サイボーグわんちゃん Part17
「……やっぱりアイがロボットだなんて、そんな話信じられません」
お父さんは、つくえの向こうの二人をにらみつけて言った。
「例えロボットだったとしても、アイが家族であるのに何ら変わりはありません。まさか返してもらうなんて言いませんよね? 私たちから大切な家族を奪おうと?」
ぼくは初めてお父さんがかっこよく見えた。ふにゃっとしたところがあるんだけど、この時はとてもたのもしく見えた。
「そうですか。まずは信じていただくところから始めないといけませんね……IR-02、そこに座って」
男の人がそう言うと、アイはすなおにとことことぼくたちからよく見えるところに座って、ぼくたちを見た。
「IR-02、アームアタッチ」
その声を聞いたアイは、ぷるぷるとふるえて落ち着かなくなった。なんども男の人の顔を見直して、しばらくたったあとふてくされたように四つ足で立った。
じゃきっじゃきっというへんな音のあと、ぼくはぜんぜん、ちょっとも目をはなしていないのに、アイの背中から細長いぼうのようなものがいつの間にか付いていた。細長いぼうはとちゅうで曲がって、先っぽにはおもちゃのマジックハンドのような手が付いていた。
お父さんとお母さんが息をすう音が聞こえた。
「……まさか背中から金属アームを出せる犬もいるとは言いますまいな。そんな犬は存在しません。これで彼が犬ではないことはわかっていただけたかと」
男の人は指を組みながら話を続ける。
「そして我々の任務は彼を研究所に連れ帰ることですので、返してもらうといいますし、あなた方から大切な家族を奪うつもりです。大変に申し訳ありませんが、そうしないと大変に危険なのです」
「危険? アイが危険だったことなんて一度も見たことはありませんが」
お母さんの顔にあせがながれているのが見えた。
「IR-02はとても賢いですから。何なら私たちよりも。周囲を傷つけないように気を遣うことはわけもありません。ですが考えてみてください。500キロの重さを持つ物体がそこそこの速度で走っているだけで、それは危険だと言えませんか?」
ぼくはアイにぶつかった車がこわれてしまったことを思い出した。あの時アイはすごい犬だと思ったけど、まさか犬じゃなかったなんて……
お父さんとお母さんは何も言わなかった。