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第14話

本日は、放置していた非戦闘系のクエストをこなすつもりである。

所謂、パシリクエストだ。

ギルドではなく街中にいる特定のNPCから依頼を受け、買い物や届け物をして報酬を得るという、楽そうに思えるが非常にだるいクエストだ。

Mobと戦う緊張感もなく、ひたすら街中を走り回り無駄話を聞かされるという苦行。

何故そんなクエストを受けるかというと、少数ではあるが報酬が美味しい物があるからだ。

繰り返し受ける事は出来ないが、ステータスポイントが上昇したり、そのクエストを受けないと習得できないスキルがあったりするのだ。

まあ、スキルの方は生産系なのであまり関係ない。

先ずは、STRが2上がるお使いクエストをするべさ。



―――――



『――――という事で、お願いしますね』


「うぃーっす」


我ながら実にやる気のない返事である。


「将来が非常に危ぶまれる返事ですね。社会に出て見事に落ちぶれて行く姿が、簡単に想像できます」


「いやいや、流石にリアルで仕事中にあんな返事せんよ」


それに、まだ高校生だしな。そんな先の事言われても。


「フッ……。話し口調や態度には日頃の生活が如実に現れるものです。普段からの心構えが重要なんです。まだ高校生だと思っていると、すぐに大学生になり、あっという間に社会に放り出されるのです」


いや、ゲームの中で生活態度や心構えってオカシイだろ。

なんか、周りにいる中高年だと思われる大人達が、ウンウンと頷いてるし。

人の話に聞き耳立てるんじゃねえよ!

会社行け、会社! まだ午前中だろうが!!

てか、アル! お前は俺の母親かっ!!


「ママと呼んでいいのよ?」


「呼ばねえよ! って、毎回毎回、人の思考を勝手に読むな!!」


「もう、我侭なんだから。そんな子に育てた覚えはありませんよ!」


「だぁかぁらぁ、テメエに育てられてねえだろっ!!」



―――――



5分後。


「―――――だろうが!!」


クソッ! 毎度の事だが、手を変え品を変え人の事をおちょくりやがって。

本当に、親の顔が見てみたいよ。

開発者出て来い、開発者。


「そんな事言うなんて、もうシュウとはやっていけないっ!」


「なっ!?」


ま、まさか、使い魔の野生化フラグか?

結構、愛情度は高かった筈なのに、突然なんで?


「どうも、ありがとう御座いました〜」


「はあ?」


な、にを、


「もっとやれー」


「いいぞ、兄ちゃん」


「ゲームの中で漫才が見れるなんてねぇ。お笑い養成所の人かしら?」


「AI相手にあれだけネタを仕込めるなんて、親がお笑い芸人かもよ?」


「えっ? えっ?」


漫才? お笑い芸人?

てか、この周りの人だかりは何??

ぷりーず、ぷりーず、ぎぶみー説明。


「はい、はーい。お金はこの中にお願いしまぁ〜す」


どこで調達したのか、アルがシルクハットを持ってお金を回収している。



―――――



『――――ませ』


気付いたら、アルの手を掴み走っていた。

というと、なんだが恋愛小説の様で嫌過ぎる。


「もうっ、強引なん」


「………」


無言でアルの頬っぺたを抓る。

盛り沢山に言葉では現せない感情が篭もっているのか、思いの外いつもより力が入る。


「いっ、いたひでふ」


「とりあえず、黙れ」


「ひゃい」


ふぅ……とりあえず整理しよう。

お使いクエストを受けた。

ここまではおかしい所はない、あっても困るが。

で、アルによくわからない説教をされ、俺も熱くなって口論になり、いつのまにか漫才に突入。

漫才? って、なんで漫才?

俺=ツッコミ。

アル=ボケ。

俺+アル=漫才。

いやいや、俺=ツッコミじゃない。

ん?


「アル、何してるんだ?」


「稼いだお金を数えてます。ん〜、約5万ユリルといったですか。意外と少ないですね。世知辛い世の中です」


50Kって1回の狩りで得る金額より多いじゃないか。

どんだけの人が見てたんだよ。

あ〜あ、掲示板で思いっきり晒されそうだな。


「次はどうしますか? ショートコントでいきますか? それとも正統派漫談? もしかして、アコーディ」


「だから、俺はツッコミでもお笑い芸人でもないっつうの!」


「スライムキラー兼お笑い芸人。面白い職業だと思ったのに」


「俺の職業はただの剣士なの! 勝手に変な職業にするなっ!!」



―――――



「シュウ、受けたクエストやらないんですか?」


「誰のせいだ! 誰の!!」


「シュウのせいですか?」


「クッ! …………はぁ、まあいい」


付き合ってると、いつまでも終わらん。

最初は……武器屋か。


「武器屋行くぞ」


「………」


何故かアルが着いてこない。


「アル?」


「シュウ、すでに武器屋の中ですが?」


「えっ?」


いくら適当に走ってたからって、武器屋の中とは。

ん? そういえば……。

『――――ませ』って、『いらっしゃいませ』かよっ!



