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とまどい

「はあ……」


 授業を終えると、僕は脱力して机に突っ伏した。

 何と言うか、立ち上がる気力が沸かなかった。

 ……やばい。

 初めてではないけどやばい。

 ていうか初めてじゃないのもやばい。

 最近、前とは違った感情がそこにある気がする……これは……


「ねえ」

「はあ……」

「ねえってば!」

「わっ、びっくりしたあ……。なんだ、愛美さんか」

「なんだとは何よ。ていうか、大丈夫?夢見心地なのか、神経すり減ってるのかわからない顔してるけど……」

「あ、うん……まあ」

「まったく、鼻の下伸ばしちゃって……」


 その言葉に、つい鼻の下を手で隠してしまう。どんだけデレデレしていたんだろうか?

 すると、愛美さんが距離を詰め、じーっとこちらを覗き込んできた。


「な、なに?」

「じ~……」


 わざわざ擬音までつけなくても……。

 緊張感が高まり、何か言わなきゃと自分を急かしていると、奥野さんはすっと視線を逸らせた。


「こんなん私が緊張するわ……」

「え?」

「なんでもない。それより、一旦顔洗ってすっきりしてきたら?」

「……そうする」


 立ち上がり、トイレに向かう途中も背中には生々しくやわらかな感触が残っていた。


 ********


「ねえ、あんたそろそろ行かなくていいの?」

「…………」

「おい」

「あうっ」

「まったく……自分から刺激的なことやっといて恥ずかしがってんじゃないわよ」

「…………はい」


 ********


「あ……」

「っ……」


 顔を洗い、トイレから出ると、いきなり先生に遭遇した。

 しかも、先生の驚き顔が一瞬見れるというレアなおまけつきで。

 すぐにいつものクールさを取り戻した先生は、こちらにつかつかと歩み寄ってきた。


「おはよう」

「あ、はい……おはようございます」


 何故さっき会ったのに挨拶?もう11時過ぎてるんだけど……と考えながらも律儀に挨拶を返してしまうと、先生がこちらの耳に顔を近づけてきた。


「さっき、私のせいで授業に集中できなかったわよね。ごめんなさい。今日放課後、私の家に来て」


 囁くような声のトーンで言うと、先生は颯爽と去っていった。


「は、はい……」


 その後ろ姿が角を曲がる頃、僕はようやく返事ができた。


 ********


 家に帰り、二時間ほど時間を潰して、先生の家の呼び鈴を鳴らすと、先生はすぐに出てきた。


「いらっしゃい。さあ、上がって」

「お邪魔します」


 学校での事があったからか、つい胸元に目が行ってしまう。もちろん、何がわかるわけでもないけど。

 変な妄想が働きそうだったので、すぐに目を逸らすと、先生は「どうしたの?」と言わんばかりに首をかしげていた。

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