今から二人は……
「裕一君……好きよ」
「っ!」
突然すぎる告白に目を見開いてしまう。
……いや、違う。これは突然訪れたものなんかじゃない。
先生はずっと前から伝えてくれていた。
僕がずっと……気づかないふりをして、逃げ続けていただけだ。
自分に自信がないのを都合のいい理由にして……。
先生は距離を詰め、上目遣いで僕の目を覗き込んできた。
「もちろん教師として許されないことを言っているのはわかっているわ。もしかしたら気味悪がられるかもしれない……でも、伝えたかったの。知っていてほしいの。私が君を……大好きなことを……あ」
理由なんかなかった。
このやり方があってるかなんてどうでもよかった。
僕は先生を思いきり抱きしめていた。
「裕一……くん?」
「僕は、先生が好きです」
すると、先生はぐいっと僕を押しやり、ジト目を向けてきた。
「君……約束したわよね?二人っきりの時は何と呼ぶのかしら?」
「す、すいません。先生、じゃなくて。ゆ、唯さん……」
「はい」
「僕は……唯さんが……大好きです!!!!!!!!」
つい大声で叫んでしまう。ていうか、そうでもしないといえそうもなかった。
そんな叫びは、寂れた駅前にまだ響いている気がした。
先生としっかり目を合わせると、口元を抑え、涙を流し……思いきり抱きついてきた。
「ありがとう……!私も大好き!大好きよ!」
「せ、先生……苦しい……」
「あら、ごめんなさい」
もう一度先生の瞳を見つめると、少女のようにキラキラしていた。
表情も何だか幼くなったように思える。
……これも初めて見る顔だ。
可愛すぎて、先生の腕を引いて抱きしめてしまう。
今度は甘い香りもしっかり感じた。
人通りがないからか、本当に世界が二人きりになったような気分だ。
体は火照っていて、頬を撫でる優しい風のおかげで、今の季節が冬だと思い出す。
そして、それと同時に空からはらはらと白い雪が降り始めた。
「……素敵なタイミングね」
「ですね」
柔らかく積もりやすそうな雪は、先生の目元に触れ、涙のようにきらりと光った。
そこで、ふと僕は思ったことを口にした。
「あ、あの、先生……」
「何?」
「えっと……今から僕達、こ、こ、恋人って、ことなんですよね。その……彼氏彼女というか……」
「……それはちょっと待って」
「え?」
「いえ、変な意味じゃなくて。正直君としたいことはたくさんあるの。手を繋いで町を歩いたり、公園で手作りのお弁当食べたり、遊園地に行ってお化け屋敷で抱きついたり、海で砂浜に二人の名前を書いたり、クリスマスに……ごめんなさい。つい喋りすぎたわ。つまり、君と家族になる決心は既にできているの」
何段階かすっ飛ばしていて、僕はまだそこまで考えていなかった。さすがは先生だ。
驚きに目を見開いていると、先生は周りに誰もいないのに、僕の耳元に口を寄せて、甘い言葉を吹き込んだ。
「ーーーーーーーー……」




