DAY’s
堂島 直人 (どうじま なおと)
浅木 想太 (あさぎ そうた)
八束 優也 (やつか ゆうや)
この3人は『幼馴染』である。
この物語は、異世界へ迷い込んだ男達が剣と魔法を駆使して異世界の魔王を倒さんと奮闘する
大冒険譚である!
…筈もなく、この幼馴染3人のどうしようもない日々の一部を綴った
ヤマなし。
オチなし。
イミ…はもしかしたらあるかもしれない。
そんなどうしようもない物語である。
「ッあーぁ、どっかにイイオンナが転がってねーかなー」
俺の部屋に来て早々、優也がベッドの上で気だるげに呟いた。
「どうしたんだよ、急に」
少々呆れ気味に返してやると、優也はあからさまな溜息を一つ。
「どーしたもこーしたもねぇよ。高校生になってもう2ヶ月経つってのに、オンナとの出会いが全くねーんだよ!」
「そりゃまあ、お前のとこは男子校だからな」
男子校に進学してる時点でそんな文句を言うのはどうかと思うが。
「そうなんだけどよー…、もうちっと何かこう出会いがあると思ったんだがなぁ…」
”オレもお前らみてーな共学のトコに行けてりゃあなぁ”と愚痴をこぼす優也に、この部屋にいるもう一人の人間である想太がようやく反応を見せた。
「高校、結局別々の所になっちゃったもんね」
「いやまあ、オレはバカだからな。仕方ねぇよ」
少し残念そうな表情の想太に、優也が慌ててフォローを入れていた。相変わらず想太には甘いな。
それは良いんだが、
「想太、勉強はもういいのか?」
「うん。明日の予習も全部終わったし」
想太は勉強机と椅子を独占し、優也はベッドに寝転がる。かたや俺はフローリングに直座り。
…ココは俺の部屋なんだが。コイツら、もうちょっと遠慮ってモノを覚えろよ。
まあそれは兎も角。
「けど優也。俺が志望校落とそうか?って聞いた時断ってただろ」
”3人で同じ高校に行けないか”という問題に、当時俺はそう提案したのだが。コイツは断固として受け入れなかったのだ。
「そりゃあな。そーいうのは、何かちげーだろ。上手く言えねーけど」
「…うん。最初は僕も何で?って思ったけど。今は何となく分かるよ、ゆーやの言いたい事」
「何だよそれ」
「僕たちは、今まで10年以上幼馴染として一緒にいたけど…ずっと同じ道を進むのは無理なんだよ」
想太の困った様な笑顔に、優也も”そーそー、オレが言いたかったのはそれだ!さっすが想太センセーだな”と同調する。
「お前らの人生を捻じ曲げてまでオレに付き合うのはちげーってんだよ。そんなんされたら、オレらは幼馴染として対等じゃなくなっちまう」
そう…幼馴染。
俺こと堂島直人。
浅木想太。
そして八束優也。
俺たち3人はもう10年来の幼馴染だ。
俺たちは一緒に笑いあったり泣きあったり、時にはケンカをしたりしながら10年もの間を過ごしてきた。
物心ついた時からずっと一緒で、俺たちはお互いがお互いに自分の分身だった。
けれど2ヶ月前…高校生になってから、俺たちの道は分かたれた。
俺は市立の当たり障りない高校。
想太は県立の進学校。
優也は私立の男子校へと、それぞれの進路を進んだのだ。
想太と優也の言いたい事は分かる。俺のこの気持ちは、ただの俺のワガママなんだろう。
だけど。
それでも。
「それはそうだけど…」
それは…寂しいだろうが…。
口には出さない。
けれど、2人の顔を見やるとどちらも真剣な表情をしていた。
言わなくても分かってるって顔だ。
…全く、コレだから幼馴染ってのは厄介なんだ。本当に。
「しっかしアレだな。同じ幼馴染なら、オレはオンナが良かったぜ…」
微妙な空気を察したらしい優也が強引に話を最初に戻しにきた。昔からそうだけど、コイツのこういう所は本当にありがたい。
