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どっち?

作者: 悠里

一緒にいるのが楽しいし、落ち着くし、それが自然なことのように感じる。

だけどキス以上は無理。

そんな相手をなんと言えばいいのだろう。


彼に依存し始めたのはたぶん小学校に上がったばかりの頃だ。

両親が突然いなくなって、同じ町の親戚の家に預けられた。寂しくて寂しくて、誰かに甘えたかったけれど、今まで他人だった親戚にそんなこと言えるはずがなかった。そんなときに手を差し伸べてくれたのが山本だった。

元々男子たちと一緒になってもみくちゃになりながら遊んでいた仲で、突然元気がなくなって一人で早く帰りだした私を放っておけなかったのだろう。学校からの帰り道、一緒に帰ろう、とあの爽やかスマイルで手を繋いでくれたのだ。

その後大泣きしてしまって、慌てた山本に離されてしまったけれど。


親戚はとても良くしてくれたけどしょせんは他人。自然と外で男子と遊ぶことが増えて、少し成長して外に出ることよりゲームや漫画が楽しいと思い始めてからは山本の部屋に入り浸ることが多くなった。

山本にどういう意図があったのかわからないけど、彼の家に行くときは他の男友達は誘わずに私一人のことが多かった。

依存度が増したのはこの頃だろう。

甘えるつもりで指先をもてあそんだり、髪や顔に触ったりするようになったからただ。

それが恋人同士に許された行為なのだとはわかっていたけれど、山本も苦笑を浮かべながらそれに応えてくれるから、回数を重ねるたびにもっと甘えたいと思うようになった。

だけど断言する。山本も私も、恋愛感情は持っていなかった。



高校に入ってすぐ、山本は彼女を作った。

彼女は私とは正反対の人だった。ふわふわしてて、えくぼの可愛いい、守ってやりたくなるような女の子だった。

女の子と付き合うことになったと聞いたとき、対戦ゲームで私が残り1機になったところだった。そのまま無言で戦い、私の操作キャラクターが場外に吹っ飛んだのを見届けて、もうこの家には来れないね、と声を喉から絞り出した。山本は申し訳なさそうにごめんな、と私の頭に手を置いた。

本当に付き合っている人がいながら恋人の疑似行為を続けるには、私は心が弱かったし、彼も優しすぎた。


結論から言うと、山本と彼女は一ヶ月も経たず別れた。すぐに広まった噂では、彼女がふったことになっていたけど、本当のところはわからない。

どちらにしても、山本と私の関係が元に戻ることはないのだろうと思っていた。

山本が彼女を好きだったとしてもそうでなかったとしても、私たちの関係に終止符を打つつもりで山本は付き合ったのだと思っていたから。


だけど山本と彼女が別れて7日目。山本にまた家に来いよと誘われた。

いいの?と問いかけてると彼は笑ってなにを今更遠慮するんだと私の手を握った。

彼の部屋は私が来なくなる前と全く変わらず汚かった。女の子を部屋に呼ぶために片付けた形跡はなった。

相変わらず汚いねと軽口を叩きながら、何かが満たされる感覚には気づかないふりをした。


ねえ山本。私にとってあなたはなくてはならない酸素なのかな。それとも代わりがきく麻薬なのかな。


あなたにとって、私は……どっち?

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