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魔人エリスの件

第566話


「な、なんだ。この重苦しい、気持ち悪い空間は」


「お前の真似だよカンクウ。この空間はお前の力を吸収する。私を倒さないと消滅してしまうぞ。それにしても本物は随分とげてものだな」

エリスの目の前にいるのはぬいぐるみとはかけ離れた見た目をしたカンクウが立っている。


「僕をゲテモノと呼んだな。くらえダークネスバスター」

エリスは人差し指で攻撃を止める。


「こんなものか?12師というのは」


「ば、バカな。なんなんだよ。この反則的な力は」


「さぁ、早く倒さないとお前の力が失くなるぞ」


「く、くそぉ、ダークネスバスター」

カンクウは右手をかざす。

しかし右手がぼとりと落ちる。


「ひ、ひぃ!!」


「タイムオーバーだな」


「僕が負けるわけにはいかないんだー」

カンクウは残っている力を最大限に引き出す。


「ほぉ、まだこんな力が残っていたか」


「どうだ、ビックリしただろう?」


「ああ、お陰でいい食事が出来そうだな」


「えっ」

目の前にエリスが大口を開けて迫ってくる。


「ひ、ひぃっ」

ガブリ

カンクウの頭はあっという間にエリスに飲み込まれていく。



「ふぅ、たいして魔力は残っていなかったようだな…」

エリスはカンクウの亡骸を見下ろす。


「さて、そろそろ陣がとけるころか」

エリスは黒い光に包まれる。



「あ、見てください。空間が開きますよ」


「おお、姐さんが勝ったのか?」


「いや、油断は出来ないよ。もしかしたらカンクウが出てくるかも知れないよ」


「それだとエリスさんがやられたってことじゃない」


「まぁまぁ落ち着いて2人とも」

ダイヤさんが僕達をなだめる。


「ぬぉーー」

空間からエリスさんが飛び出してきた。


「ふぎゃっ」

エリスは地面に叩きつけられる。


「エリス様」


「おお、みんなすまなかったな」


「倒したんですか?」


「ああ、何とかな。やはり12師は手強いのぅ」


「エリス、貴様」

ロミアがエリスに近づいてくる。


「なんじゃ、ロミア」


「なんだあの力は。今までとは比べ物にならないぞ」


「さぁ、なんのことじゃ?」


「お前はどこまで隠し事をしている」


「何も隠しておらんよー」


「ふん、良いだろう。いつか必ずお前の正体を暴いてやる」

ロミアはつかつかと歩いていく。


「やぁやぁ、エリス様」


「なんじゃ、ダイヤ」


「大丈夫かい?」


「ああ、力の反動は多少でるかと思ったがカンクウを吸収したからそこまで消耗はしておらん」


「あれは隠し球でしょ。むやみに使っちゃダメだよ」


「あれは魔王に使っているからな。どうせむこうにはバレているだろ」


「まぁね。でもどうだい?10年ぶりの力は」


「魔王がどこまで強くなっているかはわからんが当時と代わりはない。しかし代わりがないのでは勝てぬかもしれん」


「そうだねぇ。魔王はさらに力を付けてる可能性が高いもんね」



「あの2人何を話しているのかな?」


「さあな。2人にしかわからない話しもあるんだろ」


「それもそうか」



「エリスさん。やっぱり強かったですか?」


「強いと言うよりは癖のある魔術を使ってくるやつだったのぅ。ロミア他の奴らもそんな感じか?」


「そうだな。今まで戦ってきた魔術師とは違ってそれぞれの個性がある」


「個性かめんどくさいのぅ」


「まぁ油断しなければ勝てるだろう」


「でも魔法が使えないとなると」


「いや、あれはキンコウの個性だ。他の12師は持っていない」


「そうなのか、それなら安心だ」


「油断をするなと言ったばかりだぞ」


「あ、はい。すいません」


「とりあえず、次の目的地の研究所に向かおうぜ」


「そうじゃな。ロミア12師は次々に来ると思うか?」


「いや、それはないな。やつらは別に仲間意識があるわけではない。2人いなくなったところで敵討ちなどしないだろうな」


「ふむ、そうか」


「あのー、ロミアちゃん。あそこに魔法陣が現れていますが」


「……どうやら本気で私達を潰しに来ているようだな」


「このままスルーもありか?」


「無理だろうな」


「では、今度は皆で乗り込むとするか」


「そうだな。次は私が食させてもらうぞ」


「はいはい」


「うわーーー」


「えっ?」

カエデが魔法陣に吸い込まれていく。


「なんじゃと、私達も後を追うぞ」

しかし魔法陣は既に消えている。


「カエデ…」


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