還りますの件
第624話
「ちょっとお嬢ちゃん」
四葉はすぐにロミアに追い付く。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ」
「とって食わないから大丈夫ですよ」
「あばばばばばば」
「ロミアちゃん、落ち着いて」
カエデが近づいてくる。
「四葉さん、ロミアちゃんに何か?」
「ええ、この子の体からサイコパワーを感じたので」
「ああ、チビロミは私のサイコパワーを吸ったのよ」
「あら、沙羅もう大丈夫なの?」
「ダイヤさんのお陰でね」
「それにしてもチビロミって相変わらずあだ名のセンスがないわね」
「そうなんですか?」
「ええ、私の姉が可愛いがってるワンちゃんにも垂れ耳ってあだ名をつけてたわ。ミカエルってかわいい名前があるのに」
「垂れ耳…」
カエデは冷たい視線で沙羅を見る。
「な、なによ。カエデ」
「それより、この子はサイコパワーを吸収して上手く循環しているようですね?」
「は、はい。偶然ですがそ、そのようなことにな、なってました。すいません」
「別に謝ることではないですよ。なんなら私の力を分けてあげましょうか?」
「えっえっ」
「だめよ、四葉。あんたの力を渡したらチビロミが爆発するわよ」
「びゃびゃーー」
「ロミアさんを驚かしてはいけませんよ」
「事実を言ったまでよ」
「じゃあ、爆発しない程度に分けましょう」
「ひっひいぃぃ」
四葉はロミアの頭に手を乗っける。
「深呼吸してください」
「は、はい」
「では行きますよ」
(暖かい、すごく優しい力…懐かしい。お母さん…)
ロミアはボロボロと泣き始める。
「あ、チビロミが爆発する」
「しませんよ。上手く吸収出来たみたい」
「じゃあ何で泣いているのよ」
「それは私にもわかりません」
「す、すいません。何だか優しい力が入ってきて」
「ああ、沙羅の力はトゲトゲしてますからね」
「うるさいなぁ」
「力の送り方は見てた?」
「うん、今度はそうやってやってみるよ」
「いい心がけね」
「えーと、四葉氏」
エリスが近づいてくる。
「はい、あの前も言いましたが私に気を遣わなくていいですよ」
「それでは普通にしゃべりますが、ここに来て大丈夫だったのですか?」
「ええ、今のところ私達の世界は落ち着いてます。それと第2段階に入ったサイコパワーの持ち主を見届けるのは私の役目なんです」
「それはなぜ?」
「私も含めてですが、サイコパワーは進化するんですけどそれに耐えられなくて命を落とした者もいます。しかしこればかりは自分の力次第です」
「ほう」
「なので、今回は大丈夫でしたが、場合によっては暴走を止めないといけないので」
「それで現場、現場にお主が行っておると」
「そう言うことです」
「暴走した場合止めたとしてその人は?」
「止めて何とか一命を取り留めた者もいますが先程も言った通り命を落とす者もいました。それを減らすために私は日々この力を持った者を監視する役目も担っています」
「つまり、私は試されたわけね」
「まぁ沙羅の場合は最初の時点でコントロール出来てたのはわかってましたけど」
「ええ、じゃあ何で戦ったのよ」
「単純な興味です。暴走する気配もなく第2段階に進化したサイコパワーの持ち主は今まで見たことがなかったので」
「興味で殺されかけたってこと…」
「まさか、殺しませんよ」
「話を聞いていると、お主が最初のサイコパワーの使い手のようですな」
「正確にはわかりませんが私の世界ではそう言われていますね。まぁ子供の頃はこの力で大変な目に合いましたけど今ではそれなりに信用をしてもらっています」
「へぇ、四葉の苦労話なんて聞いたことないや」
「話す程のことではないですからね。あなたよりは平和に過ごしてたかも知れません。嫌味ではないですよ」
「わかってるわよ。四葉に保護されてなかったら今頃私達はもっと大変な目にあってたし」
「それならよかっですけど、さて私は明日菜を捕まえてきます。沙羅後はよろしくね」
「まだ見つからないの」
「誰ですか?それは」
「沙羅と同い年くらいの少女ですが彼女はサイコパワーを悪い方に使ってましてね。1度懲らしめたのですが、また最近彼女の力を感じてるんですよ。なのでまた悪さをする前に捕まえないと行けないんです」
「大変ですのぅ」
「はい、沙羅!!あなたも力の使い方には気をつけてね」
「そうね」
「じゃあ、皆様またしてもお邪魔してすいませんでした」
「いえいえ、色々と世話になりました」
「徹さん」
「は、はい」
「ご不満そうですね」
「はい、やっぱりあなたの考えは理解できないです。干渉しないと言ってる割にはこの世界に来てるし」
「おいおい、徹。今回は目的があって来てるんだぜ」
「そうですか。まぁ都合がいいように見えても仕方ありませんね。でも前にも言いましたが否定はしません。ただ力の使い方にはあなたも気をつけて下さい。特に大事な人を守る時に力は人を変える時がありますから」
「うっ」
僕は過去を振り返って痛いところをつかれた気がした。
「ではごきげんよう」
四葉は姿を消していく。
「サイコパワーを悪く使うやつもいるんだな」
ヒデリが沙羅に近づく。
「そりゃそうよ。いきなり自分に力が出現したら悪いことを考える人間がいてもおかしくないでしょ」
「確かになー」
「考えたこともなかったな…」
僕は自分の手を見つめる。
「おいおい、徹。変なこと考えるなよ」
「考えてないよ、福原。それにそんなことしたらここの皆に殺されるし」
「確かにそうだな」
ガハハハと福原は笑う。
その様子をエリスさんと沙羅が見ていたのを僕は気づかなかった。




