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第四話 再会と際会

 牢獄に閉じ込められてから一週間、特に何か起きる事もなく過ぎていった。

 毎日同じ時間に食事が出て、毎日同じ時間に健康診断みたいなのを受けさせられた。何か身体的な謎があるんじゃないかという理由らしい。

 ガイルともあれ以来会ってないし、衛兵になにを聞いても答えてくれない。

 まぁ食事は普通に美味しいからいいんだけど…獄中生活って思ったより退屈なんだなぁ。

 ちなみにライガは禁止区域への侵入が意図的ではなかったとして釈放された。だから今の俺には話し相手すらいなかった。




 そんなある日、俺は騎士団の人に連れられてあの闘技場に来ていた。

「あれ、もう跡がなくなってる…」

「君が破壊したこの部屋は団長様が魔術で修復なされた。今度会ったら礼くらい言っておけ」

「すごいな、魔術ってそんな事もできるのか」

 俺は傷一つない床と魔術の可能性に驚きつつ、辺りを見回していた。

「そんなに感心してくれると、私も頑張った甲斐があったな」

「ガイル!?」

 突然目の前に現れたガイルに対して露骨に驚いてしまった。

「まさかそんなに驚くとは思ってなかったよ」

「そりゃ驚くだろ、どこ行ってたんだよ」

「すまない、所要で他星に飛んでいたんだ」

 待て、今他星って言ったのか…?

「バザル、例のものを持ってきてもらえるか?」

「かしこまりました」

 俺をここまで連れてきてくれた騎士団の人はバザルというのか。


 しばらくするとバザルが戻ってきた。その手には魔道書が握られていた。

「ありがとう、もう下がっていいぞ。ソラ、君にこれを」

「これって魔道書だよな?どうしてこんなのを…」

「君の魔術適正は騎士団長である俺をはるかに超えている。そんな才能人を野放しになんてできない、そう考えた我々騎士団は君を仲間に加えたいと考えている。どうだろうか?」

 なるほど、話はわかった。つまるところ敵になる前に自陣に取り込みたいってことか。しかし俺の答えは

「だが断る」

「なぜだ、君ほどの力を持っているならすぐにでも俺の立場を脅かすほどの存在になるはずだ。そうなれば少なくとも生活には困らないんだぞ?」

「そういう問題じゃない。騎士団ってことは王様とか、なんか偉い人に忠誠を誓って命を賭けて戦わなきゃいけないんだろ?俺そんなの無理」

 俺は、少なくとも生まれ育った世界での騎士というイメージはそんな感じだし、俺がそんなことしてるなんて想像もできない。

「何を言っているんだ?騎士団は民間組織であって、何かに仕えているなんてことはないぞ。それに俺たちは命優先、死をもって何かを守るなんて言語道断。死んだら守るべきものも守れないだろ?」

 あ、あれぇ…俺が知ってる騎士と全然違う…いや、元いた世界と全然違うなんて当たり前か。

「じゃあ騎士団って何をする組織なんだ?」

「敵対惑星への侵攻、および侵略が主な活動だ」

「侵攻侵略って…穏やかじゃねぇな。何、星間戦争でもやってんのか?」

「飲み込みが早くて助かるよ。そう、まさに時代は第二次星間戦争の真っ只中なんだ。だからこそ、君には俺たちに協力して欲しいんだ」

 この人も食い下がるなぁ。

「とりあえず一度考えさせてくれ。さすがに二つ返事するわけにもいかないからな」

「そうか、それなら待とう。いい返事を期待しているよ」




 やっと解放された俺は、真っ先にステラの家へと向かった。

「それにしても、色々ありすぎて頭の整理が追いつかない」

 俺はこの一週間で起きた出来事を思い返していた。と言っても監禁されて魔術が使えて、そのせいで騎士団に勧誘されただけなんだけど。あ、結構色々起きてるわ。

 監禁されていた場所からステラの家まではそう遠くなく、この土地に慣れていない俺でもまっすぐに帰ることが出来た。

「ステラ、居るかぁ?」

 玄関の扉を数回叩いても何の反応もなく、俺は鍵の開いていた扉を勝手に開けて中に入った。

「まったく不用心だなぁ。どこかに出かけてるのかな?」

「お兄さん、誰?」

「うわ、びっくりしたぁ…って、誰?」

 家の奥から出てきたのは見知らぬ子供だった。

「人の家に勝手に入ってきといて何言ってるの?バカなの?アホなの?マヌケなの?」

「ご、ごめんなさい」

 あれ、初対面で遠慮のない罵倒…つい最近同じような状況があったような…

「もしかして君、ステラの妹?」

「どこからどう見ても男だろ。弟だよ死ねよ」

「そっくりだな…」

 俺は男の子からの超速マシンガン罵倒に倒れそうになりながらも何とか持ちこたえた。

「俺はソラ、君は?」

「スバル。それで、ソラは何でここに居るの?もしかしてお姉ちゃんのストーカー?きっしょ」

「頭ごなしに罵倒するのを一度やめてもらえるかな、さすがのソラさんもヒットポイント限界だよ…」

 それよりこの子、どこかで見覚えが…いや、気のせいか。

「ステラはどこに行ったんだ?」

「買い物行ったよ。多分そろそろ帰ってくると思うけど」

「スバル、誰か来てるの?」

 噂をすれば何とやら…とはこのことだろう。ステラが帰ってきた。

「ソラ…どうして…?」

「まぁなんというか、色々あって帰ってきました」


 俺は起きた出来事を簡単に説明した。するとステラの表情がみるみるうちに曇っていった。

「魔術が使えたって、どういうこと…あなた魔法使ってたじゃない。それなのに魔術って…」

「やっぱりそういう反応になるんだな。どうもこうも、こんなもんまで貰っちゃったくらいだからな」

「それじゃ、騎士団に入るの?」

 ステラは不安そうな顔をしていた。

「俺はそういうの興味ないし、一応断ったよ」

「そう、それならいいけど。騎士団はやめたほうがいいと思うの。いい噂聞かないし」

 ガイルの言葉を信じるなら、騎士団って結構ホワイトな組織だと思っていたけど、ステラの反応を見るとそうでもないらしい。

「いい噂を聞かないって、例えばどんな…」

 その時、外で大きな音がした。雷が落ちたような何かが爆発したような、そんな音。

「なんだ、何が起きているんだ?」

「ちょっと、危ないからここから出ちゃダメ…!」


 俺はステラの言葉をちゃんと聞くべきだった。

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