華奢なの?の件
第618話
「はぁぁぁぁっ」
カエデは沙羅に斬りかかる。
沙羅は華麗に攻撃をかわし続ける。
「くっ、当たらない」
「もっと、力を解放しなさい」
「で、でもこないだの力はそう簡単に解放は出来ませんよ」
「あの力はいいから普段の力をよ。私を魔物だと思って遠慮なく来なさい!!」
「うっ、分かりました。行きますよ」
カエデは先程よりもスピードを上げる。
沙羅も負けじとスピードを上げてカエデの攻撃を弾いていく。
「くそ、風神烈風」
カエデは巨大な竜巻を起こす。
「バーニングスピンクラッシュ」
巨大な竜巻はたちまち炎に変わる。
「あ、あつーい」
カエデが竜巻から飛び出してくる。
「隙だらけ」
沙羅はカエデを殴り飛ばす。
「がはっ」
「よし、一旦休憩しましょう」
沙羅は力を緩めて地上に降りる。
「は、はい」
「さっきエリスさん達がいるところから魔人の力を感じたわ」
「えっ、では助けに行かないと」
「もう戦いは終わったみたいだけど」
「そ、そうでしたか。気づきませんでした」
「それだけ集中してたのね」
「はぁ、でもまともに戦えていません」
「そうでもないわ、徐々に力は上がってる」
「そうですか…」
「普段の力を制御できるようになればあの力も上手く使えるわよ」
「そうだといいんですけど」
「はい、おにぎり」
「わぁ、ありがとうございます」
「よいしょ」
沙羅は立ち上がる。
「沙羅さんは食べないんでふか」
「いいわ、お腹空いてないし」
沙羅はストレッチを始める。
「うーむ」
「何?」
「沙羅さんを見てるととてもあのような力を使うようには見えません」
「見た目が弱そうってこと?」
「なんといっていいのか。華奢というか、女の子の体つきと言うか」
「いや、女だからね」
沙羅は思わずツッコミを入れる。
「その、筋トレをしている風には見えませんし。私は村で沢山筋トレしてたので女の子っぽさはありませんし」
「言うほどムキムキじゃないじゃない」
「まぁ、見た目はですけど」
カエデは力こぶを見せる。
「おお、すごいわね。私なんて」
沙羅は腕まくりをして力こぶを作るも白くて細い腕しか出てこない。
「ああ、女の子過ぎです。沙羅さん」
カエデは思わず沙羅に抱きつく。
「ちょ、ちょっと私はそっちの趣味はないわよ」
「はっ、すいません。つい」
「まぁ、運動は平均的だったかな。別に筋力もあるわけじゃなかったし」
「それなのにあんなに強いんですね」
「それだけサイコパワーは狂ってるのよ。こんな力のない人間でも強くなれるんだから」
「でもそれをコントロールするためには体力作りも必要なのでは」
「いやよ、めんどくさい」
「めんどくさいですか」
「ええ」
「うーむ」
「何よ。でもストレッチはしてるんだからいいでしょ」
「そういうものですかねぇ。マッスルさんに鍛えてもらってムキムキになったらもっともっと強くなるのでは?」
「いやよ、私はこのままでいいの」
「勿体ないですねぇ」
「確かにこの力が上手く使えない時はそれま考えたわよ。妹を守るためにね。でも腕立ても腹筋もろくに出来ない、持久力も人並み…」
沙羅がずーんと暗くなる。
「ああ、すいません。何だか嫌な記憶を」
「だから私はサイコパワーをコントロールする道を選んだのよ」
「なるほど」
「でも確かに見た目は弱そうなのかなぁ」
「いや、あの気にしないでください」
「ほっほっほっほっ」
「ん?」
「お嬢ちゃん達こんなところで何をしておるのかね」
老人の姿をした魔人が近づいてくる。
「あんた誰?」
「私は魔人クロースです。こんなところに迷い込むとは運がなかったですねぇ」
「話しに夢中で気がつかなかったわ」
「そうですね」
「まずはそっちの華奢なお嬢さんから殺してあげましょう」
「やっぱり弱そうに見えるのね」
沙羅は暗い顔をする。
「ああっ」
「ではいただきます!!」
魔人は沙羅に接近する。
しかしそこには沙羅の姿はない。
「カエデ、あんたが戦いなさい。修行の一貫だと思って」
「えっ、は、はい」
カエデは刀を構える。
「おやおや、まぁいいでしょう。殺される順番が変わっただけですからね」
魔人はにやりと笑う。
(私弱そうなのかなぁ)




