サイボーグわんちゃん Part7
ぼくとアイの秘密の特訓は、毎日続いて行った。最初は嫌になっちゃうか、飽きちゃうかと思ったけれど、アイといればいつも楽しかった。
流石に学校にアイを連れていくことはできなかったけど、ちょっとずつなわとびはうまくなっていって、みんなとやる大きななわとびでも引っかかることが少なくなっていったんだ。でもまだまだ他の子たちと比べたらへたくそだったから、みんなでやるなわとびは苦手だ。
今日はいつもの河川敷でドッジボールの球をとる練習をしていた。アイと2人でやる秘密の特訓。橋の近くの平たい壁にボールを当てて。戻ってくる球を捕る練習。とーんと壁に軽く投げて、戻ってきたボールを両手ではさんで取ろうとする。ボールは僕の両手の中からするっと転げ落ちる。何回かうまく取れるときはあったけれども、僕はボロボロとボールを下に落としてしまう。何度繰り返しても、そうなってしまう。
どうすればいいんだろう、と壁に向かってまた投げたボールに、アイが反応した。宙に浮くボールにアイはものすごい勢いで飛びつく。アイはその勢いのままボールにぶつかって、ボールは僕の目に留まらないスピードで僕の方に向かってきた。ぼくは一歩も動くことができないままボールを胸にぶつけた。胸の中の空気がぎゅっと押し出されたような気がした。目の前がちかちかする。ぐっと胸を押さえようとしたら、腕の間にボールが挟まった。
「……あれ?」
アイの飛ばしてきたボールにぼくは反応することすらできなかったのに、なぜかぼくはこのボールをキャッチできている。どうしてだろう? 僕はしっかりと胸の前にボールを抱えていた。もう一度、壁に向けてボールを投げる。アイはそれにも反応してボールをこちらに投げ返してくる。ものすごい剛速球だ。
ぼくはまた反応できずに、胸にあたった後に腕でぎゅっとボールを抱え込んだ。
……やっぱり、キャッチできている。アイはぼくの呆然とした立ち姿を尻尾を振りながら見つめている。
ちょっとだけ、コツのようなものをつかめたような気がする。
僕は繰り返しアイの打ち返すボールを取り続けた。アイの投げるボールはとても正確で、いつも胸の同じところにボールがおさまる。僕はそれを捕りに行くのではなく胸の前でしっかりと抑える。
日が沈む前までこの練習は続いた。もう汗だくだ。
家に帰ってお父さんとお風呂に入ると、胸の一か所がまるく赤くなっていた。
「なんだその跡は。日の丸みたいに赤くなってるなあ」と笑われて、ぼくの顔も赤くなった。