スピーカーから音で、先頭の「敵」兵士は驚いたように動きを止めた。

胸のモニターを確認すると「頭部被弾・行動不能」となっていた。

よく見ると各兵士のヘルメットには黒いコブ状のものが付いており、自動小銃にもごてごてと装置が付いていた。交戦用訓練装置だ。


ほぼ同じタイミングで散った3名の兵士も射撃を開始する。パン、パン、パン。

あっという間に「敵」3名が動きを止める。命中判定だ。

その後ろを進んでいた「敵」の残り4名はその場に伏せる。

反撃しない所を見ると、どこからの射撃か把握できていないようだ。

しかし、その動きを観察していた後ろの指揮官の兵士は「敵」の指揮官を見つけていた。


頭を下げさせようと「敵」の兵士が無暗に連射を行う。パン、パン、パン。パン、パン。被弾判定はゼロ。

パン、こちら側の反撃で、逆に連射射撃していた兵士は黙らされた。

そして、パン!、指揮している兵士が「敵」の指揮官をスコープで狙いを付け狙撃する。

「敵」の指揮官もやれやれという感じで尻餅をつく。

命中となったようだ。


残った「敵」の2名は「味方の死体」を置いて、すごすごと後退して行った。

敵を撃退した兵士4名は、また、索敵体制に戻り前進する。この浸透攻撃に小隊の勝利がかかっているのだ。

「またお前か、迅代ジンダイ三曹」

死体になったはずの「敵」指揮官がそばを通るときに話しかけてきた。

「死体はしゃべらないでくださいよ」前方を警戒しながら指揮官の兵士が言う。

「貴様にやられたのは2回目だ、この死神め」

「あいにく、味方にとっては守護天使でね」

そう言いながら迅代三曹と呼ばれた男は前進していった。


迅代三曹は、この日6名を行動不能にして、部隊で一番の個人戦果を挙げ、小隊の勝利に貢献した。

そして彼らが行った浸透攻撃により敵は退路を断たれ、目論見通り、小隊の本隊で敵の中核部隊を挟撃できた。

彼は国防軍の普通科部隊に所属する三等陸曹で、少人数のチームを指揮する戦闘では無類の強さを発揮する能力を持っていた。

また、分隊の中ではマークスマンとしての役割を与えられており、スコープ狙撃の腕もかなりのものだった。


演習が迅代の所属する小隊の勝利でひと段落し、迅代三曹含め、何人かが他の部隊の集結を待っていた。

そこには何台かの迫撃砲を引いた高機動車が止まっていた。

迫砲中隊の車両のようだ。

迅代含め、そこに居た10名ほどの兵士は、装備を下ろすなどしていて完全に警戒を解いていた。

思い思いに水筒の水を飲んだり、談笑したりしていた。


そんな時、世界が一瞬で白くなる。


ドオォォォン!!!


周辺を揺るがす大きな爆発が発生した。


止めてあった高機動車が吹き飛ぶ。周囲にいた兵士の体も爆発の威力に四散した。


運搬していた迫撃砲弾が同時に爆発したのだ。


迅代は異常な衝撃に反射的に身をかがめたが、爆発の威力は絶大だった。

何が起きているかを認知することなく、気が遠くなっていった。

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