「贅沢言うな。何だったら、想太に女装させたらそれっぽくなるんじゃないか?」
「やめてよ…女顔なの気にしてるんだから…」
おっと、これ以上突っ込むと想太が泣くかもしれないからやめとくか。
「悪い悪い。…それにしても、何で優也はそんな女の子に執着してるんだよ?」
俺のその一言に、優也が激しく反応してきた。
「はぁ!? そりゃお前、俺らぐらいのトシだったら常にオンナの事ばっか考えるだろうが!」
うるさいな。そんな大声出されたら寮長のオバちゃんにドヤされるからやめてくれ。
「そうか? まあ女の子に興味がないって訳じゃないけど、お前みたいに四六時中考えたりはしないな」
「うーん…僕は、なおやゆーやといる方が好きだから」
おい想太、その発言は捉え方によっては気持ち悪いからやめろ。
「お前らマジかよ?! そんなんだと、今はやりのソーショクケーとか言われちまうぞ!」
だからうるさいっての。怒られるのは俺なんだぞ。あのオバちゃん怖いのお前ら知らないだろ。
「って言うか、お前さっきから愚痴ばっか言ってるけど。女の子と…何だ、お近づき?になる方法ぐらい自分で考えなかったのか?」
すると、優也は待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑った。お前がそれやると映画のマフィアにしか見えないだろ。怖いわ。
「勿論そんぐらい自分で考えたっつの。んで、ここからが本題なんだけどよ…」
今までのは前フリだったのかよ。
「明日、ナンパしに行こうぜ!」
は?何だって?
隣を見上げると、想太が理解出来ないといった表情をしていた。安心しろ、俺もだ。
「…悪い、もう一度言ってくれないか」
「明日、ナンパ」
「誰が?」
「オレらが」
眩暈がした。何を言ってるんだコイツは…。
「オレは気付いたんだよ、待ってるだけじゃダメだってな。だからよ、自分からアグレッシブに動いて、オレは最高にイイオンナをゲットしてやるぜ!」
「その前向きな姿勢は褒めてやってもいいけど、何で俺らも参加しなきゃ駄目なんだよ?」
呆れ気味な俺と想太に、優也は快活な笑顔でこう言ってのけた。
「その方が、楽しいだろーが!」
その一言を言われては、想太も笑顔になるしかないようだ。
…全く、コレだから幼馴染ってのは厄介なんだ。本当にな。
翌日、オレ達は地元からそこそこ距離のある街の駅前に集合した。
オレ達の地元はド田舎過ぎてナンパどころの話じゃねーからな。オレ達が遊ぶっつったら大体ここに集まるんだ。
時刻はそろそろ午後1時になるって所か。
本格的な夏が到来しようっつーこの夏空の下。
オレは集まった幼馴染どもを見て頭を抱えたくなった。
「…昨日オレが帰る前に言った事、覚えてっか?」
オレの押し殺した声に、直人と想太はきょとんとしていた。
「帰る前にっていうと…アレだろ? ビシっとした格好で来いっていう」
「そうだ。つーか忘れてねーって事にむしろビビるんだけどよぉ…」
このアホ面引っさげた幼馴染二人に、オレは呆れを通り越してただツッコむしか出来ねーよ。
「じゃあお前らのそのカッコは一体どういう事だっつーの!」
「「?」」
オレの言いてー事は通じなかったらしい。幼馴染が聞いて呆れるわ。
「直人、おめーのそのカッコはどういうこった?」
「え? どういう事って言われてもな…」
困惑して自分の服装を見直す直人。
何かよく分からん英語がプリントされたTシャツに、7分丈のズボンとスニーカー。
「普通すぎんだろ! どの辺が気合入ってんのか説明しろや!!」
「…そう言われると、気合入ってるなんて言えないけど。でもそこまで気合入れる必要あるのか?」
