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私の創った世界はどうでしたか?  作者: 冬月 広
第一章
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第三話【動き出す音】

ーーー 霧島 歩夢 ーーー


あれから僕は、誠也と別れ家に着き、吸い寄せられるかの様にベットに沈んだ。

そして、あの桜並木での、衝撃的な出会いを思い返していた。


「如月....音羽さんか......」


彼女を思い浮かべると、心臓が「ドクンっ」と、跳ね上がり、時間に身を任せていた脈は、爆発的な運動を始める。



必死に恥ずかしさを隠す為、ベットでのたうち回ってみたり、あたかも初めから、平常心だったかの様に、軽い現実逃避なんかもしてみた。



そんなこんなで、顔の火照りも治まり、僕は誠也と約束した、部活動の事を考えることにした。



部活動一覧のパンフレットを手に取り、本当に桜ヶ丘高校は部活動が盛んなのだなと感心する。



「僕は運動が苦手だから、運動部はやめとこうかなぁー、文化部とかなら、僕にも出来るかもしれない!」



そう思い、文化部一覧ページに目をやった。

一覧には、美術部、軽音楽部、演劇部と様々な部があり、怪談部なんてのもある。



「怪談部って、どんな活動してるんだろう」



なんて事を考えて、興味があるわけではないが、少しワクワクした。



「とりあえず.....この中だと、軽音楽部か文芸部かなぁー」



音楽には少し興味があったし、昔から本を読むのが好きだから、この辺が無難だろう。



やる事が終わった途端、強い睡魔に誘われた。

このまま寝たら、翌朝、完全に遅刻する。

最後の力を振り絞り、アラームをセットした。



入学式の初日の夜なんて、大抵こんなものだろうか。




.......ただ少し違ったのは、この後みる夢だった。




夢に落ちる際で、頭の中に声が響いた。



ーーまさか、君が来るとわね....君は運命って信じるかい?ーーー



そんな声が徐々に遠くに感じる頃、暗闇から景色が変わり、僕は大きな噴水の側にあるベンチに座っていた。



辺りを見渡し、どこか懐かしい気持ちになった。

街は、商人や街人で溢れ、花々は至る所で咲き誇り、音楽が街全体を美しく包んでいる。



これ.....夢なのか?? 現実な訳がないしなー。

でも、夢にしてはリアルすぎる。

明晰夢というやつか......。



始めての経験に少し混乱してしまう。



すると、目の前に空飛ぶ犬? の様な生き物が、急に現れた。


『こんにちは、歩夢』


・・・・・・


「???」


『僕はピート、まさか君に会えるとわね』



突然の事で、動揺が隠し切れない。それより.......



「まさか君にって、なんで僕の事を知っているの?」


『そりゃーそうさ。僕はずっと君をみていたからね』



ずっと.....みていた??

よくわからない展開になってきた。



頭が混乱する。



「これは夢の世界で....妙にリアルに感じる世界で......えっと、だから.....」


『強ち間違ってないよ、ここは夢と現実の狭間の世界だからね』


「どういうこと??」


『簡単に説明すると、ここは、ある少女が創った世界なんだ。そして、この世界は彼女の心とリンクしている』



少女が創った?? 心とリンクしている?? 全く理解できない......

ここは、僕がみている夢の世界ではないという事か。



『まぁ、難しい事は気にしないでよ! 時がきたら、ちゃんと教えてあげるからさ』



弾んだ声でそう言い、僕に笑顔を向けるその生き物は、小さいチワワ? くらいのサイズで、背中には白い翼が生え、目はクリッとした茶色、毛並みは蒲公英色の少し気品さを感じる生き物だった。



確かに、今は少し混乱してるし、落ち着いたら教えてもらう事にしよう。



ただ、一つだけ気になる事がある。

僕は思い切って聞いてみた。



「一つ聞いてもいいかい?」


『なんだい?』


「きみは...犬??」


ガブッ


質問と、ほぼ同時に、僕の頭に痛みが走る


「痛いっ痛いっ痛いっ痛いっ、いきなり何するんだよ」


『僕は犬じゃなーーい!!』


そういい、また噛み付いてくる。


「わかった、わかったから、噛まないでっ」


『僕は気高き竜族さ! わかった??』




ピートは竜族らしく、この世界には妖精や他にも沢山の種族がいるらしい。



『そうだっ! 丁度いいから、この世界でのルールや、生活の仕方を教えてあげるよ』



そう言うと、ピートは自慢げに話し始めた。



『まず、ここは、始まりの街【コマンセ】沢山の人々が集い、商いや情報交換をする街だよ』


『歩夢は、さっき痛みを感じたよね?』


そういえば......なんで現実じゃないのに痛みを感じたんだろう。

そして心成しかお腹も空いている気がする。


『それは気のせいでもなんでもなくて、さっき言った通り、この世界は夢と現実の狭間にあるんだ。だから痛みも感じるし、お腹もすく。下手したら死ぬ事だってあるよ』


「えっ!? 死ぬ事もあるの??」


『ここは狭間の世界だからね、ここで死ぬって事は、夢みたいに現実に帰る事は出来ず、狭間で一生彷徨うことになるんだ、だからくれぐれも気をつけてね』


「くれぐれも気をつけてって.......」


『大丈夫、いざとなったら、現実の世界でセットしたアラームが鳴るまで、生き延びていればいいんだから』


「アラームが鳴ったら帰れるって事??」


『そうだよ! または、誰かに起こしてもらえば、現実世界に戻れる。逆に冒険中、誰かに起こされると、強制帰還なんて事もあるんだよ』



なるほど.....少し理解してきた。



『そしてこの世界での生計は、商売だけではなくもう一つある』


「他にもなにかあるの? まさかギルドに入って冒険とか??」


ガブッ


痛い.....


