甘々と
「あ、あの、先生……」
「何?」
「重くないですか?」
「君からの愛情なら重いと感じることはまずありえないわ」
「いえ、そういう意味ではなく……物理的に」
先生の家のリビングのソファの上。僕はソファではなく先生の膝の上に座っていた。端から見ればかなりシュールな光景だろう。あと申し訳なさすぎる。あと先生の目的がわからない。
「なんでいきなり僕は膝の上に座らされ、抱っこされてるんでしょうか?」
「君を甘やかしたくなっただけ」
いつもと変わらないクールな口調だけど、言ってることはドロドロに甘い!あと耳元に吐息がかかるのがめちゃくちゃやばい!新しい何かに目覚めてしまいそうだ!こんなの先生に知られたらドン引きされそうだけど。いや、それより……
「あの、そろそろ交代しませんか?さすがに重いでしょうし、それに……」
「?」
「今度は僕が先生を甘やかしたい」
「……そこまで言われたら仕方ないわね」
お互い緩慢な動作で場所を入れ替えると、こっちはこっちでシュールな気がしてきた。
先生は不思議なくらい軽くてやわらかく、理性を削ぐような何かがそこにはあった。
先生とくっつくのはもう慣れてると思っていたのに。
僕はそっと先生のお腹の前で手を組み、先生をさらにこちらに引き寄せた。
「んっ……!」
「あっ、すいません!痛かったですか?」
「違うわ。いきなり強めに抱き寄せられたからびっくりしただけ。あと少しくすぐったいかも」
「先生、ここが弱いんですか?」
「そ、そんなこと、ない……」
珍しく言い淀む先生。続けて声をかけようとすると、勢いよくこちらを振り向いた。
「二人きりの時は?」
「……唯さん」
「よろしい。次間違えたら補習を受けてもらうことになるわね」
「補習、ですか?ちなみに内容は?」
「……ひたすら私のことしか考えられない一時間を過ごすことになるわ」
「それは……そんな悪くないような」
「……そう言ってもらえるのは嬉しいわね。じゃあどんな罰がいいかしら」
「罰を受けなくていいように頑張ります……唯さん」
「いい心がけね」
すると先生はくるりと身を翻し、こちらを向いた。
まだ僕の膝の上に座ったまま、至近距離で見つめ合う態勢になる。いつの間に外れたのか、先生のシャツは一番上のボタンが外れて、そこから豊満な胸の谷間が覗いていた。
慌てて目をそらすと、その視線を悟った先生が、ニヤリと笑みを見せた。初めて見る笑い方だ。
「……み、見たい?」
その一言で頭の中が真っ白になった。




