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第8話.死闘

 閃光が駆け抜け、空間を切り裂いて台原に向かう。


 が、台原は大剣を閃光にあてがうとそれをそらしていた。


「ぐ、おおおおっ!」


 そのまま受け止めきれずに台原は地面を削りながら壁に背中をたたきつけられる。


「エリカ、行くぞ!」


「うんっ!」

 その瞬間、大剣エクスナイトソードが光る。


「おまえ、なんなんだ。……レベル18の分際で、てめえ」


「うるせぇんだよ、クソ犯罪者が!」

 弾丸をこめて連射する。銃口ないで時間をとめる。5の弾丸を一気に放つ。


「もうしゃべるなよ。空気を吸うことも許可しない。砕けろ『マグナムエンハンブル五連弾・インパクト』!!」


「な……」


 五つの閃光が旋回しながら巨大化し、台原に向かって炸裂する。


「ぐぉあああああああああああああああああっ!」


 壁を吹き飛ばしながら台原の体は空中へと投げ出される。


「ぐ。ぎゃ、あ、はっ! なめるなぁあああああああああああああっ! 二年間、だっ! ぞっ! おれはああああああああああ! この世界で、生きてきたんだっ!」


 しかしその状態で、台原は大剣を回転させる。


「吸え、魔剣アルクトス!!」


 瞬間、刀剣に光の渦が吸い込まれていく。そして、卓也が放ったエネルギーが四散する。


「遊んでいたわけじゃねえんだ。この世界で生き残るため……」


「その剣……!」


 台原が持つ、剣か? それが攻撃を吸い取って無効化したのである。


「前にアルザス王国の宝物庫から盗み出した代物だ。英雄級の一刀品。あらゆる魔法攻撃を吸い込む魔剣」


「無効化か、だからどうした!」


 そのまま地面を蹴り、駆ける。そして左手に持つエクスナイトカリバーを振るう。


「っは!」

 が、なんなく台原は剣戟を受ける。


「てめえ。そんな店売りのゴミ剣で王国の宝物庫の魔剣と勝負しようって言うのか、ああああああああああっ!?」


 瞬間、台原の魔剣が虹色に輝く。


「俺の魔力を吸え、魔剣よっ!」


「っ!」

 そして、拓也の剣をはじく。


「な」

 金属音がとどろき、そして、折れる。


 拓也の持つ剣が剣先からえぐれてすっぱりと折れていたのである。


「っ。エリカッ!」


「なに騒いでんだよ、テメエっ!」


 そして、斬りつけられる。


「が、ああああああああああああああああっ!」


 拓也はゴロゴロと地面を転がる。すんでで身をかわしたため、傷は浅い、なんとか致命傷をかわすことができたが。


「くそ。エリカ、エリカっ!」


「拓也君……」

 ふわりと剣から現れたエリカはそう言う。


「剣折れちゃったね」


「おまえ、大丈夫なのか」


「うーん。たぶん……みたい」


 ぽりぽりと頬掻きながらエリカはそう言う。どうやら無事の様だ。しかし……。


「なんだその幽霊。それがテメエのスキルか? って、違うか。テメエのレベルは18。固有スキルなんて持ってねえもんな……」


 そう言った瞬間、台原の体が光り輝く。


「メイドの土産に見せてやろうか……レベル100を超えた人間が出せる本当の力。おそらくそっちのベテランクソ女刑事さんは持ってたんだろうけど、なぜ地球人がこの世界に勇者として召喚されてきたかわかるか?」


「……知らねえ」


「この力のためだよぉお。固有スキル。現地人じゃ滅多に100レベルには到達できねえ。帝国でも、レベルを100を超える人間は7人しかいねえっていう。だが、おれたち地球人は違う簡単に達せられるからなあ。魔物たちと対等に戦いうる唯一の法則」