―――――



『ありがとうございました。またお越し下さい』


NPC店員の若干無機質な声を背に受け道具屋を出る。


「これで終わりか」


「ええ、あとは戻って買ったアイテムを渡せばクエスト完了です」


なんか、予想以上に疲れたな。

元々、こういう系のクエストは苦手だったが、アルのせいで倍は気疲れが増したようだ。


「それにしても増えたな」


「どうかしましたか?」


「ん? いや、使い魔連れてるプレイヤーが増えたなと思ってな」


この前までは滅多に見なかったのだが、最近、急に使い魔連れが増えた。

ただ、アルやマシロさんの連れていたシートの様な個性的な外装の使い魔ではなく、皆全く同じ外装をしている。

粘土で造った人の様な形をしていて、身長は80cmくらい。

大体、ゴブリンと同じくらいだ。


「錬金術の店で売っている汎用使い魔でしょう。個性の欠片もないガラクタです」


「個性があり過ぎるのも困るんだがな」


「それ程でもないですよ、シュウ」


「別に褒めてないから」


そういえば、そんな物を実装したって公式に載ってたような気もする。

アルがいるから関係ないって、ちゃんと見なかったんだよなぁ。

それにしても、汎用使い魔か。

プレイヤーの要望が多かったのかねぇ。

先着1人なのかわからないが、イベントで手に入る使い魔は同じ外装を連れているのを見た事がない。

流石に5万も使い魔獲得イベントを用意している筈もないだろうから、使い魔を手に入れられなかったプレイヤーから不満が出てきたんだろう。


「でも、いくら使い魔が欲しいからって、あんなゴブモドキ連れたくないなぁ」


「「「んん、コホン」」」


「へっ……?」


後ろから複数のわざとらしい咳払いが。

嫌な予感がするが、覚悟を決めて振りかえると、


「「「「………」」」」


ゴブモドキを連れた方々が、大量にどっさり山盛りだ。

更に、まるで石化の邪眼、動けねえよ。


「はっ、はははは」


「「「「………」」」」


空笑い程度じゃ場の空気は変わらないか。

どうしませう。


「シュウ」


「ん?」


なにか名案が、


「先に行ってますね」


と言い、テクテクと歩いて行く。


「………」


「「「「………」」」」


み、見捨てるなよ、おい!

主人を見捨てて、あっさり1人逃げていく使い魔。

てか、そんな個性いらんわ!



―――――



その後、誠心誠意の謝罪で赦してもらう事が出来た。

いやぁ、人間話せばわかるもんだ……と、そんなに上手く行くわけもなく……。

いつのまにかゴブモドキ飼い主の数が増え、BOX状態に。

ダメージ判定が出るんじゃないかと思われるほど強力な視線と威圧感に耐えられず、心ばかりの謝罪品――奉仕の果実――を渡し、なんとか解放してもらった。

うーむ。向こうの方が明らかにハラスメント行為をしている。

でも、こちらに非があったので、強く出られないッス。



クエストを受けたNPCの所でアルを見つけた。

お金を持たせた覚えはないのに、何故か飲み物を手に寛いでいた。

更に、遅いと文句を言われる始末。



結局、クエストはこれだけにし狩りに行った。

いつも以上にサクサクとMobを狩れて、一気に3レベルも上がった。

どんなに頑張っても1日1レベルペースだったのだが、不思議なものだ。

ハッハッハッハッハ。はぁ。



―――――



アルルーナ成長日誌



Lv24 HP:791 SP:153


STR:158 VIT:191 INT:205 DEX:65 AGI:71


攻撃力:93 魔法攻撃力:111 防御力:143 魔法防御力:127 敏捷度:67


【通常攻撃】[消費SP― 無属性]

根っこを鞭のように使い攻撃する。


【悲鳴】[消費SP5 精神属性]

悲鳴を上げ対象を気絶させる。


【奉仕の実り】[消費SP― パッシブスキル]

主人に対する想いが特殊な果実を生み出す。

奉仕の果実を1時間毎に3個自動生成。


愛情度:??? [ツッコミ候補]

満腹度:77% [若干空腹]


備考:

戦闘系の成長著しいが、それ以外の無駄な部分の方が更に顕著である。

街中では俺の傍から余り離れなかったのだが、最近、フラフラと自由行動をとる事がある。

偶に渡した覚えのないお金を持っていることがある……。



―――――



※1:BOX状態。

故意にプレイヤーが自身や仲間、使い魔、アイテム等を使い、他のプレイヤーを囲んで移動を制限した状態。

悪質なハラスメント行為でもある。


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