ラングレン王国がみえましたの件
第430話
「おお、見えてきたぞ」
エリスがラングレンの城を指して言う。
「やっとだ、やっと着いたー」
僕は両手を挙げる。
「いや、まだ距離は遠いぞ、見えてきただけだ」
「さよか」
「相変わらず大きいお城だからねー」
「カエデ、ヒデリ途中でお主たちの町を通る。一度顔を出したらどうだ?」
「あたいはいいや。黙って飛び出したから戻りにくいし」
ヒデリは苦い顔をする。
「そしたら、忍者村に寄っていいですか?」
カエデが嬉しそうに言う。
「ハヤテがいるんだよね。またからかってやろー」
ダイヤはニヤニヤと笑う。
「立場は村の長なんだ。あまり村人の前でからかうなよ」
「はーい」
「それで忍者村までどのくらいなの?」
「2時間あれば着くと思います」
「に、2時間!!」
「よし、じゃあ早速いきましょう」
「なんだか嬉しそうですね。カエデさん」
「そうね、ふるさとに帰るからね」
「ふるさとか…」
ロミアはうつむく。
「えっと、ロミア」
「あ、ごめんなさい。何でもないです」
僕たちは忍者村まで歩いていく。
ハヤテさんと会うのも久しぶりだな。
風神が暴れた時だったっけ?
「徹!!何ボサッとしてるの」
「考え事だよ」
「よし、徹。競争しようぜ」
「いや、止めとくよ。体力が持たない」
「なんだよー」
福原はがっかりとする。
「マッスルさん、じゃあ私と競争しましょう」
「カエデちゃんのスピードにはかなわないから止めとくぜ」
「そうですか、残念です」
「まぁそう焦るな、ハヤテは逃げないから」
「それよりもさっきから視線を感じるんだなぁ」
ダイヤが後ろに視線を向ける。
「えっ!!」
「なっ!!」
「あっ!!」
「ちょっとみんなリアクションが分かりづらいわよ」
後ろには僕らの世界で言う石川五ェ門的な格好をした男が立っていた。
「お主はからくり村の御門ではないか」
「久しぶりじゃのう、エリス殿にダイヤ殿」
「そんなにこそこそしないでさっさと声をかければ良いのに」
「いや、それはそうなんですが」
「なんで、あんたがここにいるんだよ。せっかく村には帰らないつもりだったのに」
ヒデリが福原に隠れながら言う。
「久しぶりだなヒデリ。この家出娘が」
「うるせぇな。あんなからくり村じゃあたいの発明は物足りないんだよ」
「なんだ、お主。ヒデリを迎えに来たのか?」
「いえ、ただエリス殿一行がラングレンに戻るとのことでどんな感じか見に来たのだ」
「お主も過保護だな。だから皆からくり村から出ないんじゃないのか」
「いいではないか、からくり村から脱走したのはそこにいるヒデリだけだ」
「さっきも言っただろ。あたいは戻らないぞ」
「別に戻ってこいとは言ってないぞ。それよりもワシが発明したメカをお前に渡そうと思って」
「へぇ、どんなメカだよ」
「みよ、これがワシの発明した」
御門は右手に付いているボタンを押す。するとロボットが現れる。
「賀祖出無1号だ」
「おお!!何だか強そうじゃな」
「じゃあ、あたいと勝負だ。勝ったらそのままそいつをパーツにするぜ」
「いいだろう、ワシをなめるなよ」
5分後
「いやぁ、いいパーツ使ってるなぁ」
ヒデリはパーツを回収する。
「はぁ、やはりかなわぬか」
「情けないのぅ。御門」
「仕方ないだろう。こいつの発明力は我々の村では収まらないレベルだからな」
「負けたのに自信満々に言うなよ」
「はぁ、こんなんでからくり村は大丈夫なのかよ」
「ああ、とりあえずはな。この辺の魔物はエリス殿達が倒してからあまり現れないからな」
「じゃあ一応用心棒ロボを渡しとくからよろしくな。親方」
「おお、すまんな。ヒデリ」
「御門、少しはプライドを持たんか」
「それにしてもエリス殿はなぜそんなちびっこに」
「今さらかよ。皇女の魔法のせいだ。これから元に戻してもらいに行く」
「そうだったのか。まぁとりあえず用心棒ロボも手に入れたし。元気でな皆のもの」
「ちっ、やっぱりあたいのメカが目的か」
「はっはっは、じゃあな。ヒデリー」
「面白い人ですね。ヒデリちゃん」
「あんな、適当な親分だからあたいは村を出たんだけどな。さっさと忍者村に行こうぜ」
ヒデリは先頭に立って進み始めた。
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