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急接近?

「えっ、アンタ……浅野君の家に泊まったの?」

「う、うん……」


 私は親友の桜の家で、ありのままを話した。もちろん先生の話は伏せて。何というか、誰かに吐き出したい気分だった。驚かれるかもしれないけど。

 しかし、小学校からの親友の目はいつもと変わらない。むしろ冷ややかだった。あれ?


「どうせ、それでも何もなかったんでしょう?アンタだし」

「うっ……いや、でも、その…………うん」


 さすがは親友。その辺りのことはお見通しのようだ。ここまでお見通しだと、それはそれで辛いものがあるんだけど。


「で、でも、お泊まりだよ!何でまったく驚かないの?」

「……どうせ、親戚の女の子が泊まりに来てたけど、浅野君の親が出かけていて、二人きり心配だから泊まったとかそんなんでしょ?」

「桜ちゃん、エスパーなの!?」


 ちょっと違うけど。


「ウソっ、適当に言ったら当たっちゃった……」

「……はあ……どうせ私はヘタレですよ~」

「ふふっ、拗ねないの。今日はゆっくり話聞いてあげるから。ね?」

「あ、うん……」


 さ、さすがに連日お泊まりする口実はないし、お父さんやお母さんからも怒られるよね……あー、どうしようかなぁ……先生が変なことしないように、途中で電話でもするしか……。


 *******


 やけに豪勢な夕食を平らげた後、僕と若葉は先生に勉強を見てもらえる事になったのだが……。


「すぅ……すぅ……」

「お、おい、若葉……どうした?食べてすぐ寝ると太るよ」

「大丈夫よ。10時間眠るツボを突いただけ…………たまにはそういう日があっていいじゃない。夏休みだもの」

「い、今、10時間眠るツボとか言いませんでした?」

「気のせいよ」

「え?でも……」

「気のせいよ」

「は、はい……」


 先生にじっと見つめられ、僕はただ頷くことしかできなかった。ま、まあ、あんなに安らかな寝息を立ててるし、大丈夫だよね……。

 そして、タンクトップに短パンという、かなりラフな格好に着替えた先生は正座し、当たり前のように僕にぴったりとくっついてきた。


「あ、あの……」

「こっちの方がやりやすいわ。だから気にしないで」

「そうですか。はい……」


 いや、気にするなとか無理なんですけど……。

 こうして、若葉の安らかな寝息をBGMに、夜の勉強会が幕を開けた。ちなみに、決していやらしい意味じゃない。


 *******


 1時間経過し、僕は一つの違いを自覚していた。

 普段なら緊張し、胸がドキドキするだけだ。でも、今は……。

 何というか、普段は理性が本能にかけているブレーキが外れそうな感覚とも言うべきなんだろうか……。

 さっきから、先生の横顔をつい何度も確認してしまう。

 やっぱり綺麗なその横顔は、すぐ隣にあって……でも、触れることなんてできなくて……。


「……しゅ、集中してる?」

「あ、す、すいません!」


 そりゃあ、この距離で見てたら、いつかは気づかれるよね……しかも、あのクールな森原先生が噛むとか、僕はどんな気持ち悪い視線を向けていたというのか……。

 そんなことを考えていたら、うっかり書き間違えてしまう。

 すぐに消しゴムを取ろうとすると、既に消しゴムの上には先生の手が乗っかっていて、そこに自分の手を置いてしまった。


「「…………」」


 な、何だろう……何回か似たような場面には遭遇したけど、感触やら温度やらが、昨日とはまるで違う気が……。


「祐一君?」

「ご、ごめんなさいごめんなさい!!」


 瞬間移動のように部屋の端っこまで飛び退く。や、やばい……僕、どうしちゃったんだ?

 先生はキョトンと小首を傾げた後、四つん這いで距離を詰めてくる。タンクトップからは、豊満な胸の谷間が見え、気をしっかり持たないと、そこを集中的に見てしまいそうだ。


「緊張、しているの?」

「いえ、緊張と言いますか、何と言いますか……なんか、落ち着かなくて、先生の隣が……」


 先生の隣が、と言う必要はなかったのかもしれない。

 でも、このままだとヘタレな自分でも間違いを犯すような、そんな不安が胸の中に満ち溢れていた。


「嫌だった?」

「そんなことないです!嫌なんて……ただ、何故かいつもよりやたら緊張しちゃって……」

「……それは、私を意識しているの?」

「えっと……その……そうかもしれません」

「っ!」


 先生は顔を両手で覆い、部屋から飛び出していった。

 いきなりの事にポカンとしていると、廊下からドタバタと跳ねるような音がして、しばらくすると先生が戻ってきた。


「ど、どうしたんですか?」

「向こうから物音がしたから、気になって見に行ったのよ」

「え、本当ですか!?じゃあ、僕も……」

「大丈夫よ。何もなかったから。それより……確かめてみる?」

「へ?」

「……今から……確かめて、みる?」

「え?」


 先生は眼鏡を外し、距離を詰めてくる。すぐ傍で眠っている若葉の寝息が、甘やかな雰囲気にそっと追い出されるように遠ざかる。

 先生は僕の顔を両手で優しく包み込み、そして……

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