消された存在
久々の廻音さん登場!
(部長は次出てきます!)
≪夢の中で出てきて俺がしている行動を把握してたり、身近にいる人を守れだの、一体お前は誰なんだ?≫
眠りについた俺は夢の中で、いつも夢に出てくるやつに質問をしていた。
いつもは、声すら出せないのに今回だけ何故か喋ることができた。
≪そんな事よりあなた、最近あなたの近くで人が消えなかったかしら?それであなたはその人の名前を覚えているかしら?≫
実際に誰かが消えた。とまでは覚えている。
よく考えたら誰なんだ?
阿利に会うところまでは覚えている。
えっとそこで俺はなんて言ったんだっけ?
「◯◯はどうなったんだ??」
ここまでは思い出せた。が、肝心な名前が出てこない。
世界から消されたと言うより、自分の記憶上の存在が消しゴムか何かによって消されていると言うかんじだ。
≪覚えていないのだろう?むしろ、記憶から消された。などと思っていないか?お主は。≫
やはりこいつは俺の思考を読める力があるのだろう。
ん?俺の思考を読める??どこかで……
まあ、今はそんなことどうでもいい。
こいつの存在を聞き出さねば。
≪………………。≫
なんでだ……声が出せなくなっている。
≪今は安らかに眠れ。時が来たら懺悔することになるであろう。お休み巡李ちゃん。≫
そのまま意識を閉ざされた。
目を覚ましたのは教室で、授業中だった。
「おい!榛原!何授業中寝てるんだ!起きろ!」
「あっ、はい……すみません!」
基本的に授業は寝ないつもりなんだけどな。と思いつつ授業に集中した。
「あ、あの……榛原君??体調とか悪かったりするの??」
廻音さんが優しく声をかけてくれた。
今までで一番いい寝覚めだ!
「あ、あぁ。大丈夫だよ。昨日あんまり寝れなくて……」
「え!寝てないの?!大丈夫本当に?!」
こんなところに惹かれる男子は多いのだろう。
(まあ、俺もそのうちの一人なんだけどな)
「大丈夫!今日はちゃんと寝るから!」
「なら、良かった!あ、でも部活は来るんだよ??」
覗き込まれながら言われると効果はばつぐんだ。
「うん!!行くさ!」
即答だよね。うん。
「あ、けど榛原君!今日の部活内容聞いた??」
なんだそれ?ってか部活内容とか決める部活だったけ?
「いや!何も聞かされてないよ!」
「今日は阿利君を部室に連れてきてから、部活をするらしいよ。」
何故に阿利なんだろ。
「けどさ、阿利君今日学校お休みみたいなんだよね。榛原君連絡取れないかな?」
一応連絡先は持っているが登録された名前が『少年A』なのは懐かしく思えた。
「分かった!連絡してくるわ!」
勢いで教室を飛び出し、屋上の入り口で阿利に電話をかけた。
プー。プー。プー。
おかけになった電話番号は……
ダメだ。こいつ出ねぇぞ。
次の時間の休み時間にすっか。
それから5分したあたりで次の授業のチャイムが鳴った。
「やべ!早く教室いかなきゃ……………………って
阿利?!?!」
「よぉ、榛ちゃん!俺が居ないからって寂しくなって電話でもしてたんじゃなぁい??」
こいつに言われると腹が立つ。
「あ、あぁ!そうだけど!」
あえて逆ギレっぽく言った。
そしたら意外すぎた事が起こる。
「あ、あれ?なんでだろ榛っち。なんか
なんか涙出てきたんだけど……」
急に阿利の目から涙が出てきた。しかもかなりの量だ。
「お、お前どうしたんだ?!」
「そんなこと俺に聞かれてもなぁ……」
この時すでに教室では授業が始まっていたので
屋上で話をすることにした。
屋上は基本空いていないが鍵はかかっていないのですぐ入れたりできる。
「お前今日、ボランティア同好会来れないか??」
「なんでまた?」
「なんか今日の部活内容が『阿利を連れてきてから決める』って、やつでさ。俺も詳しく聞かされてなくってね。」
「まあ、榛っちのためなら行ってやるよ!」
そのセリフを吐いた阿利の目はもう泣いていなかった。
「それよりなんでお前泣いてたんだ??」
「いやぁ、なんか冗談ってわかってても『俺、誰かに心配されてる』んだなぁって思ってさ!」
何か阿利の孤独を感じた。それは友達がいないなどじゃなく昔からの病かのような何か。
「いやぁ、それは嘘だろっ!」
笑いながらとぼけて言ってみると
「あ、バレちった??」
と、いつもの感じになった。
「それよりぃ榛っち。授業サボるとか珍しいじゃん??」
「あ、そうだったぁぁぁぁぁぁ!」
「今授業始まって、30分くらいだし、サボらね?」
「仕方ないか……よし!サボるか!」
なんか凄く気があったして二人で大笑いしていた。
「「アハハハハハハ!」」
それはいわゆる『青春』ってやつなんだろうか。
今はこの時間を楽しみたい。純粋に。
何故かすぐ遠くに消えてしまう気がして。
次の日から阿利と出会うことはなくなった。