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第1話.第七捜査課

 

 どうして、こんなことになった!?


「うぁあああああああああああっ!」


 益田拓也は襲い掛かってくる三つ首の巨大な怪物に拳銃を引きながら叫び声をあげる。


 18歳。憧れだった警察試験を突破し、そして警察学校も卒業、本日付で配属が決定したばかりの新米刑事だ。


 そう。今日からついに憧れの刑事生活が幕を開けるはずだった。だというのに。

 これはあこがれじゃない!


 なんだって人間じゃなくて、異型の化け物と戦わなくてはならないのか。


 パニックものの漫画でもそうだ。大概警察は役に立たずに死ぬのがセオリーなのだ。


 こんなもの、どこぞのよくわからないヒーローかくの学生なんかに任せておけばいいのだ。


「ますだぁあっ! そんな雑魚にてこずってんじゃない! 命がいくつあっても足らんぞ」


「室長……そうは言っても限界ですよっ!」


 見た目幼女のツンデレ室長にけつをけられるのはある意味では幸福だが。


 彼女の名前は郷林秋奈。見た目は何の奇跡か中学生にしか見えないがれっきとした成人だ。というか完全に年齢不詳。拓哉の上司に当たり、拓也が所属する第七捜査課の室長なのだ。役職は警視正。


 警視正である。一応海外の大学を飛び級で卒業して警察学校には行った生粋のエリートで現時点で最年少警視正ということだが、常識的に見積もって軽く30歳は超え……。


「拓也。なにか、余計なことを考えていないか?」


 ぴくぴくと眉を動かしながらそう言う。


「考えてません。って言うかそんな余裕ありませんっ!」


 必死に後ずさりながら引き金を引く。


 すると拓也の放った弾丸は化け物の中央の額をぶち抜いた。


「よしっ。当たりましたよっ! 警察学校時代、射撃の点数はよかったんですよ、おれ!」


「馬鹿、油断するなっ!」


 化け物はひとつの頭をもたれながらも残り二つをふるって襲い掛かってくる。


「ひっ。なんで頭吹っ飛ばしたのに。う、うぁあああああああああっ!」


 思わず目を閉じた瞬間、化け物の悲鳴がとどろいた。


 化け物の横に躍り出た秋菜はマグナムを一弾放つと、線上に並んだ双頭を両方とも弾き飛ばしたのである。


「た、助かった」


 目の前で崩れ落ちたバケモノを見ながら、拓也はほっと胸をなど降ろした。


「……なぜ目を閉じた!」


「で、でも」


「止めを刺さなきゃ経験値は入らないんだぞ!」


「だ、だから、無茶言わないでくださいよっ! いったい何なんですか、ここは!」


「説明しただろ」

 ためいきをついて、秋奈はそう言う。


 確かに説明された。


 拓也が所属する第七捜査課は、2年前に警視庁に新設された新しい課だ。


 とはいえ、その捜査内容は、ある重要な国家機密にかかわるため一般に知らされることはない。それが一般に認知されれば混乱を呼び、今まで以上に重大犯罪が多く発生すると考えられているからだ。


 一見ありえない話だが、地球とは別の異世界がこの世にはたしかに存在している。

 そこは魔物がはびこり、魔法が扱える世界だ。そしてある特殊な方法を用いることで、日本と異世界を行き来できることが分かったのである。


 第七捜査課の目的は二つ。


 異世界に迷い込んだ民間人の保護。そして、異世界に逃げ込んだ凶悪犯罪者を捕まえることである。


 それまでも都市伝説や噂話として流れることがあったが、二年前に日本政府はたしかにこの世界の存在を確認し、行き来する方法も確立させたのだ。


 そういうわけで今日からその第七課に配属された拓也は、室長である秋奈とともに異世界『アルメニア』に訪れているというわけである。そして訪れてそうそうこれである。


 いきなり巨大なバケモノに襲われている、というわけだ。


「簡単に説明されて、はいはいそうですか、って受け入れられるわけないじゃないですか。だいたい政府は異世界の存在をつかんでいて実は秘密裏に動いてたって……そんなバカな話。まあ異世界ってのはこうあっては信じざるを得ないですけど、かといって……」


「黙れ。また来たぞ」

 そう言った後ろである。木々を吹き飛ばして現れたのは全長5メートルを超える巨大なナメクジだった。


 実はあこがれたこともあった。


 異世界と言う存在。


 ここじゃない世界。剣と魔法の世界に行って、自分の才能を開花させてって。


 だけどここは……。


「ここは地獄だ」


 言いながら秋菜はナメクジに向かって引き金を引く。


 ナメクジの身中に入り込んだ弾丸ははじけ、ナメクジを爆発させた。


「この二年間で7人の職員が殉職した。わたし以外の全員が、だ」


 秋奈は噛みしめるようにそう言った。はじめてその表情に哀しさがにじんだような気がした。


「先輩……」


「ちなみにさっき倒した『ワンワン』と、この『オオマイマイ』はこの世界において一番弱い魔物といわれている」


「な、なるほど」


 と言う壊れ難易度だ。


「レベル1の魔物は普通の拳銃で倒せるが、レベルが高い魔物はそうはいかない」


 そう言って秋菜は弾丸を握り締めた右手を掲げる。


「いま私がやったのがそれだ。魔力を弾丸にこめるんだ」


 そう言うと光が弾丸の中にこもる。


 それを弾倉につめると、引き金を引く。


 巨大な爆発音とともに、木々が吹き飛び、数十メートルの地面を抉り取りながら突き進む。

「な……」


 弾丸の抜けた先、数キロ先までクレーターが続いていた。


「単純なマグナムがこれほどの威力になるってことだ。訓練次第では貫通力を高めたり、着弾した瞬間に爆発させたり、軌道を変えることもできる」


「なるほど……」


 秋菜の言葉に拓也はうなずく。


「ステータス」


 身中でつぶやく。すると拓也の身体状態が数値化され脳内に表示される。


 益田拓也

 レベル1

 HP 320

 LP 108

 右手 ニューナンブ式リボルバー


 そして、まるでゲームのような仕様。

 なら……。


「魔力をこめる。こういうこと、か」


 イメージする。


 次の瞬間、また三つ首の化け物が現れる。レベル1モンスター『ワンワン』。


「今度はひとりでやってみろ!」


「わかってますよっ!」


 38口径マグナム。素では額を正確にぶち抜かなきゃ倒せない一撃。


 魔力をこめて、撃つ。


「うぉっ!」


 破裂音をはじけさせながら光線が拳銃から射出される。


 反動で思わず拓也は転がる、が……。


「ぐぁああああああああああああああああああああああっ!」


 化け物の三つ首はすべて焼け焦げて煙を上げていた。



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