「大アリだバカ。ナンパってのは戦争なんだぞ? そんな丸腰みてーなカッコで生き残れるかっつの。…んで」
もう一人の問題児の方を見る。コイツはコイツで…。
「おめーのそのカッコは?」
「駄目、かな? でも僕、私服はこういうのしか持ってないし…」
そう言う想太のカッコは、ある意味直人と正反対だ。
何つったらいいんだ…とにかく、黒い。
黒くて、何かこう色んなトコがゴチャゴチャしてて…しかも、このクソあっちいのに長袖長ズボンである。
そういや茜サン…コイツの母ちゃんが何か言ってたな。ゴシックなんとかだっけか? オレにはよく分からん世界だな、相変わらず。
「つーか、前から思ってたんだけどよ…そういう服、おめーには似合ってねーんじゃねーの?」
「まあ、確かにな」
直人も頷いた。コイツは昔っから背が小さくて女顔だから、どーにもこういう服は合ってねぇと思うんだよな。
つっても想太の言うとおり、コイツの私服っつーとこういう服しか見た事ねーのは確かだが。人の趣味ってのはわからねーモンだ。
「うーん…服の事は良くわかんないからなぁ。それに、服はお母さんが買ってくるから文句も言えないしね」
「「高校生にもなって親の買ってきた服着てんのかよ!?」」
驚きすぎてアゴが外れるかと思ったわ! つーか茜サンも、自分の息子に着せる服がコレかよ!?
「…いいでしょ、別に。と言うか、僕としてはゆーやの格好が一番ありえないと思うんだけど」
「そうだよな。アイツの服装が一番おかしいよな」
ふくれっ面の想太と、半眼の直人がオレを睨んでくる。
「あン? どこがだよ、どっからどう見ても完ペキな服装だろうが!」
自分の服を見下ろす。
薄く線模様の入ったスーツ。紫色のシャツ。そして額にはサングラス。
やっぱどう見ても完ペキじゃねーか。これぞ男のカッコってモンだぜ。
「どう見てもヤンキーだよね」
「いや、ヤンキーというよりはヤクザだな。どう見ても」
よーし、おめーらオモテ出ろ。ケンカ売るなら買ってやろーじゃねーか!
「…まあ、アレだな。ゴチャゴチャ言っても始まんねーし、そろそろいくか」
あの後しばらくお互いのファッションセンスについて言い争いをしてたんだが、ラチが開かねーし周りのヤツらからは注目されるしで、誰からともなく言い争いは終わった。
何でナンパする前からこんなに疲れてんだオレらは…。
「なぁ、本当にやるのかよ」
「ここまで来といて何言ってんだおめーは。安心しろ、まずはオレが手本を見せてやっから」
いまいち乗り気じゃねー直人をその気にさせる為にも、オレがまず先陣を切って成功しねぇとな。
3人一緒に行ってもいいんだが、相手に警戒されるかもしんねーしな。それに、1人ずついってアイツらの力量を見てやるってのもある。
「…どうも嫌な予感がするんだが」
「それって、例の『超能力』?」
「いや、それとは関係ない。見えなくても、結果が分かりきってるっつーか」
「あぁうん、確かに」
後ろで好き勝手言いやがって。見てろ、ソッコーでキメてやっからよ!
…結果から言うと、オレは5連敗した。
「ほらな。だから言っただろ?」
「本当にね。やっぱりっていうか」
2人の視線が痛ぇな、チクショウ。
「つーか何がダメだったんだ…? 絶対いけると思ったんだがよぉ」
「そりゃ、180センチ超えたヤクザが言い寄ってきたら誰でも逃げるに決まってんだろ」
「いや、もしかすっとオレがイケメン過ぎたっつー可能性がだな」
「ねーよ! どんだけポジティブなんだお前は」
「ナンパした人たち、皆悲鳴上げてたもんねぇ…」
クッソ、コイツら本当容赦ってモンを知らねぇな…。あぁそうだよ、どーせオレはモテねーよ!
