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小さな変化

 しばらくしてようやくギプスが取れ、僕は喜びに満ち溢れていた。

 とはいえ、この一ヶ月間は周りのお世話になりすぎたので、しっかり感謝の気持ちを返さなきゃいけない。

 家を出て、真正面にある森原先生の家を見ると、何となくだけど、先生はもう学校にいる気がした。

 

「裕一くん、おはよ!」

「え?あ、愛美さん!」

「ようやく取れたみたいね。よかったじゃん」

「うん。その……色々とご迷惑おかけしました」

「困った時はお互い様だよ」

「でも、今度お礼はさせてほしい」

「う~ん、じゃあ今度どっか出かけない?一緒に」

「え?いいけど……」

「おお、あっさりOKしてくれた。ふふっ、じゃあ何を奢ってもらおうかな~」

「あはは、任せてよ」


 奥野さんは特にお世話になった人の一人なので、それくらいならどうってことない。むしろ足りないくらいだ。


「よっしゃ、じゃあ荷物持ちも任せた!」

「うっ、まあ、筋トレだと思えば……」

「あっ、無理はしなくていいからね。リハビリ程度にやってくれればいいから」


 二人で学校までの道を歩き始めた時、僕は何となく先生の家を振り返った。


 *******


 教室に入ると、皆が集まってきて「おお、ようやくギプス取れたんだなぁ~!」みたいに賑やかに出迎えてくれた……なんてことはなく、いつもどおりの日常が戻ってきた。

 そして、その気分を裏付けるかのように教室の扉が開き、先生が姿を見せた。


「おはようございます」


 いつものクールな佇まいに教室内の空気が変わる。毎日体感してはいるけれど、今日は解放感があるからか、特別に感じられた。


「…………」


 こちらをじぃっと見つめてくるその目も……あれ?なんか今日長くない?

 十秒くらいそうしていたからか、さすがに長すぎて、周りのクラスメートが首を傾げたが、すぐに何事もなかったかのように、朝のホームルームが始まった。


 *******


 小さな変化は授業中にもあった。


「…………」


 圧が強い!!!

 授業中、ちょっと間があると、視線を僕に固定させていた。これまでは気がつけばこちらを見ている的なかんじだったが、今はこちらを見る際には、がっつり視線をこちらに固定している。

 だが、普段どおりにしっかり授業はしているので、これに関しては誰も不審がっていなかったけど、愛美さんは「見すぎ……」とぼやいていた。

 そして、極めつけは……


「ここは登場人物の心情をしっかり読み解いて……」


 先生が注意点を、体をぴったりとくっつけて教えてくれるのだが……。


「っ!」


 危うく声が出そうになった。

 そう、何て言うか…………いつもより、やわらかいのだ。

 せ、先生、もしかして……。


「裕一くん、顔赤くなりすぎ」



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