サイボーグわんちゃん Part14
オオツカ先生とのお話はすぐに終わった。
ぼくはリュウヘイくんがお父さんとお母さんのけんかで泣いてることをみんなの前で言ったら、リュウヘイくんがぼくをたたいて泣き始めたって正直に話した。
そしたら、オオツカ先生はちょっと笑ったような顔になって、
「そのお話はもうしないようにね。ちょっとわかりにくいかもしれないけど、他の人のお家の話はあんまりしない方がいいんだよ」
と言った。どうして他の家のお話はしちゃいけないかわからなかったけど、オオツカ先生の言うとおりにしようと思った。
「約束できるかな?」と言うオオツカ先生の言葉にうなずいて、ぼくはショクイン室から出た。
次の日、リュウヘイくんはお休みだった。ホンダ先生はタイチョウフリョウだって言ってたけど、ぼくはそうじゃないような気がした。
またその次の日、リュウヘイくんは学校にやってきた。朝、教室に入るときはみんな元気にあいさつをする。それがこの教室のルールだ。それをしないと先生に教室に入るやり直しをさせられる。あいさつの声が大きいと、教室いっぱいに元気が広がるみたいだった。
みんないつも通りに大きな声を出して入ってきたけど、リュウヘイくんは違っていた。うつむきながら、おばけみたいに静かに教室に入ってきた。それを見て、うるさかったみんなが静かになった。ぼくはホンダ先生の方を見た。ホンダ先生はにこっと笑ってリュウヘイくんに近づいて行った。そして教室のみんなに通るはっきりとした大きな声で言った。
「昨日おやすみしたリュウヘイくんは、体の方はもう大丈夫なの。でも、ちょっと心の方が疲れちゃってるから、みんなで励ましてあげてね」
先生の言葉のあと、誰かが「だいじょうぶ?」と言った。「がんばれ」っていっている人もいた。みんな何を言えばいいかわからなさそうにしていたけれど、思いついた人からリュウヘイくんに声をかけていった。ぼくも何を言えばいいか迷って、考えて、思いついた言葉が「ごめんね」だった。
ぼくの言葉が聞こえたのか、リュウヘイくんがぼくの方を向いた。ぼくのほうに近づいてくる。ぼくはまたたたいてくるのかと思って身構えた。
「……ありがとう」
リュウヘイくんの言葉にぼくはびっくりした。ぼくはリュウヘイくんを泣かせちゃって、たたかれて、てっきりリュウヘイくんはぼくのことがきらいなのかと思っていたのに。
「お父さんとお母さん、また仲良くするかも……」
リュウヘイくんはそう言って、ぼくのむねをたたいた。いや、たたいたというよりも、手の甲で軽くおされて、ぜんぜん悪い感じはしなかった。リュウヘイくんはみんなに礼をして、自分の席に座った。