キレてませんよの件
第411話
「さて、キレて戻ってくるか…」
空から徹が降りてくる。
「ほう、普通だな」
「はい、何とか理性は保ててます」
「そうか、よかったよ」
「エリスさん怪我は大丈夫ですか?」
「ああ、今未来に回復してもらっているところだ」
「けど、村人は…」
「ああ、それなんだが」
「徹、あの村人達はもうだいぶ前に亡くなってたよ」
「えっ?」
「あの村人達は魔術師によって無理やり生かされてたまぁ、ゾンビってやつかな」
「それって私が倒したから…」
「まぁ、今現れた魔人に殺されなくてもいずれ消滅していたね。カエデ、むしろ君は村人を救ったんだよ」
「そ、そうですか。何だか複雑です」
「無理やり生かされるよりはよかったと思うぞ」
「……」
「カエデさん…」
ロミアがカエデの手を握る。
「しかし、奇襲に気づかなかったとは私も油断したな」
「そうだねぇ。まぁギリギリ魔法障壁出せただけでもよかったんじゃない」
「おい、みんな魔物が来たぞ」
ゾウ型の魔物が大量に押し寄せてくる。
「僕に任せてくれ」
「徹大丈夫か」
「ああ、力を放出したいっていう理由もある」
「いくぞ、メルメルサンダーボルトブレイク」
僕の手から巨大な雷が象型に放出される。
あっという間に象型は消滅していく。
「うぉぉぉぉぉぉ」
僕の力がどんどん上がっていく。
「おい、大丈夫か」
「ロミア!!」
「はい、魔力吸引法」
ロミアは徹にキスをする。
「なな、な、のむはまに、まおさななりにのそあなのさたあばはさわはらまたさよまらし」
「おちつけ、未来」
「む、むぐっ」
僕の力がどんどん吸いとられていく。
「ぷはっ。ロミアちゃん何をするんだ!!」
「力を吸収しました。あのままだと暴走してしまうので」
「あの力を吸って魔嬢は大丈夫なのか?」
「はい、ブラックホールに逃がしているので。直接私には影響ないです」
「それならいいんだけどよ」
(なんて、少し力を頂きましたけど)
「落ち着きましたか?」
「別の意味で落ち着かないよ」
「?」
「とむふらたょほおはわとは、」
「未来うるさいぞ」
「と、とりあえず。村人達を弔わないとですね」
「ああ、そうだな」
「でも、なんで魔術師を倒したあと少し意識があったんですか?」
「ああ、無理やり生き返らされて人間としての記憶が一時的に戻ったのだろう」
「そうですか…」
「まぁ、仕方のないことだ。気落ちするな。カエデ」
「はい」
僕と福原は慣れた手つきで墓を作る。
「できました。エリスさん」
「ああ」
僕たちは墓前に立って手を合わせる。
しかし、死んだ人間を利用するなんてやっぱり魔族は恐ろしい…
「さて、これからどこに行くかのぅ」
「もうこの辺には村や町はなさそうですね」
「うむ、しかし目的地も特にないのぅ」
「じゃあさ、ラングレン王国に戻って別の場所を進んだらどうかな」
「ふむ、確かに我々は東門から出たからな」
「よし、一度ラングレン王国に戻るぞ」
「け、結構距離ありますよね」
「ああ、そうじゃな。でも道中で魔物に会ったらレベルアップのチャンスだぞ」
「は、はい」
「もう、また体力の話?」
「まったく、俺がしごいてやるぜ」
「はぁ、気が重いなぁ」
「あ、あのラングレン王国には私は入れないのでその時は外で待ってますね」
「むっ、そうか。すまんなロミア」
「はい」
「なんで入れないんですか?」
「私は魔族ですからそう易々と入れませんよ。それにラングレン王国は王様の結界があると聞いていますし」
「そうだな、下手に入ろうとしたら怪我ではすまないだろうな」
「そうでしたか」
「よし、それではラングレン王国に向けて出発じゃ」
こうして僕らは一度ラングレン王国に戻ることになった。
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