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属国日本  作者: 豊崎 信彦
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イワノフ大統領の野望

 李紅運国家主席との電話を切ったイワノフ大統領は、自分がピョートル大帝になれると確信した。

いや、それ以上に…

ロシア帝国、ソビエト連邦をも凌ぐ大帝国を自分が築けると…


 在韓アメリカ軍撤退が進んでいた夏の終わり頃、イワノフ大統領は全栄進委員長に南北統一を持ち掛けた。


「アメリカはもはや恐れる存在ではない。

ジェームス大統領はアジアの小国どうなろうと何の興味も無い。

今事を起こせば、三日で事が済む…」


以前から李紅運国家主席より“南北統一の後ろ盾”になる確約を貰っていた全栄進委員長は、国内に渦巻く不満を一掃出来る好機と捉えた。

“渡りに船”の提案に全栄進委員長は、すぐさま両者に対して宣言した。


「一ヶ月以内に、南に侵攻作戦を始める…」


全栄進委員長から“侵攻作戦を開始する”との宣言を受け取ったイワノフ大統領は、李紅運国家主席にすぐさま電話をした。

「全栄進委員長を含めた三者による、極秘会談を行いたい…」


イワノフ大統領は電話機切って直ぐに、対外諜報庁の幹部を含めた数人の側近と共に執務室に籠った。

日本国を属国にする為に…


その二日後、会談場所となったウラジオストクに三者の顔が揃った。


 「ようこそウラジオストクに…

今日が“朝鮮半島の統一”と“ロシアと中国の大国二国で世界を統治する”始まりとなる、歴史的な記念の日となります」

会談の冒頭に招待者のイワノフ大統領が英語で、いかにも機嫌がよさそうなハイテンションで話し始めた。


「機嫌が良いようですね… イワノフ大統領…

通訳も入れずに、どのような用件で我々をここに呼んだのですか…

余程、機密性の高い話なのでしょうね…」

李国家主席は、おおよそ予測が付いている会談内容を、とりあえずイワノフ大統領に怪訝な表情で尋ねた。


イワノフ大統領は、薄笑いを浮かべ話し始めた。

「全栄進委員長には南北統一の決心を頂いたことを、心より感謝いたします」


「お二人の圧倒的な後ろ盾を貰えば、世界は黙り込み、朝鮮半島の輝かしい繁栄を目の当たりにするでしょう…」

若き独裁者は、二つの大国の指導者を前に緊張した表情で礼を伝えた。


「全栄進委員長ならば間違いなく、南北統一を成し遂げてくれるでしょ… 信じています。

ロシア政府と中国政府は共に、侵攻作戦の成功に向け協力を惜しみません。

固く約束します」

イワノフ大統領は、二人の指導者を交互に見つめ、再び不気味な薄笑いを浮かべた。


「どうしました、イワノフ大統領… 今度は別の楽しい事でも思い出しましたか…」

李国家主席は、少し不愉快そうな表情を浮かべ尋ねた。

若き独裁者も、李国家主席の顔を伺いながら相槌するかのように頷いた。


「失礼しました、これより今日の本題を話します。

全栄進委員長が南北統一を成し遂げたその後に…


李国家主席には、私が何度か話していた長年の構想…

私が権力の座に着いてからの夢…

いや、それ以前からの夢…」


イワノフ大統領は陶酔したかのように目を閉じて、沈黙した。


その姿を見つめる二人の指導者は、互いの顔を見合わせ、呆れたように薄笑いを浮かべた。


暫くしてイワノフ大統領が目を開け、再び話し始めた。

「構想…

我がロシアと李国家主席の中国… この二つの大国で世界を二分し統治する…

これを実現させる時が、いよいよ到来したのです…

その狼煙として…」


「狼煙…」

李国家主席が呟くように繰り返した。

そして、目を閉じて思案を始めた。


イワノフ大統領はその様子を無言で見つめた。


一分後、目を開けた李国家主席が立ち上がり叫んだ。

「日本を… 遂に…

東の海に出るのに、ハエの様に付きまとう日本国の自衛隊がいなくなる…

素晴らしい…」

そう言って立ち上がり、イワノフ大統領に握手を求め歩き出した。


イワノフ大統領は立ち上がり、李国家主席と握手を交わし、再び話し始めた。

「ロシアと中国、朝鮮民主主義人民共和国共和の三国で同時に、日本国に対し宣戦布告をする。

布告後、速やかに全栄進委員長が中距離ミサイル一発を日本国に撃ち込んでもらう。

そして、核の使用をほのめかし降伏を促す…

これが世界に対する狼煙です」


二人の指導者は、イワノフ大統領に拍手を送った。


イワノフ大統領は用意してあった日本列島地図を卓上に広げ、李国家主席に語り掛けた。

「李国家主席、日本国をどのように分割しましょう…」


李国家主席は笑みを浮かべ、卓上に広がった日本列島地図を覗き込んだ。



 暫しの会談後、李紅運国家主席、全栄進委員長とも満足の表情でお互い握手を交わし、ロシアを離れた。



 この日から、独立国家日本消滅へのカウントダウンが始まった…

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