徹と沙羅と四葉の件
第628話
「沙羅、私が別の世界に干渉しない理由は聞いてましたね」
「とっくに気づいてたのね」
「ええ、いい機会なのであなたにも聞いてもらおうと思いまして」
四葉はにこりと笑う。
「その見透かした態度が徹の癇に触ったんじゃないの」
「うっ、そうかもしれませんね」
「四葉の弱点を見つけたわ。その態度少しは改めると良いわ」
沙羅はここぞとばかりに詰め寄る。
「あなた本当に感情が豊かになったわねぇ」
四葉は目を丸くする。
「ちょっと私の話聞いてた!?」
「聞いてましたけどそれよりも感激しましたよ」
「だめだ、ペースが掴めない」
(僕もそれは思ったよ)
「まぁ私も弱点がわかってよかったです。お2人のお陰ですね」
「はぁ、何でそうプラスに考えられるのかねぇ」
沙羅は呆れた顔をする。
「まぁ、年齢を重ねると考え方も変わりますよ」
「四葉って何歳だっけ?」
「22ですよ」
「えっ!!」
「えっ!!老けて見えますか!!」
「いや、違います。落ち着いているのでもっと年上なのかと」
「それって老けているって言ってるようなものですよ」
「す、すいません」
「ぷっ、徹のばか。自分で墓穴ほってる」
「笑うなよ!!」
「さてと、お2人ともやるべきことは決まったようですね」
「……」
「どうするのよ、徹」
「僕は未来を救いたい。そして皆と一緒にこの世界を救いたい。僕らの存在がこの世界にとってどんな影響を与えるかはわからない。でも今は目の前のことに向き合って行きたい」
「私達が別の世界の人間でも?」
「うん、僕がこの世界に来たのは意味があると思うんだ。だから僕はこの旅でこの世界に来た意味を探すんだ!!」
「意味か…」
「その強い意志があれば大丈夫ですね。私はそこまで考えられませんでした」
「四葉…私も徹と一緒の考え」
「いいと思いますよ。ただしちゃんと見つけて来ないとお仕置きですからね」
「うっ…」
「ありがとうございます。四葉さん!!」
「私は何もしてませんよ?」
「いえ、僕の中での答えが出ました。それと四葉さんの気持ちもわかりました。僕はその上でこの結論にたどり着くことが出来ました。結果的には干渉という答えにはなりましたが」
「答えは自分で決めるものです。あなたがその答えを出したのならそれが正解だったと思える行動をしなさい。沙羅もですよ」
「わかってる」
「じゃあ、四葉さん。僕達はこれで失礼します」
「四葉も早く帰りなよ。向こうの世界が混乱してるわよ」
「ええ、力が戻り次第帰りますから気になさらず」
「そう、じゃあね」
「失礼します」
僕達は四葉さんと別れて歩き始める。
「意味か…2人が答えを見つけたのなら…まぁ沙羅はもう答えが出てたようだけど、私がここに来た意味もあったのでしょう。頑張ってくださいね。さてともう1つ意味があったということがありそうですね」
四葉が後ろを振り向く。
「なんだ、女。気づいていたのか」
「はい、いつ襲いかかってくるのか気になっていたのですが」
「ふん、余裕こいてると…死ぬぜ」
「はぁぁ」
「何よ、深いため息なんかついて」
「いや、皆に合わせる顔がなくて」
「じゃあ、四葉のところにいる魔人でも倒してきたら」
「えっ!!」
「さっきから四葉を狙って沢山の魔人が隠れてたわよ」
「ええっ、何で見捨てたの」
「人聞きが悪いわね。私達がいたら本気が出せないでしょ」
「そんな感じでいいの?」
「うん、だって四葉だもん」
「ほ、本当にそれでいいのかなぁ」
「いいのよ。ほらさっさと歩く」
沙羅は僕の手を掴んで歩き始める。
「やれやれ、沙羅のやつ。力付くで徹のところに向かうとは」
「あははは、頬っぺたがパンパンだよ。エリス様」
「うるさい、早く回復せんか!!」
「本気で止める気なかったくせに」
「う、うるさいのぅ」
「さてと、帰りますか。よかったのですか?沙羅に会わなくて」
「はい、沙羅ちゃんの顔を見て安心しました。それに沙羅ちゃんも私がいたことに気づいていたようですし」
「変わりましたね。沙羅は」
「そうですね。でも沙羅ちゃんの根底の部分は変わってませんよ。いつも通り優しい沙羅ちゃんです」
「そうですね。では後はあの子が無事に還ってくることを祈りましょう」
「はい、四葉さん」
四葉と1人の少女は姿を消す。




