新たな来訪者の件
第688話
「さてこれからどうするかのぅ」
エリスさんが肉にかぶりつきながら言う。
「そうですね。召還の心配はなくなりましたけど」
僕達はひとまず食事をしながら作戦会議を始める。
「四葉が召還師と戦ったところに向かうのはどう」
沙羅がもぐもぐと食べながら話す。
「ほぅ、それはなぜじゃ」
「あれだけ強力な敵が倒れたからには様子を見に魔人が集まるかも知れないし」
「ふむ、それは確かに」
「それか残ってる召還された人間に会ってみるか」
「そうだよね。沙羅みたいに味方になってくれる可能性もあるし」
「ちょっ、ちょっ、それより」
未来が沙羅に指を向ける。
「人に指を指すのは失礼よ。未来」
「いや、だって普通に沙羅が食事をしてるから!!」
「そ!!そういえば」
「あぁ、色々あって食べれるようになったのよ」
「色々って」
「まぁ、気にしないで」
沙羅はものすごい量を食べている。
「はぁ、太らないなんてうらやましい」
「今まで食べてなかった反動かな。お腹が空いて空いて」
「急に食べると胃に悪いから気を付けてよ」
「未来はお母さんみたいね」
「おか…うぅ」
「なんか地雷踏んだ?」
「大丈夫だよ。未来は老けてないよ」
「徹!!」
「仲良しですねぇ」
「そうだなぁ」
「では、食事を終えたら四葉が戦闘をした場所に向かうとするか」
「距離はそこまで遠くないしね、というか1度転移してるからまた転移するわ」
「そうか。この大人数で大丈夫か?」
「問題ないです。食事のお陰で元気もありますし」
「そうか」
沙羅も良い方向に変わっておるのぅ
「よし、ではそろそろ行くとするか」
「はい」
僕達は準備を終える。
「じゃあ、魔人と鉢合わせも嫌だから少し離れた場所に跳ぶわよ」
「そうじゃな。頼む」
冷静な判断じゃな。
沙羅がここまで変わったのは何がきっかけなのじゃ
「よし!!」
僕達は四葉さんが戦闘した区域より少し離れたところに現れる。
「どう?ヒデリ」
「魔人の反応はないな」
「じゃあ、来た意味ないんじゃないのー」
「ふむ、魔人が釣れるかと思ったがそうそう上手くはいかんか」
「ちょっと待って。人の、能力者の力を感じるわ」
沙羅が周囲を見渡す。
「話が通じる相手かな」
「わからないけど、これだけ力を解放してるとなると警戒心はかなり高そう」
「じゃあ、私があそこに行って話をしましょう」
カエデが自信満々に言う。
「……」
「私が行くわ。能力者なら私の世界の人間かも知れないし」
「お主に話し合いが出来るのか?イライラしてケンカにならなければよいのじゃが」
「大丈夫よ。何とかなる」
沙羅はつかつかと歩き始める。
さて、どこから来るか。
「沙羅!!」
突然名前を呼ばれて沙羅はびくりとする。
空中からセミロングの女性が降りてくる。
「ミナトさん?」
「よかった、知ってる人が居て」
「何だか顔見知り見たいですよ」
「声が聞こえるのか」
「はい、何とか」
「さすがね、カエデ」
「それなら話は早い我々も行くか」
「ちょっと、まだ分からないよー」
「疑いすぎではないか?」
「警戒は大事だよ」
「ふむ、じゃあもう少し様子見と行くか」
「どうして、ここに?」
「私も聞きたいくらいよ。気づいたらこの世界にいたのよ。向こうで買い物をしてたのに」
「そ、そうなんですね」
「沙羅はこの世界に詳しそうね」
「はい、もうここに跳ばされて結構経ってます」
「そうなんだ、戻れる方法は?」
「四葉が自由にこの世界に行き来してるから四葉が気づけば迎えに来てくれるかも」
「そう…でも今は忙しそうだしなぁ」
「そうなんですか」
「うん、私の町にも四葉が死ぬほど忙しくて過労死するんじゃないかって噂が出てるわ」
「ま、まぁこっちの世界になんだかんだ干渉してたから…」
「あそこにいるのは沙羅の仲間?」
「そうです。この世界の人達と私達とは別の世界から転移してきた人間もいます」
「そう…しかし困ったわ」
「ミナトさんの町も手薄になりますね」
「いや、買い物の会計を済ませてないのよ」
「あ…」
沙羅は呆れた顔になる。
「こっちに気づいてますよ」
「ふむ、どうやらまた強き者のようじゃな」
「とりあえず、僕達も向かいましょう」




