村の男が起きましたの件
第463話
「いててて」
「大丈夫? 徹」
未来が僕に回復魔法をかける。
「うん、そこまでやられてない」
それにしても何だか最近魔物を倒せていないような。
いやそれどころか噛ませ犬的なポジションになってる気が…
「何で!!何で僕はいつのまにヤ○チャみたいになってるんだ!!」
「何いってるのよ」
未来が冷たい目で僕を見る。
「ああ、ごめん。一人言だよ。それよりあの人は起きたの?」
「まだ起きないのよね」
「え、じゃあまだ魔術師がいるのかな?」
「ううん、村長さんはあの魔術師が犯人だって言ってたわ」
「そっか」
「おーーい、パンスパンが起きたぞー」
村長の声が聞こえる。
「あ、起きたみたいだね」
「そうね、徹。一緒に行きましょう」
「ああ」
僕は未来に手を引っ張られ小屋に向かう。
「ん、お主たち2人でイチャコラしてなくていいのか?」
「イチャコラなんてしてません!!」
「冗談じゃ、それより起きたみたいだぞ」
「う、うう俺はいったい……」
「おお!パンスパン目を覚ましたか」
「兄ちゃん!!」
メンスがパンスパンに抱きつく。
「お兄さんだったのかー」
「はい!!」
「良かったねー」
「ふむ、お主の力はそれなりのようじゃな。油断さえしなければ魔術師とも戦えそうじゃ」
「油断!?俺は油断なんて」
「ならば実力の差だな」
「エリスさん、言い過ぎですよ」
「現実を伝えたまでだ。村長」
「は、はい」
「今の言葉が現実ですが、それでもここに残りますか?」
「……」
「大丈夫です。兄ちゃんと僕が頑張ります」
メンスが力強く言う。
「ほう、短時間で随分いい目になったな」
エリスさんはメンスを見て言う。
「わかりました。では我々は無理に保護をしません」
「すいません、エリス様」
「いいえ、村長の気持ちを尊重します」
空気が凍りつく。
「な、なんでじゃ。村長ダジャレ。いつか言ってみたかったに。もういいわい」
「子供……」
未来は頭をおさえる。
「ダイヤそろそろ時間だ」
エリスさんは真面目な顔で切り替える。
目が赤い。泣いたな。
「うん、わかった。メンス修行は終わりだね」
「えっ、もうですか…」
「うん、あとはお兄ちゃんに修行をつけてもらいな」
「は、はい」
「あなたがメンスに修行をつけてくれたんですね。ありがとうございます」
「うん、前よりは力がついたとは思うけどまだまだこれからだね。後はよろしく頼むよ」
「はい、わかりました。メンス、明日からは兄ちゃんが修行つけてやるからな」
「うん、頑張るよ」
ダイヤさんは満足そうに2人を見つめる。
「では村長私達は次の村に向かいます」
「はい、気をつけてください」
こうして僕達は村を出て次の目的地に向かった。
「よいのか、ダイヤ。本当はまだ修行をつけたかったのではないか?」
「行くぞって言ったのはエリス様じゃないかぁ」
「なんならしばらく修行をつけてから合流でもよいぞ」
「それは止めておくよ。そう簡単に強くなるなんてできっこないからね。お兄ちゃんと一緒に強くなっていけばいいよ」
「そうか」
エリスさんは脇道に入っていく。
「どこにいくんですか?」
「次の村に行く前にここいらの魔物を倒していくことにした」
「全く、素直じゃないわね」
「何がじゃ? 魔物を倒すのは我々の使命だ」
「それが素直じゃないってことよ」
「まぁまぁいいじゃないかー。じゃあ魔物退治と行きますか。エイエイオー」
ダイヤさんは元気よく手を上げる。
僕も連れて手を上げる。
「お、徹。ノリがいいじゃないかー。もう一回。エイエイオー」
「えいえいおー」
今度はヤ○チャにならないように頑張らないと!!
「何かまた考えてるわね…」
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