ガブッガブッガブッ


「痛いっ痛いっ、痛いってばー」


『 その通りだよ!!』


腕組しプイッと顔を逸らすピート。ご立腹のご様子......


「...ごっごめんね?? もう口挟まないからさっ!ギッ....ギルドの事について教えてよ」


『絶対口挟まない??』


拗ねた様子で聞いてくる。


「うん、絶対挟まない」


『本当に??』


「約束するよ、ね? だからお願い!」


『しょーがないなー、それではギルドの事について教えてあげよう』


「お願いします」


満面の笑みを浮かべるピートをみてほっとした。

機嫌なおってくれてよかった.....



『この世界では、各街に一つあるギルドに、様々な依頼が発注されている。これからギルドに行くから、依頼書を見てみるといいよ』



こっちだよー、と言うピートの声につられて、ギルドへ向かう事になった。

噴水広場から、大きなお城の方に少し歩くと、右手にギルドが見えてきた。



ギルドは全て木で作られおり、入り口には大きな丸太が二本、どっしりと立派な門構えがある建物だった。店内は、広々とし開放感がある。



『入口から正面が受付、右側は依頼ボード、左側は酒場だよ』


「ずいぶん賑わってるね」


『今はイベントが発生してるからね』


「イベントなんてのもあるのか」


『依頼内容によって高額なものからそうでないものまで様々だから、そこの掲示板を覗いてみな』


ピートに言われ、右側にある依頼ボードへ足を運んだ。



なになに.....「猫を探しています、見つけた方には銀貨5枚」「アバン【ピア】大量発生、捕獲者1ピアあたり、金貨1枚」


「ねぇ、ピート、このアバンってなに??」


『それは通称【アバンドーネ】創造者の喜怒哀楽によって生み出される生物だよ』


「創造者の心がリンクしているからってこと?」


『その通り!! 歩夢は察しがいいね。 ちなみに【ピア】は喜び、その他にも、怒りの【ラビア】哀しみの【クラ】そして、楽しさの【ガウ】がいるんだ』


「全部で4種類か! もらえる報酬も多いし挑戦してみようかな」


軽いノリで言ってみたが、ピートに、まだ受けられないよと言われた。


『一応、あともう一種いるんだけど.......まっいいか、それより登録しちゃおうか』


何かを言いかけてピートは受付に向かって行った。

何を言おうとしたのだろうと、少し気になったが、ピートの後を追いかけた。



『ここがギルダーになる為の登録場所、ギルダーはギルドで依頼を受けて働く人の名称だよ』



受付の前で、ピートがそう言うと、女性がピートに挨拶をする。



「これはこれはピート様、お久ぶりでございます。お変わりないご様子で安心しましたわ」


『久しぶりだね、エリポン』


「エリポンとお呼びになるのはおやめくださいと、あれ程言っているではありませんか」



照れながら女性は言う。



その女性は、鯉と川の模様が入った、群青色の着物を纏い、深い緑色の髪を胸まで垂らし、口元の右下に小さな黒子、目元は少し緩く、なんとも艶美な雰囲気を漂わしている。



心の中を覗かれてる様な不思議な感覚に陥る。



『歩夢、この人はエリザベート、このギルドの責任者だよ』


「お初にお目にかかります。このギルドの責任者のエリザベートです。エリザとお呼びください」


そう言うと、エリザさんは丁寧に頭を下げた。

僕も慌てて挨拶をする。


「初めまして、霧島歩夢です。わからない事だらけで、あの、色々教えて頂けると嬉しいです」


『じゃあエリポン、歩夢にギルダーのことについて教えてあげてよ。ついでに登録もお願いね』



エリザさんは、呼び方が気になるようだったが、少しため息をもらし話し始めた。



「では、歩夢君? でいいかしら、 こちらにきてもらえる?」



はい、と返事をし、エリザさんにギルド内の案内と、依頼の受け方、終わった依頼の処理の仕方などを教わり、最後にギルダーの証明書を発行してもらった。


証明書はカード型で、表面にランクが刻印されている。ランクは下級のCランクから、最上級のSSランクがあるとのこと。


依頼のレベルや依頼遂行数によって、上がる仕組みらしい。


勿論、僕はCランクからのスタートとなり、受けれる依頼も、お使いや、迷子の動物探しがメインとなる。



「この証明書は、肌身は出さず持っていてくださいね、失くすと大変な事になりますから」


「わかりました、あっあの....ちなみに失くすとどうなるんですか??」


「ふふふっ、それは失くしてからのお楽しみっ」


エリザさんは怪しげに微笑んだ。

兎に角、失くさないようにしようと心に決めた。

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