プロローグ
【Dreams and Phantasms】。
ゲーム会社【ディースト】が開発した仮想世界体験型MMORPGである。
ネット上では、【幻夢】と呼ばれている。
専用のゲーム機【Ark】を使用する事により、仮想世界【ノア】の中で戦闘や生産等、様々なことを体験することの出来るゲームだ。
レベル・スキル制でファンタジー物、とありがちなものだが、大きな特徴は名前以外のキャラクターメイキングが無いという所だ。
プレイヤーは、現実の姿そのままで【ノア】の中を旅することになる。
この情報が流れた当初は、色々な所で叩かれたものだ。
プライバシーの観点から購入者がいる筈が無いと、ニュースの中で評論家が騒いでいたのが印象的だった。
しかし、予想に反して大半のゲーマーは、すんなりと受け入れてしまったのだ。
プライバシーと言っても、よく考えれば、現実での情報などプレイヤーが気を付ければ洩れる訳もなく、それは今までの物と変わらない。
ゲームの中で偶然顔見知りに会ったとしても、他人の空似と否定すれば終わる話なのだ。
そして、ゲーマーの受け入れた要因。
それには、最近のMMORPGは、うけ狙いを除き美形外装しか存在しないという背景がある。
美人は3日で飽きるという言葉もあるように、みんな食傷気味になっていたのだ。
だったら、キャラクターメイキングの時に、現実の姿を使えばいいと思うだろう。
そう思う人間も少なくなかったようで、何度か某大規模掲示板で特定ゲームではそうしようと決められたこともあった。
だが、ふたを開けてみるとオッドアイなど有り得ない外装はいなかったが、どこを見ても美男美女ばかりだったのである。
少しでも周りに好印象を持って欲しい、リアルの外見など確認する方法が無いのだから、自分1人くらい……後は予想がつくであろう。
そんな事もあり、強制的に現実の姿が適応されるのは、不正が出来ないので大歓迎だったのだ。
それ以外にも、RMTが当たり前な現在、詐欺や迷惑行為などに対する抑止の効果が見込まれたというのも大きかったようだ。
後、適応されるのは外装だけなので、他のゲームと同様に格闘家だろうがヲタだろうが、ゲームの中の初期ステータスは同じである。
まあ、本人の反射神経・バランス感覚・集中力等により大きく差が出ることになるが、他は平等という事だ。
魔法などは無いが、代わりに各武器スキルで習得できる技がある。
ゲームのグランドクエストは、プレイヤーが初めて降り立つ街でもある迷宮都市【ルトメイヴィス】の中央にある地下迷宮の最下層に到達することだ。
地下迷宮にはある程度レベルが上がらないと入れないようで、最初はフィールド上のMobを倒したりクエストをこなしたりして、レベルをあげる必要があるらしい。
もちろん、地下迷宮以外にも様々なイベントやダンジョンが用意されている。
当然、【幻夢】にも世界観や壮大なストーリーがあるのだが、多くのゲーマーがそうであるように、そんなものには興味がないので読む訳がない。
付け加えると、この世界の通貨単位はYで、プレイヤーに与えられる初期アイテムは、【スモールポーション】5個と1000Yである。
本当に大雑把で少量だが、以上が俺の持っている【幻夢】に関する情報だ。
―――――
最後に、自己紹介。
名前:春夏秋冬 四季
年齢:16
性別:男
備考:
古流武術を習っていて、IQが180以上ある……なんてことはない。
典型的なゲーヲタ。
運動は苦手ではないが得意でもない。
学校の成績は中の上。
身長160cm体重42kgとロースペックを誇り、帰宅部に在籍。
日光が苦手で日に当たらないために色白、不本意な童顔に眼鏡を標準装備している。
冗談の様な名前に、若干のコンプレックスがある。