第一話 これが噂の転生?
地球…それはすごく昔になんかすっごいことが起きて生まれた太陽系の惑星。水があり、酸素があり、人間をはじめとする様々な生物が暮らす惑星でもある。
「そんな地球に生まれた俺、星野宇宙は平々凡々な高校生活を送っていた」
「何言ってんだよそらっち、とうとう頭イかれたか?」
幼馴染の山田大地にそう突っ込まれる俺。
「だいちゃん、俺は思うんだ。なぜ俺は地球に生まれたのか…と」
「もしかして昼食べた超激辛焼きそばパン〜ハバネロの香りとともに〜が脳みそ溶かしたか?」
「だいちゃん、俺は超激辛焼きそばパン〜ハバネロの香りとともに〜なんて食べた記憶はないぞ」
俺たちは学校の帰りにファミレスに寄って駄弁っていた。これももはや日課となっている。
「そんなことよりさ〜、俺たちこんなことしてるから彼女とかできないんじゃないのか?」
「だいちゃん、いいや山田大地…時に真実とは口にしてはならないこともあるんだよ。わかるかい?」
「ねぇ、さっきからその口調なに?やっぱり昨日の晩御飯の超激甘カレー〜ココアとココナッツの共演〜が悪かったのかな?」
「だいちゃんこそさっきからそのゲテモノシリーズなんだよ、微塵もそそられないんだが」
「え〜、超激甘カレー美味しそうじゃない?」
「いいや、まだ超激辛焼きそばパンの方が食べれそうだぞ」
俺たちは毎日こういう会話をしている。実に暇人だ。それでも俺は、こんな平々凡々な毎日を楽しいと思っていた。むしろ幸せだと感じていた。
いや、決してだいちゃんとの時間がそうであるというわけではなく、もしそうだとしたら俺はだいちゃんに恋をしているみたいじゃないか。断じてそうじゃないぞ。
「俺そらっちとこうしてる時間がすごく幸せなんだ〜」
「な、なんだよ急に…」
「べっつに〜」
なんか、心なしかだいちゃんが可愛く見えた。まぁ、確かに美形ではあるけど、だからと言って男相手にキュンとしてしまうなんて不覚である。
「さて、そろそろ帰ろうか」
「そうだな。あれ…ねぇだいちゃん、あそこに女の子が…」
「えっ、どこどこ?」
俺は窓の外を指差した。店の外、道路の向こう側に不自然に立ちすくむ少女がいた。
「うーん、どこにも見えないけど…」
「いや、あそこに…あれ?」
そこにいたはずの少女がもう一度見た時にはいなくなっていた。
「どこかに行ったのかな…スッゲー可愛かったんだけど…」
「そんなに可愛かったの?俺も見たかったなー」
「はぁ…これが一目惚れってやつかなぁ…」
「そらっち?顔がこの世のものとは思えないほど気持ち悪いよ」
俺はそんな辛辣なことを言われながら店を出た。
「それじゃ、また明日ねー」
「おう、またな」
だいちゃんと別れ、俺は一人帰路に着く。
その途中、また同じ女の子を目撃した。白くて透き通りそうな肌に綺麗な黒髪。胸も大きくて可憐な少女って感じだった。
「あの、きみ…」
俺は女の子を追いかけようと駆け出した。その時、無情にも信号が変わり、俺はたまたま通りかかった大型トラックにはねられた。
そして、俺は後頭部を強打して死んだ。
「あぁ…こんな事なら童貞卒業しておけばよかった…って、そんな相手いなかったわ」
俺は死に際にそんなことを考えていた。
「そりゃ男だし、死ぬまでに一度でいいから女と関係を持ちたいと思うのはごく自然なことで…」
「ほんっと、オスってテイゾクだよね」
「へ?」
突然の罵倒に変な声が出てしまった。気がつくと目の前には例の女の子がいた。
「いきなり現れて関係持ちたいとか言われたら引くを通り越して殺意すら覚えるわ」
やや早口で思いっきり罵倒されている状況に、俺はついていけなかった。
「えっと…ココドコ?」
「何言ってんの?ここはリテラ第三地区よ。そんなことも知らないの?バカなの?」
どうやら俺は嫌われているらしい。マシンガンのように罵倒が放たれてくる。
「リテラ…ってどこか外国なのか?でも聞いたことないな…」
「がいこく?何それ、あなたどこから来たの?もしかして異星人?どうやってここに来たの?」
「い、異星…?」
とりあえず俺は覚えている限りの事を話した。終始キョトン顔をされていたが、キョトンとしたいのはこっちの方だ。
「ここがリテラって惑星なのは理解した。でも、そんな惑星聞いたことないぞ」
「あなたが聞いたことなくても、ここはそうなの。チキュウって惑星の方が知らないわよ」
俺は死んだはずだが、知らない惑星で生きている。もしかしてこれって…
「とりあえず、あなた困ってるみたいだし、私の家に来なさい。あ、そういえば名前聞いてなかったわね。私の名前はステラ、あなたは?」
「えっと、俺は星野宇宙だ、よろしくな」
どうやら俺は異世界転生ならぬ、異星界転生をしてしまったらしい。