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サイボーグわんちゃん Part16

アイが来てから、毎日楽しかった。アイといっしょに走りまわっていると、いやなことなんてみんな忘れられた。まだアイをだっこすることはできないけど、ころがってるアイをうごかすことはできるようになってきた。お父さんとお母さんもアイが大好きだった。

きっとこのままずっと家族みんなで楽しく遊べる……そう思っていたのに。別れはとつぜんやってきたんだ。


日曜日、ぼくの学校もお父さんのしごともお休みだ。お父さんとぼくはいっしょにテレビで朝のアニメを見ていた。ぼくが見てるからお父さんも見始めたけど、今ではお父さんの方がぼくよりアニメを楽しみにしてるみたいだった。アイもゆかにねそべっていっしょにテレビを見つめている。アイにとってもアニメは面白いんだろうか。しばらく見ていると、アイの耳がぴんと上に立って、そわそわしはじめた。何かを気にしているみたいだった。

インターフォンがなった。お母さんがじゅわきをとって、何かを話していた。

「シュンスケー、一緒に来てー」

お母さんに呼ばれてぼくははーいといって立ち上がった。

「えーと、アイも一緒に。玄関まで来て」

どういうことだろう。ぼくとアイふたりのお客さんなんだろうか?

お母さんがとびらを開けると、黒い服を着た人がふたりいた。マスクと黒いメガネをつけてたから顔はわからなかったけど、たぶん男の人と女の人だ。

2人はぼくの後ろからのそのそとついてくるアイを見て、大きく息をはいた。

「突然申し訳ありません。私たちはロシアのモスクワから来た、機械工学の博士です。こちら、どうぞ」

男の人がお母さんになにか紙の切れはしのようなものをわたした。

「本日はお宅で飼ってらっしゃるペット……その……アイ、と呼んでらっしゃるんですかね。とてもいい名前です。彼についてお話に参りました」

お母さんはポカンとした様子で話を聞いていた。アイはその場で腹ばいになって、すねたようになってる。

「あなた方はアイをとても大切に思っている。そう、あなたたちにとってアイは家族。当然です。ペットは家族。私にも覚えがあります。私も昔、猫と一緒に暮らしていることがありました。だからあなた方がアイを大切にしている気持ちがよーくわかります」

はあ、とお母さんは気のぬけた声を出した。

「ですが、それが生物ではないとすれば、どうでしょう。生きた動物と同じように愛することができたでしょうか? 私は「はい」と答えるでしょう。なぜなら、愛情とは生きたものにだけ向けるものではないからです。私は自分の愛用のパソコンを使わないと落ち着かないし、愛玩用ロボットはうちの研究所でもみんなから大いにかわいがられている……そして、この家でも」

「ど、どういうことなんですか?」

ぼくは言ってることがとちゅうから頭に入ってこなくなったので、ねているアイの背中をなでることにした。

「少々回りくどかったですね。失礼、性分なもので……。本題に入りましょう。そこで少年が撫でているアイ。彼は犬ではありません」

「犬ではない? 犬によく似た生き物ってことですか」

「いえそういうことではなく。彼はロボットなのです。我々は彼のことを『IR-02』と呼んでいます」

アイがロボット? ぼくはなでている手のひらをアイの背中にあてた。あたたかい。いきづかいにあわせて動いているのがわかる。とてもぼくがそうぞうしてるロボットのすがたじゃない。お母さんも同じことを考えていたみたいだった。

「何かの冗談ですか? この子がロボットだなんて……ありえません」

「そうでしょうそうでしょう。彼は我々が技術の粋を集めて作った、本物の犬と見分けのつかないロボットなのです。何か普通の犬とは違う、違和感のようなものはありませんでしたか?」

「……小柄な割にとても重いなと思ってました。あと、ペットフードをあんまり食べなくて」

「そのとおり。彼の重量は500キロあります。食事は必要なく、太陽光をエネルギーとして動いています」

「ご、ごひゃ……」

お母さんはおどろいてアイを見た。ちらちらと床と見比べているみたいだった。お父さんがふしぎそうな顔をしてこっちの様子を見にきた。

「すみません、長話されるようでしたら、上がっていかれてはどうですか。何かございましたか?」

ぼくはお父さんの顔を見ていった。

「アイはロボットなんだって」

「へーそうなんですか……ロボット……ロボット!?」

「理解が速いようで助かります」

男の人はお父さんにも紙の切れはしをわたしながら言った。

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