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二学期


 二学期が始まり、クラスの中の空気は普段より活気づいていた。

 それもそのはず、二学期は文化祭・体育祭・修学旅行と、イベント続きなのだから。僕みたいにあまりテンションが上がっていない方が少数派になってしまう。そんな……テストの時は味方だったじゃんか……。


「はい。それでは文化祭の出し物を決めたいと思います」


 そこで、僕の思考を断ち切るように、森原先生の声が聞こえてきた。今、こっちを見てた気が……。

 今日は先生の授業がなかったからくっつかれてないけど、夏休みの事もあり、何だか前よりこう……いや、考えるのはやめよう。身の程知らずもいいところだ。

 かぶりを振って思考を断ち切ると、周りからどんどん出し物の提案がされていた。

 お化け屋敷、メイド喫茶、演劇……文化祭の定番とも呼べるような出し物が黒板につらつらと書き連ねられていく。

 僕は特に自分から進んでやりたい出し物があるわけではないので、頬杖をついて、黙って黒板を見つめていた。


「ねえねえ」

「あっ、はい」


 思春期の少年を描いた主人公気取りで、一人興味なさそうな表情を作っていると、新井先生が肩をポンポン叩いてきた。こういう時、すぐに素に戻って、作り笑いを浮かべてしまう自分が少し哀しい。


「浅野君は何かやりたいことはないの~」

「あ、えっと……はい。何も思いつかなくて……」

「そっかぁ。じゃあ、メイド喫茶に投票して、森原先生のメイド姿を見よっか~」

「っ!?」


 僕は身体中に電流が流れたかのような衝撃を覚えた。

 先生の……メ、メ、メイド姿……。

 おそらく……いや、間違いなく学校中の皆が見たいと思っているはずだ。


『おかえりなさいませ。浅野く……いえ、ご主人様』


『ご主人様……お、お背中、流します』


『ご主人様……その、優しくしてくださいね?』


「顔赤いね~。でも、最後のはメイド関係ないような気がするなぁ」


 こ、心を読まれた……まあ、確かに関係ない、かな……最近の思考回路は本当にどうかしている。


「はいはい、どうどう。どうどう。そんなに自己嫌悪に陥らなくて大丈夫だよ~。私も見たいし」

「あ、あの、さっきから新井先生は何故僕の心を読んでるんでしょうか……」

「浅野君は顔に出やすいから、すぐわかるんですよ~♪」

「っ……!」


 それはものすごく恥ずかしい!

 別にクールキャラになろうとは思わないし、なれっこないけど、かと言って、そんなあっさり考えてる事がばれるとか……


「二人とも、そろそろいいかしら?」

「「え?」」


 いつの間にか、森原先生が僕と新井先生のすぐ傍まで来ていた。周りからは「え?瞬間移動?」とか何とかざわめきが起こっている。


「さっきから二人で作戦会議をしているようだけど、何かいい案は浮かんだのかしら?」

「「…………」」


 僕も新井先生も何も言えなくなる。ていうか、先生の涼しげな雰囲気から放たれる、意外なくらいに重い圧力みたいな何かのせいで、微動だにすることもできない。あ、あれ?先生……怒ってるんでしょうか?

 さらに、周りの視線も集まり、何だか緊張してしまう。


「浅井……やっちまったな」

「浅草、こっそり新井先生と楽しくお喋りしやがって……許すまじ」

「愛美、抗議しなくていいの?とらないでって」

「ちょっ、何言ってんの!?」


 あれ?夏休みの間に僕の名前の記憶が抜け落ちたのかな?微妙に違う名前で呼ばれてるんだけど……端っこで何故かあたふたしている奥野さんは僕の名前忘れてないよね?いや、そんなはずないか。最終日にたまたま家の前を通ったというだけで、わざわざ訪ねてきてくれたし……よく、先生の家にいるって気づいたな……。


「浅野君……何か案はある?」

「あー、えっと……」


 ここは素直に謝ろう……そう考えたところで、新井先生が「は~い」と手を挙げた。


「私と浅野君は森原先生の可愛いメイド姿が見たいで~す」


 ああ、それは確かに見たいです……って、えっ!?

  

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