亀裂?の件
第583話
全く、四葉の奴余計なことをして…
「何だか、沙羅の機嫌が悪くない?未来」
「そうね。こないだからずっとあんな感じね」
「いいじゃねぇか。マッスルを危険にさらした奴なんてほっとけよ」
「そんな、言い方しないの!!」
「でも事実だろ」
「何、なんか文句でもあるの」
沙羅がヒデリに詰め寄る。
「ああ、あるぜ。こないだのマッスルの件だよ」
「別にいいじゃない。結果的に倒したんだから」
「よくねぇよ。危険ってわかっててやらせたなんて仲間として恥ずかしくねぇのかよ」
「別に私は仲間じゃないし」
「あんだと、てめぇ」
「何?やる気?」
「落ち着いてよ。2人とも」
「そうよ、私達で争ってても仕方ないでしょ」
「私はこいつがマッスルに謝るまでは納得いかねぇ」
「おいおい、ヒデリちゃん。別に俺は謝罪なんか求めてねぇぞ」
「あたいの気がすまねぇんだよ」
バキッ!!
沙羅のパンチがヒデリの顔面にヒットする。
「痛てぇ、何しやがる」
「ごちゃごちゃうるさい!!」
「ヒデリちゃんに手を出すんじゃねぇ」
福原が沙羅に殴りかかる。
沙羅は片手で攻撃を受け止める。
「おい、何やってるんだ!!」
「もういい!!私は1人になる」
沙羅はテレポートで消えてしまう。
「ちょっと、ちょっと」
「どうするのよ」
「いいじゃねぇか。ほっとけ」
福原がヒデリに近づきながら言う。
「あーあ。戦力ダウンだねぇ」
「私、沙羅さんを探してきます」
カエデがものすごいスピードで消えていく。
「ああ、方向音痴が行ってしまった」
「戦力ダウンだね」
「はぁ、やれやれ。とりあえず我々はこの力を維持出来るように鍛練でもするか」
「そうですね。2人を信じて待ちましょう」
「いいじゃねぇか、さっさと次の目的地に行こうぜ」
「黙れ!!ヒデリ」
「おいおい、エリスさん。ヒデリちゃんを怒るのは違うだろう」
「お前も黙っていろ!!」
エリスの気迫に福原は声が出なくなる。
「エリスさん…」
「悪いが沙羅は今後の戦いには必要不可欠だ。内輪揉めしている場合ではない」
「でも、今回のはあいつが行けねぇんだよ。じゃああたいが出てけば良いってことか?」
「そんなことは言っておらん。仲良くしろと言っておる」
「ちょっとエリス様のキャラじゃないよ」
「うるさいのぅ、実際沙羅の言う通り四葉のお陰で力がついて自惚れていたところは皆あるじゃろぅ?」
僕達は沈黙する。
「恥ずかしい話、私も少し浮かれてしもうた。だが沙羅だけは冷静だった」
「確かに」
「あやつはまだ若いが我々とはまた違う苦労をしてきたのだろう」
「なんども死線を潜っているようだしね。覚悟が違うっていうかー」
「そうじゃな」
「あ、いたいた。沙羅さーん」
「くノ一。何でこんなところまで」
「よかった、今回は迷わなかったです。ちなみにカエデですよ」
「今回はって、あんた方向音痴とか?」
「そうです!!」
「そんな、胸を張って言わないでよ。それで何しに来たの?」
「迎えに来ました」
「はぁ?私は1人の方が気が楽なんですけど」
「まぁそう言わずに、私は沙羅さんともっと仲良くなりたいですよ」
「仲良くって…別に友達を作りに戦ってるわけではないのよ」
「もちろんです。でもどうせ戦うなら仲がいいことにこしたことはないでしょう」
「わからない。私は常に1人だったから」
「妹さんがいたじゃないですか。1人じゃないですよ」
「カエデ、あんたはその力のせいで周りから白い目で見られたことはないの?」
「白い目…うーん私は鈍感なので分かりません」
「そ、そう」
「それがどうしたんですか?」
「いや、私はこの力のせいで周りから避けられててさ。私を唯一受け入れてくれたのが妹だけ。だから他人は信用出来ないの」
「なるほど、それにしてもお腹空きましたね」
「あんた、私の話聞いてる?」
「はい、でも皆は沙羅さんのことを白い目で見てないですよ」
「何でそんなことがわかるのよ」
「だって、うちのメンバーを思い返してください」
「……」
「個性的ね」
「はい、なので沙羅さんが入っても皆さん変わりません」
「でも、私はまっ、福原に悪いことした。あとヒデリにも」
「じゃあ謝りましょう」
「やだ」
「だめですよ。悪いことをした自覚があるならちゃんと謝らないと」
「うう」
「ほらほら、謝りに行きますよ」
カエデは沙羅の手を掴む。
「あと、皆が力が上がって浮かれすぎてるのも気に入らなかった。あれじゃあいつか死ぬ」
「皆のこと心配なんですね」
「あっ」
「じゃあ、尚更謝りに行きましょう」
心配…か。
まぁこの子は力に浮かれてないのね。
 