「そんなに言うんだったら、おめーらもいけよ! いって玉砕されてこいや!」
「何か八つ当たりしてきやがったぞ」
「玉砕って、それもうナンパの前提としておかしいよね」
うっせーな。ぜってーおめーらにもオレの苦しみを味わってもらうからな!
「うぅ…僕人見知りなのに…」
モメた結果、2番手となった想太が泣きそうな顔でオレたちを見てくる。
「ダーイジョーブだよ。オレたちがココで見ててやっから」
「でもまあ確かに、人見知りを治すにはいい経験だと思うぞ、実際」
オレらの後押しに、想太も覚悟を決めたらしい。コイツはデキるヤツだからな。
「うん…じゃあ行ってくるよ」
そうして人ごみに紛れて数分、想太は周りをキョロキョロと見回して、誰に声をかけるか迷ってるみてーだった。
「しっかしアイツの人見知りじゃ、誰にも声かけられずに終わっちまうんじゃねーの?」
「俺もさっきはああ言ったけど、想太にはハードルが高過ぎるかもな…って、お?」
驚きの声をあげた直人の視線を追ってみると、想太が誰かに声をかけていた。アイツ、やるじゃねーか!
「まさかあの人見知りがなぁ。相手も逃げてない風だし…成功したか?」
「こっからじゃオンナの顔が分かんねーな。ちょい近づいてみるか」
今の場所から近づいてみると、想太が引っかけたらしいオンナの顔がよく見えた。
身長は高めでスタイルは結構ガッチリしている。高級っぽいドレスに身を包んだ化粧の濃い二重アゴの…
「「って、おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉいッッッ!!!!????」」
オレと直人は一目散に走り出した。
アイツの貞操が危ねぇ!!!
「何やってんだよおめーは!?」
何とか想太を回収出来たが…頭いいクセに何で時々こんなバカなんだよコイツは!
「何って、何とか女の人に声かけようと思って」
「どー見てもオカマだっただろーが! しかも何でちょっといいカンジになってんだよ!」
にしてもあのオカマ、オカマのクセに全くオンナに見せようとしてねぇ所がムカつくわ! テレビに出てるオカマ芸能人が完ペキなオンナに見えてくるレベルだったぞ!?
「落ち着け優也。被害は無かったし、コイツが頑張った結果なんだからいいじゃないか」
そうやって慰める所見てっと、まるで父親じゃねーか。相変わらず想太には甘ェなコイツはよ。
「…まあいいけどよ、最後はおめーだぞ。余裕ぶってっけど、まさか自分だけやらねぇって事はねーよな?」
「分かってるよ。お前らがこんなに頑張ってるのに、俺一人だけ逃げるなんて事はしないさ。まあ見てろよ」
そう言い残して直人は人ごみの中に消えていった。チッ、余裕ぶっこきやがって…。
「でも、僕らの中じゃなおが一番上手くいくよね絶対。なおは人付き合いが上手いからなぁ、羨ましいよ」
…まあな。誰にでもいい顔するアイツの事だ、高校でもダチは多いんだろうよ。中学ン時もそうだった。
だが、それは必ずしも褒められたモンでもねぇ。アイツの善人ぶりを利用するヤツも少なからずいた。
結局、オレらは皆不器用だ。…一人になると、それをイヤでも思い知らされちまう。
くだらん事を考えながら待つこと数分、直人が人ごみからこっちに戻ってくるのが見えた。
その左手にはオンナの手が繋がれていた。こっちに合流するなり、直人が開口一番にそのオンナを紹介する。
「ミドリちゃん、だとさ」
「どう見てもガキじゃねーか!!!」
ガキの背格好から見て、多分小学生にすら届いてねぇんじゃねーのか。このアホ…とうとうイカれやがったんじゃねーだろうな。
「おい、あんまり大きい声出すなよ。ミドリちゃん泣くぞ」
というかもう既に半泣きじゃねーか。クソ、これだからガキは苦手なんだよ…
「なお、その娘どうしたの? なおの趣味がそーいうのって訳でもないんでしょ?」
「…当たり前だ。どうやら迷子らしくてな、一人で泣いてるのを見つけたんだよ」
ビビらせんじゃねぇよ!コイツが本当にロリコンだったらオレはソッコーでコイツとの縁を切るぜ…って、待てよ?
