殿下、お菓子のためにここまで来たのですか?
「そなたの願いは元の世界に戻ることだったな」
「さようでございます、陛下」
「愚息との婚姻の話を耳にしたが」
「殿下の戯れです。愛する女性が他にいるようですから」
「元の世界に想う者は?」
「そのような者はおりませんが、私のことはお気になさらず」
「そうか。ケイコよ、我が国のための働きに感謝する」
「もったいなきお言葉」
――何が感謝よ、このタヌキジジイ!
異世界をあとにする時に思ったのはこれだけ。確かに王子とイイ感じになったけど、きっと王から命令されていたのだろう。
王子は浄化の終了を知った途端、他で真実の愛を見つけたと私に告げた。
この私が聖女と呼ばれ
人に感謝された。
人の役に立てた。
それ以上望むのは不相応というもの
「で、なんでアンタはここにいるの」
なんの代わり映えもしないOL生活に戻っていたある日、帰宅するとベッドに王子が寝ていた。
しかも王族の服はハンガーにかけられ、上半身は裸だ。
「忘れられなくて」
「何を」
私を、とか言われてももう遅いよ?
「お前が来た時に食した菓子だ」
「菓子」
「もちろん、お前もだ」
「へー」
殿下、お菓子のためにここに来たのですね
「あの、ハッピーなんとかという、魔法の粉がかかったものだ」
「ああ、転移した時にカバンに入っていたものを殿下は食べていましたね」
「それだ」
「今思えば、知らない世界の食べ物をよく口にできましたね」
「鑑定したら害はないとでたからな」
――そうだった。この王子は魔法の能力は国一番とか言われていた。鑑定も普通にできるのか
「アレのためにわざわざ?」
「そうだ」
「ちゃんと帰れるのですか? この世界で魔法は使えませんよ?」
「知っている。魔力をためる魔道具を完成させたから、転移は問題ない」
「私がこの世界に戻るのにはかなり大がかりな準備をしていましたが、殿下は簡単に行き来できるのですね」
「あれは時間稼ぎだ」
「時間稼ぎ……」
「魔道具が完成するまではお前を元の世界に帰すわけにはいかなかったからだ」
――よくわからない
「わからないという表情だな。あの菓子をもう一度食すためには、お前をこの世界に戻す必要があったということだ」
――もっとわからない
「全ては菓子とお前を手に入れるため一芝居を打ったのだと言っている」
「一芝居」
「あのまま私と結ばれたらお前はこの世界に戻る気はなかっただろう」
「そうですね」
「だからだ」
「わかりません」
「さあ菓子を手に入れて一緒に帰ろう」
「菓子だけ持って、帰れ」
菓子はハッピーター○です。
主人公は気持ちが冷めているので、ここから恋愛に戻るのかは王子次第です。
利用されるだけされて捨てられたという思いがあるので、芝居だと言われても複雑な心境という感じです。
あとマイペースが崩れかけているので、しばらく読む方に専念します。