狐の参
「旦那様〜、早うしてたもれぇ〜。」
「待て待て、タマ。ショッピングモールは逃げないから…。」
「楽しみなのじゃ〜。」
さてさて、旦那様の風邪も完治し暫く経ったある日、妾は旦那様とショッピングモールとやらでデートと相成ったのじゃ〜。
元々、色々と足り無い家財道具を購入する為、行く予定だったのじゃが旦那様を襲った風邪のせいで出掛ける予定がずれてしまったのじゃ。
妾は基本的に自宅近くの商店街しか利用した事が無いし、形はどうあれ旦那様とのデートなのじゃから、はしゃぐなと言う方が無理と言うものじゃ〜。
旦那様曰く、『駅と一体型だから買い物には便利。ただ、物が多すぎ。』だそうじゃ。
ともあれ、妾のショッピングモール初体験に出発なのじゃ〜。
旦那様と一緒に車揺られる事、10分程。
巨大ショッピングモール到着なのじゃ〜。
「旦那様っ。デカイのじゃ!」
童の様にはしゃぐ妾を見て旦那様は『ウチの奥さんは安上がりだなぁ。』なんて笑っておった。むぅ…。
そして、車を駐車場に止めていよいよモール内ヘ。
「旦那様っ、凄いのじゃ!」
「そうだね。今日は、休日だから余計にね。」
モール内は色々なお店に、人、人、人で一杯になっておった。
先ずは一回りしながら目ぼしい物を物色し、購入するか検討するのが今日の予定らしいのじゃ。
「今日は、結構な混み具合だな…。逸れるといけないから…。」
そう言いながら妾の手を握る。
ふぉっ!?いっ、いきなりかやっ!?もー、妾、内心ドキドキバクバク物じゃが、出来る妾は努めて冷静に。
「だだだだだ旦那様!?ああああの!?そそそその!?」
「はい、行くよー。手、離しちゃ駄目だよ?タマ。」
「ははははいっ!ずっとっ、ずーーーっとっ、握ってるのじゃ!」
生娘の様な反応を見せる妾をクスクス笑いながら、手を引いて歩いて行く旦那様。
あっちこっちの店を冷やかしつつも必要な物のチェックは忘れない旦那様。流石!妾、惚れ直してしまうのじゃ〜。イヤ、惚れ直したの間違いじゃな。
たまに目当ての物とは違う物も物色したりしていたら、結構な時間が経っておった。
「さて、そろそろ昼にしようか。」
「ハイなのじゃっ。」
「何か食べたい物とかある?」
「あ、あの、旦那様っ。」
「ん?」
「アレっ、『たこ焼き』が食べてみたいのじゃっ。」
「たこ焼きかぁ。確か割と有名店が…。あったあった。」
そう言いながら、フロアガイドを見ながらお店を探し当て、『こっちだね。』と、旦那様自らエスコート。
手を引かれてやって来たのはレストランフロア内の1軒。
「ここは割と有名店なんだ。」
なるほど確かにお昼時を少し外れたとは言え、何人か並んでおるのじゃ。
漸く店内に入ってテーブル着き渡されたメニューを見るが、思いの外、種類が多くて妾が決め兼ねていた所に旦那様のフォローが。
「取り敢えず、同じ物で良いかな?」
「はっ、はいなのじゃ。」
その後、店員さんにお注文をして、待っている間に妾はもう一度、メニューを見る。
「色々なのが沢山あって、目移りしてしまうのじゃ。」
「そうだね。ここはメニューも豊富だしね。」
「所で旦那様、何を頼んだのじゃ?」
「こっちの方だと、ちょっと珍しい物。でも、タマも気に入ってくれると思うよ。」
「旦那様のオススメなのかや?」
「そう。僕のオススメ。それ自体は前から知っていたんだけど、この前、出張先で初めて食べたんだ。」
と、少し申し訳無さそうにに旦那様が言うのは多分、お土産として持ち帰れなかった事によるものであろうと推測する。
あぁ、優しきかな、旦那様。
さてさて、どうやら来たようじゃな。
「旦那様…、これは?」
「これは、明石焼きって言うんだ。」
「明石焼き…。」
妾、これは初めてじゃな…。
「これはね、こうしてツユに浸けて食べるんだ。」
と、旦那様が実演して食べ方を教えてくれる。
「ほぅほぅ、なるけど…。こうか…。」
『熱いから気を付けてね。』そう言う旦那様習い、妾も1つ口に入れる。
「ほふっ、ほふっ。んっ。これはっ、なかなかっ。」
「うん。熱々は旨いね。」
「ハイなのじゃ。こんな食べ方があるとは知らなかったのじゃ。」
「お気に召した様で何より。」
「今度は家で再現してみるのじゃ。楽しみにしてたも。」
「うん。楽しみにしてるよ。」
そして、昼食を摂り終え再び買い物再開。
あっちを見て、こっちを見てしている内にまた、随分と時間が経っていた。
その後、夕飯用の買い物を済ませ帰路ヘ。
「今日は旦那様と一緒にお買い物、楽しかったのじゃ〜。」
「満足してくれたら、一緒に行ったかいがある。」
「また連れて行って欲しいのじゃ。」
「そうだね。1日で全部は周り切れなかったから、また今度に。」
「ハイなのじゃ。」
車に揺られ、そんな会話で帰路に就いた2人なのじゃ。