 固有スキル……。


「落ちろ」

 瞬間である。拓也の目の前が白い光に染まる。


「な……」


 目を開ける。


 拓也の目の前。先が見えないほどの巨大な穴が開いていた。


「なんだよ、これ」

 地面が焼け焦げている。


「これがおれのスキル。転校を操り絶対防御不可避の雷鳴『神の(グングニル)』で敵を穿つ。今のはわざと外した。わかるか?」


「く……そ」


「さあ、死ね」

 そして、また台原は手を頭上に掲げる。


「落ちろ」

 瞬間、拓也の頭上が輝く。


「っ!」

 よけられない。


 が、台原の放った雷撃は空中で炸裂し、爆発を轟かせながら四散していた。


「な、に」

 空に浮かんだのは一筋の矢だった。それが拓也と雷撃の間に入ったのである。


「なん、だあ」


 矢を放ったのはユリアだった。


「戦う、かりに勝てなくても……」


「てめえ女ぁあああああああああっ!」


「村はわたしたちの手で、守る」


 そしてもう一弾、弓を放つ。今度は台原に向かって。


 しかし台原はそれを軽々しく握りしめて抑え込んでいた。


「なあ現地人。レベルは……27か。ざこのくせになあ」


 そして、台原はユリアに向かって行く。二度、三度と弓矢を放つが、すべて台原は問題なくつかんで止めていた。


 まずい。このままでは、ユリアが……殺される。


 だけど、拓也の最高の攻撃も、台原に防がれた。拓也に彼に立ち向かう術は、もう。


「いや……エリカ」


「拓也君?」


 最後の、賭けだ。


 最後の……。


「だいはらぁあああああああああああああああああっ!」

 そして、撃つ。


 五連弾っ!


「だからぁああああ、テメエの攻撃は効かねえって言ってんだろうがぁあああ!」


 台原は向かってくる光の束に向かって、魔剣を振り下ろす。


 拓也の射出した光の束と台原の魔剣がぶつかる。


「うぉおおおおおおおおおおおおっ!」


 拓也がまっすぐに向ける拳銃が、光り輝く。


「だい、はらぁああああああああああああああああああっ!」

 その、中である。


 拳銃から浮かび上がる少女の顔がまっすぐ台原を睨み付けていた。


「な、んだよ……それ。その」


「おれの相棒だ。憑りついた武器の効力を高める、政権に憑りついた幽霊だよ」


「ぐお」

 拓也の射出した光が、台原の剣を押し返す。


「な、が……」

 だが、そこで押し留まる。

 

 まずい。押し負ける……。


「ふざけるな、レベル18、てめええええええええええええええええええええええ、あが」


 その、肩である。

 矢が突き刺さっていた。


「ユリア……!」


「この村は、おまえには渡さないっ!」

 押し切れる。


「てめぇええええええええええええあああああああああああああっ!」


「いっけぇええええええええええええええええええええええええっ!」

 そのまま全魔力を込める。


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 そして、魔剣ごと、台原の体を飲み込む。そして、はじける。


「が、あ。はあっ」

 拓也は片ひざをつく。


「はあ。はあっ。勝った……」


 そんな横、

「ぐあ、はっ!」

 空中から落ちてきたのは体中がえぐれた台原だった。


「かひゅー。くあ……」


 とくに口からのどにかけての損傷がひどい。当然では、あったが。


「あ、ああ……」


 えぐれたのどは空気を漏らし、音にならない音をとどろかせていた。


 そんな台原の両腕に手錠をはめたのは秋菜だった。


「4月13日20時19分。……台原重雄、逮捕、完了……」

 異世界指名手配犯ケース12.台原重雄(29)捕獲完了。


「室長……」


「やるじゃないか」


「って、毒は」


「そんなもんとっくに消えてる」


「なら、加勢、してくれればいいのに、ギリギリ、だったんですよ」


「もう二人いたからな……」

 そう言って手錠のかけられた男二人を台原の隣に投げ捨てる。


「な……」


「わたしを殺すためにこいつらもそれなりに考えることにしたらしいな。まあ無駄だったが」


「3人……」

 潜伏していた犯罪者は、3人。


「室長、それ」

 見ると秋菜の右半身は血で染まっていた。


「……ああ。ちょっとミスった。まだ麻痺も回っていたしな……。やつらもただ追われるだけのネズミじゃないってことさ」


「……室長」


 なんだよ、これ。

 血まみれでボロボロの体。


「こんなの続けろって言うんですか?」


 二年間で7人の職員が殉職している。


「こんな……」

 だけど、それでも。


「……ありがとう。この村を救ってくれて」


 ぼたぼたと涙を流しながら、ユリアはそう言った。


「うあ。うぁああああああああああああああああああんっ!」


 だけど……。


「いつでも、ウエルカムだぞ。異動届、は」


「……まだ一日目、ですし」

 そう言ってどさりと地面に崩れ落ちる。


「もう少し、踏ん張ってみます」


「そうかい。なるべく、死なずに長続きしてほしいね。また職員を殺したんじゃ、みっちゃんに怒られるから、さ」


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