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母校、周辺

「う~ん……」


 昼休み、改めて事情を話すと、愛美さんは口元に指先を当て、中学時代の記憶を辿っている。

 やがて、残念そうな顔をして、頭を下げた。


「ごめん。やっぱり記憶にないや……」

「そっか」


 これはまあ予想していた。

 僕が彼女とよく関わるようになったのは、高校2年の頃からだし、まあ知らない方が自然だろう。


「……思い出したのかと思ったよ」

「え?」

「あっ、こっちの話、こっちの話!じゃあ何か思い出したら言うね。何なら中学の時の友達とかに聞いてみる?」

「あ、それは大丈夫……」

「何で?」

「ほら、僕中学の頃、友達……」

「……ごめん」


 その心の底から申し訳なさそうな声に、今度は僕のほうが申し訳ない気分になった。いや、いいんだけどね……。


 ********


 今日の最後の授業は森原先生だ。昨日の事があったからか、朝は全然目が合わなかった。

 そして、今も授業中にくっついてくることはしない。

 普通に考えたら当たり前のことなんだろうけど、何だかぽっかり胸に穴が空いたような感覚がする。物足りないというか何というか……。

 結局チャイムが鳴るまで、いつもと違う気分で授業時間は過ぎていった。


 ********


 本当は授業が終わってすぐに先生を追いかけたかったけど、何故かできなかった。

 ……やっぱり自分で思い出さなきゃ。

 たとえそれがどんなに非効率であろうとも。


 ********


 ど、どうしよう祐一君がやたら私に対して前のめりになってる……!

 これ、もう自分から全部言っちゃったほうがいいんじゃないかしら?

 いえ、それは駄目。せっかく彼が自分から動いてくれてるんだから。

 果報は寝て待てとも言うし、いや、でも……。


「森原先生、どうしたんですか~?フラフラしてますけど」

「見間違いでは?」

「え、でも~」

「見間違いでは?」

「そ、そうですね~。見間違いですよね~あはは……」


 いけない。動揺が表に出てしまっているではないか。

 私はかぶりを振って、なるべくいつもの歩幅や速度を意識して、職員室へと向かった。


 ********


 帰り道、僕はいつもと違う道を歩いていた。

 それは、一昨年まで通っていた中学校へと続く道だ。

 とはいっても、別に母校を訪ねる気はないんだけど。さすがに中学時代の先生に「誰だ?」なんて言われたら、少しはへこむし。奥野さんの反応を見るかぎり、あまり中学は関係ない気がする。

 でも、ここに通っていた頃に起こったことなら、この周辺に何かヒントがあるかもしれない。

 とりあえず周辺を一周してみた。

 ……うん、やっぱり何もないや。

 さらに、グラウンドにいる女子生徒から不審そうな目を向けられたので、僕は早歩きでその場を後にした。

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