未来を生きるの件
第678話
「おい、けいすけ。沙羅が起きたぞ!!」
「なんだって」
「ん?」
私はむくりと起き上がる。
「けいすけって誰?」
「俺の本名だよ」
福原が近づいてくる。
「へぇ、そうだったんだ」
私は思わずヒデリを見てニヤニヤとする。
「な、なんだよ。心配したんだぞ」
「みんなは?」
「ああ、お前の捜索を続けてたんだけど俺達が残ることになって、みんなには先に行ってもらった。エリスさんは反対してたけど」
「良かった。いつまでも私を探してたらどうしようかと思ってた。どのくらい経った?」
「みんなで1日探して、あたいたちが探し初めて今日で3日目だ」
「えっ!?1週間も経ってないの」
おかしいあの世界では1ヶ月は経過してた筈だ。
まさか本当にただの夢だったのか?
私は腰に手を当てる…
やっぱり夢ではないみたいだな。
「どうした?」
「いや、長い夢を見ていたみたい」
「そうか」
「それにしても沙羅。ケガはしてないのか?」
「えっ、ああ。知らないうちに治ってるみたい。それより剣山は?」
「エリスさんが倒したぜ」
「そう、じゃあ。みんなのもとに急いで行かないとね」
「そうだな」
「おい、沙羅。あんた刀が見つかってねぇぜ」
「ああ、あれは別に良いわよ。元々剣術主体の戦闘は得意じゃないから」
「そんなんでいいのか?」
「いいのいいの、別に名刀でもないし。それより2人はもう少しここにいる?」
私はまたニヤニヤと笑う。
福原とヒデリは顔を見合わせて顔を真っ赤にする。
「ぷっ」
私はこらえきれずに吹き出してしまう。
「て、てめぇ。沙羅」
「いいじゃん、いいじゃん。素直になりなよ」
「なんだか、キャラが変わったな」
「あ、そうだ。福原!!」
「なんだ?」
「お腹空いたわ。何かない?」
「携帯食はないぞ。徹に貰ったおにぎりくらいしか」
「それでいいわ。頂戴」
「えっ!!でもよ」
「いいから」
「わかったよ」
私は福原からおにぎりを受け取り食べ始める。
「うん、美味しい。賞味期限が気になるけどまぁいいか」
「沙羅、おめぇ食事取ってるじゃねぇか」
「うん、何だか知らないけど夢のおかげよ」
「なんだか会話が噛み合ってねぇなぁ」
ヒデリが呆れる。
「まぁまぁ、いい夢だったんならいいじゃねぇか」
「むぐっ、ごちそうさま。じゃあ、そろそろ跳ぶわよ、2人とも掴まって」
「おう」
ヒデリと福原は私に掴まる。
「さてと」
私は目を瞑って気を追う。
「何これ…」
「どうしたんだ?」
「気を感じない」
「なんだと!!」
「落ち着いて探してみろよ」
「やってる。けど…」
集中しろ、沙羅。
そんな筈はない。
「どうだ?」
「気を感じないとどうにもならない…徹なら常に気を纏ってるからそれを頼りにしようと思ったんだけど」
「それってまさか」
「まさかかも知れない…」
「そんなはずねぇよ。あいつらが負けるわけ」
「分かってる、今何とか探してるから!!」
落ち着け。あの人達なら大丈夫だ。
私は全神経を研ぎ澄ます。
「感じた。エリスさん!!」
その瞬間私達はその場から消える。
「着いた…」
私は目の前の光景に言葉を失う。
「やっとお出ましか。サイコパワーのお嬢さん」
エリスさん達は地面に倒れてぴくりとも動かない。
「みんな!!」
福原が駆け寄ろうとする。
「だめ!!」
「えっ」
「あいつの周辺に重力が発生している。近づいたら潰される」
「流石はサイコパワーの持ち主」
「私に用があるにしてはずいぶん派手にやってくれたじゃない」
「こうでもしないと来ないと思ったからね」
「あんた、私を知っているの?」
「もちろん、私はあなたの世界の人間だったものです」
「今は魔族と契約を結んだのね。でもあんたとは元の世界で会ったことないと思うけど」
「それはそうでしょう。これから殺そうと思ってた矢先の転移でしたから」
「そう」
私は奴が発する重力の中に入っていく。
「ほう」
「やってくれたわね」
私は両方の拳を強く握る。
みんなの息はまだあるようだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「えっ!?」
「沙羅!?」
「な、なんだと」
私はサイコパワーを一気に解放する。
「くっ、バカが。味方まで吹き飛ばす気か」
私は構わず力を放出する。
するとみんながフィールドから吹き飛ばされる。
「そういうことか!!」
「ヒーリングハンド!!」
私はダイヤさんを回復する。
「ヒデリ、そっちは任せた」
「なるほど、なかなか面白いことをしますね」
「このままあんたを倒すわ」
やはりサイコパワーを回収したのは大きい。
力がみなぎる。