サイボーグわんちゃん Part6
僕はクラスのみんなには内緒で、家で縄跳びとドッジボールの練習をすることにした。
学校から帰ってきたら、手を洗って、うがいして、授業のために飼ってもらった縄跳びをつかんで、アイと一緒に河原まで走っていく。
お父さんはお仕事が忙しいくて家にいるときはあんまり元気がなさそうだし、お母さんは家のことで忙しそうだから、練習するときはいつもアイと一緒にしか行けなかった。
河原で練習してるとドキドキする。同じクラスの誰かに見つかったら、こんなところでこそこそ練習してるんだって馬鹿にされちゃう。でも僕の家の周りにも他の子が住んでいる家がいっぱいあって、そこで練習してたらもっと見つかりやすくなっちゃう。
僕が思いつく限りで人が来なさそうなところと言ったら、ここみたいな河川敷の橋の下あたりしか思いつかなかった。
僕はやっぱり縄跳びがへたくそだった。縄をくるくると回して、目の前に来た時に跳ぶ。たったそれだけのことなのに、僕にはとても難しかった。最初はうまく飛べるんだけど、だんだんと手の動きと足の動きがわからなくなって、ごちゃごちゃになって、そうなったときに足になわが引っかかる。何回やってもそうだった。ずっとやっていても十回も跳べなくて、どんどん嫌になってくる。目の周りが熱くなって、涙が出そうになる。手に持ってるなわを思いっきり地面に投げつけたくなる。
「ワン!」
なわを放り投げようとしたとき、アイの鳴き声があたりにひびいた。僕ははっとして、アイの方を見る。アイもゆっくりと尻尾を振って僕の方を見つめている。ワン、とアイはもう一度鳴いた。
「……うん、頑張ってみる」
僕はまたなわを両手に持って、目のはしを手でふいて、なわとびを続ける。
1、2、3、4回……足に引っかかった。1、2、3、4、5回……また足に引っかかった。
アイはそんな僕の様子をじっと見つめていた。僕もそんなアイをじっと見ながら、なわとびを続ける。アイはゆっくりと尻尾を振りながら、僕から少し離れていく。アイの尻尾を見つめていると、なんだかアイの短い尻尾がなわに見えてくる。なぜだかなわとびがうまくできそうな気がする。
僕は落ち着いてなわを回し、アイの尻尾を見ながら、自分の手の動きに合わせて飛ぶ。
1、2、3、4、5……なわに引っかからない。僕の胸の音がドキンドキンと速くなる。
……6、7、8、9、10、11! そこまで飛んだところで足にぺしっと痛みがあった。すぐに足になわが引っかかったんだとわかった。でもいっぱい飛べた。両手のなわをぎゅっと握りしめていると、アイがこっちによって来た。とてもうれしそうに尻尾を目いっぱいに振っている。僕はしゃがんでアイの頭をいっぱい撫でた。