街灯の下
僕は今度は中学校からさらに向こうへと歩いていった。
あと少しで辿り着きそうな気がするのだ。
先生は一つの答えを示してくれた。
だからこそ、待ってくれている先生に甘えてばかりいるわけにはいかない。
「……あれ?」
考え事をしながら歩いているうちに、割と遠くへ来てしまっていたらしい。最近こういうの多いな。気をつけないと……。
周囲を確認すると、見覚えのある場所で、目の前には小さな駅があった。
こっちの方はあまり来ないから滅多に使うことのない駅。
小さくてあまり人気のないその場所は、夕焼けのせいか、より一層寂れて見えた。
来ることのない電車を待っているようにも見えるその駅は、何故か懐かしく思えた。
「……あっ」
そこで再び、頭の中を電流が走る感覚がする。
そうだ!たしかあの日、学校に行かずに、勢いに任せて電車に乗ったんだ!
当時の行動が朧気ながら輪郭を伴ってきた頃には、僕は自然と駅に足を踏み入れていた。
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僕は何処に向かっているのだろう?
自分自身にそんな問いかけをしたくなるような行動だ。しかも、もうすっかり日が暮れている。
電車の中には帰宅中らしき人達がちらほら座っていた。
窓の外には明かりの灯った家が建ち並び、それぞれの日常が営まれていると思うと、この電車だけ世界から切り離されたかのような感覚になる。
あの頃の自分もこんな感じだったのかもしれない。それを言語化できないだけで。
そんな役に立つかどうかかもわからないことを考えていたら、いつの間にか電車は二駅目を過ぎ去ろうとしていた。
……前はどこで降りたんだっけ?
それすらわからずに電車に乗り込んだ自分の無計画さに驚かされる。
とりあえず僕は次の駅で降りてみることにした。
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「……暗い」
たまたま降りた場所は、名前は知っているけれど、来たことがあるかどうかは、はっきりしない場所だった。
街灯が一本、ポツンとあるだけで、その光は今にも夜の闇に溶けてしまいそうだった。
少し自宅から離れただけで、こんなに寂れた場所に行き着くとは思わなかった。
別世界に行ってしまったかのような浮遊感を背中に感じながら、僕は一歩一歩しっかり足を運んだ。
何か確信あるわけではないし、もう日も暮れているので、少し歩いてみるだけだ。
何か収穫があれば、それだけでものすごい奇跡だと思う。
そのつもりだった。
見慣れた姿がそこにはあった。
「先、生?」
「……こんばんは」
薄暗いベンチに森原先生が座っていた。