「おい、まさかおめー…」
「探しに行こう」
「何を?」
「ミドリちゃんの親御さんを」
「誰が?」
「俺たちが」
…やっぱりいつもの病気かよ。
コイツを今すぐにでも病院に放り込んでやりてーわ。医者もサジ投げるだろうけどよ。
想太もやれやれってカンジか。バカにつける薬がねーってのは辛いよなぁ。
「僕たちで探すより、普通に交番に行って警察の人を頼った方がいいんじゃないの?」
「そうしたいのは山々だけどな…それは出来ない」
「…それ、例の『超能力』?」
「まあ、そんなトコだ」
「ふぅん…まあ、いいか。分かったよ」
オイオイ、そんな簡単に納得すんなよ想太センセーよぉ!
二人が揃ってオレを見てきやがる。
「言っとくけどな、オレは手伝わねーぞ!」
もうぜってー甘やかさねーって決めたんだよオレは。
「優也…頼む」
んな真剣なカオされてもぜってーダメだからな!
「大丈夫だよ、なお。最初からゆーやだって手伝ってくれるつもりの筈だから」
そう言い残してアイツらはさっさと移動し始めた。
フン、知ったこっちゃねーぜ。ぜってー手伝ってやんねーぞ。
ぜってー…
………
……
…あぁクソ!
これだから幼馴染ってヤツはよぉ!
「おめーら、待ちやがれ!」
結局、オレらはミドリちゃんとかいうガキの親を探すハメになった。
最終的には直人の『超能力』頼みだったが、何とか親と合流出来たんだからスゲーわ。
元気に手を振るガキの背中を見送る頃には、空が赤く染まっていた。
「…結局、3人揃って成果ナシかよ」
ナンパどころか、ガキのお守りに精を出したときたモンだ。
「まあまあ。あの娘が無事にお母さんと合流出来て良かったじゃない」
「二人ともありがとな。今度何かオゴるから、それで勘弁してくれ」
ケッ!棒アイスくれーじゃ納得しねーからなオレは。
しかし、今日はもう帰るしかねーか…
…と。
「そこの君たち、ちょっといいかな?」
後ろから声をかけられた。カワイイオネーサンの声で。
最後の最後でチャンスキター!!!
ココはぜってーハズせねぇ! イイオンナをゲットして、あんなコトやこんなコトを…!!
「何かな、オジョーサン?」
オレは人生で最高の笑顔を作って振り向いた。
「駅前で女の子に声をかけまくってるヤクザと、
小さい女の子に声をかけて連れ去ったロリコンがいるっていう通報が何件も寄せられてるんだけど…ちょっと交番で話を聞かせてくれないかしら?」
「逃げるぞ!!!!!!!」
「あ、ちょっとコラ! 待ちなさい!」
婦警さんの制止も聞かずに、なおとゆーやが全力疾走し始めたから僕もそれに続いた。
とは言え、なおやゆーやに比べて僕は運動能力が無いから自然と置いていかれそうになる。
それに気付いた二人が速度を若干落としてくれるんだけど、
「HAHAHAHAHAHAHA!!!!!!!」
後ろには婦警さん…じゃなくて、ボブ=○ップみたいな体形の警官が物凄い勢いで僕らを追ってきていた。
「ひっ…!!………あうっ!?」
去年映画館で見たホラー映画並の恐怖で足がもつれて、その場で転倒してしまう。僕のドジ!
