限界の件
第645話
「サイコパワー解放!!」
沙羅の力がぐんぐんと上がっていく。
「ちょっと、どうしてこうなるのよ」
弥生は後退する。
「どうやったら徹に戻る?あんたを叩きのめせばいい?」
「時間が経てば戻るから。それよりも力を使わないで」
「うるさい、あんたの狙いはわかっている」
「!!」
「えっ!?」
「なんじゃ?」
「あんたは私が弱っている隙にこの体を奪おうとしているんでしょ?」
「…!!」
「弥生、本当なの?」
未来が詰め寄る。
「なーんだ、バレてたのか」
「やっぱりね」
「貴様、どういうつもりだ」
エリスの力が上がっていく。
「待って、そいつを責めないで」
「なんじゃと、沙羅」
「弥生だっけ?あんたの気持ちもわかるよ。肉体が欲しいんだろ?」
「……」
「本当は弟と一緒に生きたいんだろう」
「あんたに何がわかるのよ」
弥生が唇を噛み締める。
「わかるよ、私も双子の妹がいるから。本当は一緒にいたいよね。本当は一緒に話したいよね」
「うるさい、うるさい。私は弟と交代することでしかこの世に存在できない。本当は一緒に同じ世界を生きたい。2人でしゃべりたい。こんな当たり前のことが私には出来ないんだよ」
「なら、力付くで私の体を奪いなよ」
「そうさせてもらうわ」
弥生も力を解放する。
「ちっ、今までとは比べ物にならない力じゃ」
「やばいよ、このままじゃ沙羅が」
ヒデリは涙を浮かべながら福原に掴まる。
「俺達にはどうにもならねぇ。エリスさん!!」
「ああ、止めるぞ。ダイヤ、カエデ、ロミア」
「了解」
「了解です。ロミアちゃん、今度こそ油断なしで行きますよ」
「はい。今回ばかりは油断は出来ません」
「ファイナルサイコスラッシュ」
沙羅が光の刃を放つ。
「どこに向かって撃ってるのよ」
するとエリス達がいる地面が割れていく。
「ぬお、沙羅!!」
「エリスさん達は手を出さないで」
沙羅はぜぇぜぇと呼吸が荒くなっている。
「く、どうする。四葉はこれないのか?」
「そうそう、何度もこれないでしょー。それよりエリス様、私達も融合するよ」
「ああ、カミアと私達なら何とかなるかもしれん」
「ここは私に任せてください」
「四葉か!!」
「違いますよ」
エリスの目の前には沙羅と同年代の女性が立っている。
「だ、誰じゃ。お主は」
「申し遅れました。私は神永遥と申します」
「かみながはるか?」
「はい、よろしくお願いします」
「それでお主に何が」
「この力、ご存じでしょう」
遥の目が金色に光る。
「な、何。これはサイコパワー」
「な、サイコパワー!!」
沙羅が動きを止める。
「油断するなぁ」
弥生が攻撃をしかける。
「ちょ、ちょっと待って」
沙羅はギリギリで攻撃を避ける。
「待てないわよ」
「違う、なんでサイコパワーを持った人間がいるのよ」
「何を言っているのよ」
すると弥生の前に遥が現れる。
「な、突然現れた」
「ごきげんよう」
「な、何よ。あんたは」
「私は遥です。こんにちは」
「あんたもサイコパワーの持ち主」
「沙羅さん、こんにちは。噂は常々伺ってます」
「サイコパワーの持ち主は丁寧な言葉遣いが多いのぅ」
「沙羅は違うけどね」
「あなた、誰?私は知らないわよ」
「そうでしょうね。私は四葉さんの指令で別の任務に就いていたので」
「私以外にも力を持ったものがいたなんて」
「あれ、知りませんでした?まだ四葉さんの周りにはサイコパワーの持ち主は数人ですが存在しますよ」
「そ、そうだったんだ」
「それより、あなた達の戦いは意味があるのですか?」
「あるわよ、私は沙羅の体を貰うのよ」
「こんな、ボロボロの体をですか?乗っ取ってもあなたの力ではすぐに死んでしまいますよ」
「私なら制御できる!!」
「出来ません、サイコパワーは生まれつきの力です。力を持たない人間がサイコパワーを持てばすぐに消滅します」
「そんな…私は存在できないのか」
「心中お察しします。魂の方」
「くそ、くそぅ」
弥生はボロボロと涙を流す。
「ねぇ、遥だっけ?こいつに何か入れ物を用意することは出来ないの?」
「私達は神ではありません。そんなことをしたら禁忌に触れますよ」
「そうよね…」
すると弥生の姿は消えて徹に戻る。
「あれ?僕は??」
「のんきなもんね」
「へっ?もしかしてまた。メルルンと? それよりあのはじめまして」
「はい、はじめまして」
遥はにこりと徹に笑顔を向ける。




