説教されましたの件
第599話
「お主、ここには今来れないと」
「緊急事態だったので無理を言って来ました」
「や、やぁ四葉」
沙羅が後退りする。
「貴女が力を解放することで魔王がいきなり攻めてきたらどうするの。物事には順番があるのよ」
「何を言っているの?」
「100%はやむなく認めたけど120%は認めてないわよ。貴女の体では120%はまだ無理なんだから」
「でも、何とかなったわよ」
「この子のお陰でしょう」
四葉は腕まくりをして徹の背中に手を当てる。
「何をしてるの?」
「回復と力を分けているのよ」
「はっ、僕は」
「気がつきましたね。すいませんうちのじゃじゃ馬が」
「よ、四葉さん」
「さてと、沙羅」
「は、はい!!」
「良い機会だからお説教よ」
「は、はい」
「それとあそこの村の村長は無事よ」
「えっ!?」
「手が離せなかったのは村長を助けてたからよ」
「でも村長は死んでた」
「貴女の妹の力を少し借りたわ」
「え、それじゃああいつに負担が」
「大丈夫、負担がかからないように工夫はしてるから」
「そ、それなら良かった」
「良くないわよ」
四葉はにっこりと笑う。
「ひ、ひぃ!!」
3時間後
「皆様、申し訳ありませんでした。お時間を頂いてしまって」
「は、はぁ。後ろで泣いている娘は大丈夫ですか…」
「はい、もう大丈夫です」
満面の笑みで四葉は答える。
「うっ、ぐす」
(大丈夫そうには見えんが)
「沙羅」
「はい、ぐすっ」
四葉は沙羅の頭に手を当てる。
「ふんっ」
「うわっ」
「よし、これでよしっと」
「何をしたの」
「こないだは貴女の潜在能力の解放をしなかったんだけど今回はしてあげたわ。ただし!!力の使い方には気を付けなさい」
「は、はい!!」
「それでは皆様、ごきげんよう」
四葉は目の前から消えていく。
「はぁ~」
沙羅は地面に座り込む。
「大丈夫?沙羅」
僕は手を差しのべる。
「腰が抜けた」
「しかし、相変わらずとんでもない人じゃのぅ」
「そ、そうね。ありがとう徹」
沙羅は僕の手を掴んで立ち上がる。
沙羅の手は小さくか弱い女の子の手だ。
とてもあんな力で戦っているとは思えない。
「ちょっといつまで握ってるの」
「わわ、ごめん」
「別にいいけど。彼女に悪いわよ」
「え、あ。未来!?」
「あれ、未来さんがいませんねぇ」
「ええっ!!」
「全く、勝手な行動をするなと言っておるのに」
「まったく、徹のバカ。沙羅にデレデレしちゃって」
未来は1人で森の中を歩く。
「って、勢いで歩いて来ちゃったけど大丈夫かな…」
未来は急に不安になる。
ガサガサ
「ひっ」
「なんだ、人間がいるぞ」
ま、まずい。でも自分のせいだし
「兄貴、この女食べてもいいか?」
「ちょっとまて、実験道具に使うとしよう」
「な、なによ。私だって。スーパーファイヤー」
「あちっ」
「ほう、魔法が使えるのか」
「そうよ。なめないでよね。サンダー」
「ちっ、意外とやるじゃねぇか」
「よし、何としても捕まえるぞ」
「くそ、未来。どこに行ったんだ。沙羅、気配を感じないか?」
「落ち着きなさいよ。今気配を察知してるところだから」
「ロミアちゃん、カエデさん。魔物の気配は?」
「感じません、あまり遠いとわからないです」
「いつから、未来さんがいなくなったかにもよりますね」
「くそ、どうすれば。僕ちょっと探してくる」
僕は急いで走っていく。
「ぶべっ」
僕は地面に激突する。
「お前まで迷子になっては困る」
エリスさんが僕の足を掴んでいる。
「離してください。エリスさん!!」
「徹、場所がわかったわよ」
「本当!!じゃあすぐにでも。べぶっ」
エリスさんがまた足を掴む。
「沙羅の体力も考えんか」
「私は大丈夫、行くよ。徹」
「ああ」
僕は沙羅の肩に掴まる。
「やれやれ、気を付けろよ」
「はい」
僕達はみんなの前から姿を消す。