「「想太!」」
気付いた二人が慌てて僕を助けようと戻ってきている。でもそれじゃ…ダメなんだ。
「二人とも行って! 僕だけなら多分大丈夫だから!」
さっきの婦警さんの言葉からすると、なおとゆーやに対する通報だけで僕はその勘定に入ってないはず。
だったら僕一人で捕まって、適当に誤魔化せばその場は何とか凌げるかもしれない。
それに、こんなに鈍くさくてどうしようもない僕だけど。
二人の前では、”幼馴染”でいたいから。
重荷になんて、なりたくないから。
「行って!!!」
僕の必死の叫びに、二人が足を止める。なおとゆーやは一瞬だけ視線を交わし、なおは進路を戻してそのまま走り出した。
なおだけは。
…え?
「ふざけんじゃねぇよ!! 掴まれ、このバカ!!!」
そう思った時には既にゆーやは僕の手を取って強引に引っ張り上げていた。
そしてそのまま僕を背中に担いで元の進路を全力疾走し始めたのだ。
紙一重でボ○=サップに捕まりそうになったけど、ゆーやは人一人担いでいるとは思えないフットワークで何とかかわしていた。
「ゆーや、何で…」
担がれたまま呆然と呟いた僕に、ゆーやは息を切らせながらこう答えた。
「オレはヤンキーだからよぉ! ヤンキーが素直に人の言うこと聞くとでも思ったか!?」
”ザマーみろバーカ!!!”とゆーやは笑っていた。こんな状況なのに、笑っていた。
ひとしきり笑った後、ゆーやは”しっかしよぉ”と続ける。
「…お前、やっぱ軽いわ!」
中学生のあの頃。
僕は今よりもっとどうしようもなくて。
痛くて、辛くて、悔しくて。
僕は2人の幼馴染であること対して申し訳なかった。
だからだろう、そんな言葉が漏れたのは。
「僕は…2人の重荷になりたくないんだ…」
俯いた僕を、ゆーやがおもむろに背中に抱えた。
「…バーカ、全然重くねぇじゃねーか。つーかおめーはもっと食ってデカくなれっつーの」
今度はなおが僕を抱える。
「まあ優也みたいに大きくなれとは言わないけどな。でもお前は十分軽いよ、何の心配してるんだ?」
…忘れない。きっと、一生忘れない。
大きな背中にしがみついて、僕はゆーやのスピードで街を疾走する。
目に涙が滲むのは、きっと夕陽が眩しいせいだ。
「あ゛ー…もうダメだ。一歩も動けねー…」
「クッソ、だから最初から嫌な予感がしてたんだよ俺は…」
先行していたなおと合流したのは、いつものなおの寮部屋。
クーラーをガンガン効かせた部屋で、二人は仲良くベッドに突っ伏していた。
「2人ともごめんね。ありがとう」
僕一人だけ汗をかいてないのが申し訳ない。
「…ま、これはこれでオレららしいわな」
「確かにな。こういう結果になるのが俺たちだよな」
そうして、誰からともなく笑い出す。2人の言うとおり、これが僕たちらしいんだ。
「…さて、と。2人には頑張ってもらったし、ジュースでも買ってくるよ。僕のオゴりで」
「おぉ、ワリーな。じゃあオレは…」
「大丈夫、分かってるよ」
言われなくても、2人が注文してきそうなジュースくらいは分かる。
…全く、幼馴染っていうのは最高だ。 ――END
最後まで読んでいただいた方はありがとうございます。
以前にココに投稿したのが7年前とか…歳を取ったなぁ(
取り敢えず書きたいモノを書こう…って事で、こんな感じになりました。
世の中…と言うか少なくともココにはファンタジーモノが溢れていたし、
また僕自身もファンタジーにちょっと食傷気味だったので、ファンタジー
要素ゼロの物語を書こう…としたのですが、まあある意味このお話もファンタジーなのかなぁと書いて気付きました。
一番やりたかった事は、タイトルと最初の3行で果たしたので個人的には満足です(
感想やダメ出し等ありましたら是非お願いします。
それでは。




