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サイボーグわんちゃん Part15

ぼくはずっと、体を動かすのがきらいだった。ぼくが体を動かそうとしても、ぜんぜん思った通りに動かないんだ。休み時間にやるサッカーも、ドッジボールも、うまくできなくていつもみんなに笑われていた。

でも、今はちがう。アイが来てから、体を動かすのが好きになった。サッカーもドッジボールもうまくできるようになって、ぼくを笑う子はいなくなったんだ。

最近はすっごく体が軽くって、クラスのみんなをおんぶしたりだっこしたりして走りまわる遊びをよくするようになった。


今日は年に一回のなわとび大会だ。学校の全部のクラスで校庭に出て、クラス全員でのおおなわとびの回数をきそい合うんだ。ぼくはこの日を楽しみにしていたんだ。ぼくのクラスは毎日練習して、みんなとてもうまくなわとびができるんだ。

なわとび大会は給食のあとにあるんだけれど、その時間になってもホンダ先生のすがたが見えなかった。ほかのクラスのみんなは先生と一緒にじゅんびをすすめてるけれど、ぼくたちのクラスは校庭でぽつんとしているだけだった。ぼくは不安になってきた。みんなも不安になってるみたいだった。

しばらくぼくたちがおろおろしていると、教頭先生が小走りでこっちにやってきた。

「はいー、こんにちは、2年1組の皆さん。教頭の佐々木です」

ササキ先生は顔をしわくちゃにして笑って、ぼくたちに話しかけてきた。

「えーっとね、君たちの担当の本田先生なんだけどね。ごめんね、本田先生はお子さんが急に熱出しちゃってね。縄跳び大会には参加できません。だからね、縄を回す人がいないから、みんなは今日は見学してもらうことになるけど、いいかな?」

え、とだれかが小さく言った。そこからみんな、なにもいわなかった。

「あっちに移動して、みんなで座って他のクラスのみんなが頑張ってるところを見ましょうね」

ササキ先生がそう言っても、みんな動けなかった。ぼくはいやだった。みんなでがんばってきたのに、本番ができないなんて。みんなもきっとそう思ってるはずだ。だから、ぼくはちょっとこわかったけど大きな声で言った。

「ぼくがやる!」

クラスのみんなとササキ先生がこっちをいっせいに見た。ぼくは恥ずかしくなったけど、頭の中で考えてることを続けて言った。

「ぼくがホンダ先生のかわりになわを回す! だからぼくたちもなわとび大会やる!」

ササキ先生はびっくりしたみたいだった。今までがんばってきたみんなの努力がなくなってしまうなんて、ぼくはとてもいやだった。ここでぼくがちょっとはずかしい思いをするだけでなわとび大会にでられるならそれでいいんだ。ササキ先生は迷っているみたいだった。

「でもねえ白瀬くん、大縄跳び用の縄を回すのはすごく大変なんだよ。とても重いし、本田先生でも回すのは大変なんだよ」

「だいじょうぶ! ぼくホンダ先生よりも力強いもん! この前うでずもうで勝った!」

ほんとのことだった。休み時間にクラスのみんなでうでずもう大会をやったことがあって、クラスのみんなに勝った自分が代表でホンダ先生とたたかった。時間はかかったけど、ホンダ先生にも勝ってぼくは本当にクラスの中で一番の力持ちになった。

ササキ先生はしばらく考えて、

「はあい、わかりました。じゃあ白瀬君こっちに一緒に来て」

と言った。みんながぼくを見てるのがわかる。ぼくはみんなに向かってうなずいて、ササキ先生について行った。


みんなが見えなくなったところで、ササキ先生といっしょにおおきななわを持った。一人でとぶなわとびよりもとっても重くって、まわせるかどうか不安になってきた。

「今から練習しましょうねえ。でも難しいようだったら、申し訳ないんだけど今回は見学ってことで。私が回してあげればいいんだけど、他のクラスの手伝いに行かないとねえ」

クラスのみんなと休み時間におおなわとびをしたことが、頭の中に見えた。ぼくが何回も引っかかってみんなを困らせたこと、おちこんで学校から帰ったこと、そしてアイと出会って、いっしょになわとびの練習をしたこと……。アイのすがたを思い出したら、力と元気がわいてくるみたいだった。きっとだいじょうぶ。ぼくなら重いおおなわでもまわすことができる。

「せーの!」

ササキ先生のかけ声に合わせて、ぼくはりょううでをおおきくまわした。ホンダ先生がいつもそうやっていたみたいに。ぼくのうでの動きに合わせて、おおなわはまわった。ぜんぜん、なにもむずかしいことはなかった。ササキ先生はとてもおどろいているみたいだった。なにも言わなかったけれど、しばらくして大きな笑い声をあげた。

「君みたいな小さな子でもできるもんなんですねえ! まったく、最近の子供たちの発育は大したもんだ!」

ササキ先生が何を言っているかはわからなかったけど、きっとぼくのことをほめてくれたんだ。ぼくはうれしくなって、もっともっと大きくうでとなわをふりまわした。がくんがくんとササキ先生のうでと体がゆれた。

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